披露宴の女神様! 2

 おかしなサプライズゲストの登場だったけど、フィルフィーの強さを見せつけちゃう、なんていう余興を挟みつつ。


 続きましては。

 友人代表として、フィルフィーとペリメール様の幼馴染み、アーラさんとキャノラさんから歌のプレゼントですよ。

 披露宴ではよくある光景みたいだけど、現役の舞台女優アーラさんの生歌ってレアなのではっ?



「ではでは、ここでっ。二人の門出を祝福いたしまして、私達からオリジナルソングをプレゼントしたいと思いまぁす♪

 伴奏のアコースティックギターはキャノラ=オリーブですっ!」


「はぁい♪ キャノラでぇす♪ こちらに歌詞を提示いたしますので、よろしければ皆さんもご一緒に歌って下さいねぇっ♪」


 がたごととボードを設置して、歌詞を披露するキャノラさん。

 だがしかしっ!


 歌詞の内容がおかしいぞっ?

 

 歌詞を見てビミョーにみんなの空気がおかしくなる中、そんなのは全く気にせずにアコギを演奏し始めるキャノラさん!

 アーラさんは、すでに自分のセカイに入っちゃってますよ!



「それではみなさん!歌いましょうっ!


 いち、にの、さんっ、ハイっ!


 あ~あ~あ~♪

  愛し~い~フィルフィ~♪

 たとえ~ケッコンっ、しよお~とぉも~っ♪

  私の~愛は~変ぁわらなぁいのさ~♪


 雨のぉ~♪ 日ぃもぉ~♪

  風のぉ~♪ 日ぃもぉ~♪

 ツラいぃ~時もぉ~♪

  悲しい~時もぉ~♪


 私のぉ~♪ 心にはっ♪

  あなたがぁ~♪

   い~るぅ~かぁらぁ~♪♪


 い~つ~で~も~離婚してくれてぇ~♪

  いいんだよお~う♪

 次はぁ♪ 私とぉ♪ 再婚っ♪

  しぃてぇねぇ~♪ しぃてぇねぇ~♪♪

   ふううう~~♪♪♪ 」


 なななっ!!

 なんって場違いな歌を歌いよるんですかね、アーラさんっ!


「ホントは5番まで歌詞があるんだけど、今日はここまでにしておくよっ♪

 結婚おめでとうっ♪

 フィルフィーちゃんっ!ペリメールちゃんっ!」


 ドン引きな空気と、パラパラと申し訳程度のまばらな拍手なのに平然としてますよっ!

 やっぱりメンタル強いなアーラさん!


「二人が離婚したら、今度は私がフィルフィーちゃんのお嫁さんねっ!」


 キャノラさんも無事に演奏を終えて満足気だけど、いったいナニを言ってるんですかねっ!


「えー?フィルフィーちゃんは私のお嫁さんになるんだよねえ?」


 アーラさんもおかしなコト言っちゃダメですよー!


「うっさいわっ!あたしはペリ子と別れる気なんざこれっぽっちもねえんだからなっ!

 子供ガキの頃からずっと好きだったんだからなっ!

 一途なヤンキーをナメんなよっ!」


「がががががががががガキの頃からっっ!?」


 しゅわわあっと真っ赤になっちゃいましたよペリメール様っ。

 みんなの前で惚気てくれちゃう新婚女神サマですよー。



 気兼ねも遠慮も無い、和気あいあいとした雰囲気は個人プロデュースならではってカンジです!


 ホントにグッジョブですよ、ラーフィアちゃんっ!

 アーラさんの歌もエンタメと思えば楽しかったですよー!



           ◇



 披露宴の締めは、集まってくれた皆さんへのペリメール様からの感謝の言葉。


 ここはやっぱりペリメール様じゃないとね。

 フィルフィーだと、メンチ切りながらタンカ切りそうだし。



 静かな会場の中に、ペリメール様の澄んだ声が響きますよ。



「皆様。

 本日は、女神ペリメールと女神フィルフィーマートの結婚式にお越し頂きました事、心から御礼申し上げます。

 ……私、ペリメールは。

 フィルフィーさんと共に人生を歩むと決めました。

 同性同士の結婚は珍しく無くなったとは言え、まだまだ偏見が多いのが現実だと思います。

 ですが……

 二人なら……どんな困難にも打ち勝てると、信じています。

 お父様、お母様。

 そして……ここにお集まりの皆様からは、多くの温かい祝福の言葉を頂き、本当に嬉しく思います。

 本当に……本当に、幸せです。

 まだまだ若輩者の二人ですが……これからも、叱咤激励の御言葉を頂けると幸いです。

 本日は、誠に……

 ありがとう……ございまし、た……っ」


 最後は涙ぐみ、声を詰まらせて深々とお辞儀するペリメール様。

 フィルフィーもペリメール様を気遣いながらペコリとお辞儀です。


 一瞬の静けさの後。


 みんなからパチパチと拍手が贈られましたよ。

 その拍手は次第に大きくなって。


 ずっと鳴り止まないままですよ。


 すっごく感動的ですよー。

 なんだか俺も泣きそうですよー。


 温かい祝福の拍手を受けて、ペリメール様の頬をひと筋の涙が零れ落ちましたよ。


 幸せの嬉し涙。


 キレイな涙ですよー。


 フィルフィーはそんなペリメール様の肩を優しく抱き寄せて、そっと頬にキスをしましたよ。

 なんてアツアツでラブラブなんですかねっ。


 なんだか妬けちゃいますよ!


 ホントにおめでとう!

 フィルフィー! ペリメール様!



           ◇



「……ねえ、フィルフィーさんっ」


「おうっ?」


「いまさらですけど……不束者ですが、末長くよろしくお願いいたしますっ。ですわっ!」


「……おうっ! こちらこそだぜ、ペリ子っ!」

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