集大成!俺の物語!

来襲!魔王シフォン!

 披露宴が終わり、名残惜しみつつも解散です。

 みんな、またいつもの日常に戻っていきますよ。


「フィルフィーマートよ。

 お前なら自分で決めた道を踏み外す事無く、志を貫き通すと信じておるぞ。

 ペリメールとずっと、ずっと仲良くな」


「わかってますっすよ、おとっつぁん!」


 ポプラールさんがフィルフィーに歩み寄って、パタパタと手話で何かを伝えてから、ぎゅっとハグしましたよ。

 何て伝えたのか気になるけど、そこに首を突っ込むのはヤボってモノですかね。



「ペリメールっ。フィルフィーちゃんと仲良くねっ。たまには二人で実家に遊びにいらっしゃいねっ」


 ペリメール様の母親、エルレさんも名残惜しそうですよ。

 二人が、ぎゅうっとハグすると、たわわなオパイがつぶれたまんじゅうみたいになっちゃってますがっ。



「それじゃあ、ワシらは帰るとするぞい。それでは皆様、行きますかのー。準備はよろしゅうございますかのー?

 では。あー、ほいっ」


 神様店長が手に持った杖をひと振りすると、しゅわわあっと音を立てて、みんな一斉に帰っちゃっいましたよ。


 ポプラールさんは神様店長と腕を組んで、にっこり笑ってた。

 おじいちゃんと介護人ってカンジじゃ無くて、ちゃんと夫婦に見えたから不思議ですよ!


 結局、ポプラールさんの声が魔王に奪われた話は聞けなかったな。

 俺が踏み込んじゃいけない話なのかな……

 一応、魔王に対抗できる勇者なんだけどなー。ポンコツだけど。



「さーって!ひととおり片付いたら、新婚旅行にでも行くかっ!」


「えっ? そっ、そうですわねっ」


 なんだか赤面してますよペリメール様。

 なんて初々しい新妻女神様なんですかねっ。


「ねえ、お姉ちゃん。新婚旅行って、何処に行くか決めてあるの?」


「いいえ。それがまだなのですわっ」


「そんなモン行き当たりばったりだぜっ!

 道は風に訊けって言うからなっ!」


 うむむ、風は道案内してくれないと思うぞ、風来坊女神っ。

 あっという間に迷子になるのが見え見えなんじゃないですかねっ?


「ちゃちゃっと片付けちまおうぜっ。旅行が楽しみだなっ、ペリ子っ!」


「えっっ? そっ、そうですわねっっ♡」


 あー、ハイハイ。

 旅行に行ったら、思う存分いちゃこらしちゃって下さいましねっ。



 それじゃあ、後片付けしますかねー。

 仕事はまだまだ残ってますからねっ。

 ホントなら、新婚の二人は後片付けなんてしなくてもいいんだけどなー。


 やると言ってきかないのですよ、お二人さん。煌光神衣グリスタードレスから動きやすい服装に着替えて、まだまだ元気いっぱいですよ。

 フィルフィーはもちろんジャージですよ。


「フィルフィーは新婚旅行にもジャージで行きそうだよねっ」


「あん? そのつもりだけど?」


 マジかっ。

 思えばフィルフィーの服って、ジャージとセーラー服、あと特攻服と煌光神衣グリスタードレスくらいしか見たコト無いような。


「せっかく美人なんだから、もっとオシャレに気を使えばいいのに……」


「フィルフィーさんの一番はジャージなのですわっ。幼い頃からのお気に入りなのですわっ」


 ちっちゃい頃からジャージ好きっ?

 ホントにブレないな、フィルフィーは。


「わかってねえなあ、ペリ子はっ。今の一番は違うぞっ」


「えっ? そうなのですかっ?ですわっ」


「あたしの一番はペリ子だからなっ」


「えっっ? そっ、そうにゃのでしゅかっ?ですわんっ♡♡」


 服の話をしてたのに、何が一番かって話になっちゃった。

 はー。

 ペリメール様ったらフニャフニャですよー。


 ラーフィアちゃんはちょっと呆れつつも笑顔ですよ。


「あのねえフィルフィー。いつでもどこでも人目も気にしないでイチャイチャするのを『バカップル』って言うのよっ?」


「へいへーい。気をつけまーす。

 でもホントはラフィーだって、ヒカリとイチャイチャしたいんだろー?

 コーセー施設入ってたんだから、かなり溜まってんじゃねーのかあ?」


 ニターリと悪魔の微笑みですよ、ヤンキー女神っ。

 なんてコトを言うんですかね、まったく。


「フィルフィー達が新婚旅行に行ったら、たっぷりしっぽりイチャイチャするからいーのっ!

 ねっ。ヒカリちゃんっ」


「えっっ!?」


 たたたたっぷりしっぽりってっ?

 いったいナニする気なんですか、ラーフィアちゃんっ?

 その時は来たれりってヤツなんデスカっ?

 うおお、ドキドキしちゃいますよラーフィアちゃんっ。


「レイルちゃんは、スズキくんとどっか行ったりしないのぉ?」


「えっ!?わっ、わたしとスズキ君はべべべべべ別にそんなっ!?」


 フェイリアちゃんの思わぬぶっこみにしどろもどろですよレイルさん。

 俺にはやたら厳しいけど、純情な恋愛の新米女神様ですよー。



 なんてお喋りをしつつ、みんながほっこり気分で後片付けしてたその時ですよ!


 いきなり、唐突、突然にっ!

 ばたあんっ!

 と、荒々しく披露宴会場の扉が開いたっ!


 むむっ? いったい誰ですかっ?

 せっかくの和やかな雰囲気がブチ壊しじゃないですかっ。

 

「皆様、宴もたけなわでございますわねえっ!おーっほっほっほっ!」


 高笑いと共に、フリフリヒラヒラ衣装の黒づくめの女の子が入って来ましたよ。

 クリーム色の長い髪を縦ロール巻きにして、頭にはでっかい白色のリボン。

 身長は俺と同じくらい、小顔でパッチリおめめのちっこカワイイ美少女ですがっ。


 いったいどちら様なんですかねっ?

 宴もたけなわって言うけど、披露宴は終わっちゃってますよ!

 会場には俺達六人の他に誰もいないし。

 

「あっ、あなたはっ!」


「ラーフィアちゃん、この娘、知ってるの?」


 この娘を見た途端、ラーフィアちゃんの表情が一瞬で険しくなっちゃいましたよっ?

 

「あなたはっ! 魔王シフォン=ベイキング!」


 なぬっ?

 こんなちっこカワイイ娘が魔王ですとっ!?

 なんかケーキみたいな名前だけど。


「どうしてあなたがここにっ!?」


「見つけたわよっ!

 ポプラールマートの娘、フィルフィーマートっ♪」


 ラーフィアちゃんの事は完全に無視して、フィルフィーに向かってびしっ!と指差しましたよ、魔王シフォン!


「ああん!? なんだテメエはっ? いきなり殴り込みに来るたあ、い~い度胸してんなあ?」


 フィルフィーはポキポキっと指を鳴らして臨戦態勢!

 うおお、る気満々ですよヤンキー女神っ!

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