ちょっと揺らぐ、ヒカリの決意!

「あの、ヒカリ様っ。魔王退治には、私もお供させて頂けないでしょうかっ、ですわっっ」


「「「「えっっ!!」」」」


 ペリメール様からの思わぬご提案に、俺だけじゃなくてラーフィアちゃん達も驚いちゃってますよ!

 妄想勇者のパーティーに四人目の女神様がお仲間にっ?

 でも、さすがにそれは甘えすぎなような気がしますよ、男のっ。

 しかも、ペリメール様は新婚さんなのにっ。


「そんなっ、いいんですかっ?

 ペリメール様まで声を奪われちゃうかもしれないんですよっ?」


「あのスキルは1週間に1度しか使えないと言っていた事が本当なら、声を奪われる心配は無いと思うのですわっ」


「それはそうですけどっ……」


「もちろん、ヒカリ様のサポートがメインだと承知した上でのコトですがっ。

 私はっ。ラフィーさん達にヒドイ事を言ったあの失礼極まり無い魔王に、ひと言、もの申してあげたいのですわっ」


 もの申したいってペリメール様。

 それだけの為にパーティーに加わるのは危険なのではっ?

 て言うかね。

 すでに強烈なペリメールスマッシュを食らわせちゃってるじゃないデスカっ。


「私達の事を気にかけてくれるのは嬉しいけど……お姉ちゃん……なんか別の意味で怒ってない?」


 ラーフィアちゃんがぽそっと言った言葉にペリメール様は、ぴくっと反応してから、ちょっと赤くなっちゃいましたよ。


「えっとっ、あのっ、そのっ、恥ずかしながら本心を言うとっ。

 フィルフィーさんの唇を奪った魔王にきちんと謝罪をして頂かないと許せませぬっ、ですわっ!」


 ペリメール様はプンスカ怒ってると言うよりは、ちょっと妬いちゃってるカンジですよ。

 なんだかカワイイですよ、ペリメール様っ。


 謝罪を、とは言うものの。

 あの魔王が素直に『ゴメンナサイでした』って言うとは思えない!

 イヤ、断言できる!

 あのちっこカワイくて生意気な魔王に、謝罪の意思などナイですよ!


 カワイク怒ってるペリメール様に向かって、フィルフィーがパタパタっと手話ですよ。

 ここはフェイリアちゃんに通訳してもらわないとっ。

 して、フィルフィーは何とっ?


「『あんなのはノーカンだっ。事故だ事故!』って仰ってますよう、ペリメール様ぁ♪」


「えっ?でもっ……ですわっ」


「『ここはヒカリに任せようぜっ。ヒカリだってヤる気まんまんみたいだしなっ』って、仰ってまぁす」


 うむむ、ヤる気まんまんかと問われたらビミョーなような気がしないでもナイですがっ。

 期待してくれてるのはホントみたいだから、頑張りますとしか言えませぬっ。



「あのう、ペリメール様ぁ。

 それじゃあ、リアちゃんがペリメール様の代わりにフィルフィーマート様の生活のサポートをしてもよろしいですかあ?」


「えっ!?

 どどどどうしてそうなるのですかっ、ですわっ?」


「だってぇ、フィルフィーマート様は魔王城には行かないつもりなんですよねえ?

 それでぇ、ペリメール様は魔王城に行きたいんですよねえ?

 だったら、リアちゃんが通訳として残って、フィルフィーマート様の身の回りのお世話をしようかなあ、って♡ ウフフフフぅ♡」


 なんか不穏な空気をぶっこんできましたよフェイリアちゃん!

 そう言えば、二人が正式に結婚する前に『私とお付き合いして頂けますかあ?』ってフィルフィーに言ってたような。

 あと、『略奪愛って燃える』とかなんとかも言ってたな。


 こっ、これはっ!

 二人の新婚生活に突然の危機っ!?

 しかも相手は『全愛』の女神フェイリアちゃん!

 なんかドロドロな昼ドラみたいな展開になっちゃいそうですよっ。


「もうっ。おかしなコト言わないでよ、フェイリアっ。

 元魔王の私がヒカリちゃんをサポートするんだから大丈夫だよ、お姉ちゃんっ。それにお姉ちゃんは狙われてるんだし、万が一の事を考えないとっ」


「そう……ですわね……」


 ナイス説得ですよ、ラーフィアちゃん!

 ドロドロな昼ドラ展開なんて、誰も望んで無いですからねっ。

 もうひと押しでペリメール様を納得説得できそうです!


 ここでパタパタっとフィルフィーの手話ですよ。


「『声が出ないだけだから、日常生活に問題は無いんだぞっ』だそうでぇす」


「そうなのですかっ?ですわっ」


「『ペリ子は方向オンチだから、魔王城で迷子になっちゃいそうだしなっ』って仰ってまぁすぅ」


 へー、そうなのか。俺はそんなイメージは無いけどなあ。

 フィルフィーしか知らないペリメール様の情報だったりするのかな?


「あと、『ペリ子といちゃいちゃでラブラブな新婚旅行に行きたいし』って仰ってまあすぅ♡きゃー♡ うらやましいですねえ♡」


「えっ? そそそそうなのでしゅかっ?ですわんっ♡」


 なんですとっ!?

 俺が魔王を倒しに行ってる間に、新婚旅行に行くですとっ!?

 それはまあ、構いませんけども!

 なんですかね、この胸のモヤモヤはっ。


 ズタボロにやられて死んじゃうかも知れない闘いに挑もうとしてるのに、二人はイチャイチャラブラブ新婚旅行。


 ぐぬぬ、なーんか納得いきませんがっ。


 新婚の二人には、ゆっくりと羽根を伸ばして旅行を楽しんで来てもらいたい、と思うのもまた事実っ。

 それならば、ここは笑顔でっ!

 二人に心配かけないようにするですよ!

 

「ねえ、フィルフィーっ、ペリメール様っ。

 ボクが頑張って魔王シフォンを倒して、ポプラールさんとフィルフィーの声を取り戻すからっ!

 二人はココロおきなく新婚旅行を満喫してきて下さいましっ!」


「……っ」


 フィルフィーが俺に向かって、パタパタっと何かを伝えてくれてますよ。


「えっ? えっとぉ、それはぁ……言っちゃっていいのかなぁ……」


 んっ?

 フェイリアちゃんが言いにくそうにしてるのが、なんだか気になりますよっ。


「あの、フェイリアちゃんっ。フィルフィーは何て言ってるの?」


「えっとぉ。『骨は拾ってやるからなっ!』て仰ってまあすぅ♪」


 なぬっっ!

 縁起でもないコトをぶっこむんじゃないぞフィルフィーっ!

 せっかくのやる気が失せちゃうでしょーがっ。

 ぬおお、ゆらゆら揺れますよ、俺の決意っ。



「要するに、シフォンがスキルを使えるようになる前に倒せばいいんだよヒカリちゃんっ!

 それなら声を奪われる心配なんて無いんだから。でしょ?」


 簡単に言ってくれちゃってますがラーフィアちゃんっ!

 魔王と闘うのは勇者の俺なんですけどっ。


「ヒカリちゃんの大活躍が楽しみだよっ!

 うーんんんー!なんだかワクワクするよねっ!頑張るぞー!おー!」


「「おー!」」


 ラーフィアちゃんのかけ声に、レイルさんとフェイリアちゃんは息ピッタリですがっ。


 大活躍なんつってハードルの高さが上がっちゃってるような気がするのは、気のせいなんかじゃナイですよっ!


 でも、まあ、もうやるしか無いですよー!

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