結婚式の女神様!

 ラーフィアちゃんの母親アルレさんと、ペリメール様の母親エルレさんの茶番劇を挟みつつ。


 いよいよです。


 いよいよ『宣誓の儀』の時間です!


「そんじゃあ、くとすっかっ!

 いっちょ気合い入ってるんで四露死苦よろしくう!」


 ぬぬぬ、静かにしなさい、ヤンキー女神っ。

 こんな時でもウルサイとは、筋金入りのお騒がせ女神ですよっっ!



「では行こうかの、フィルフィーよ」

 

「あいよっ!おとっつぁん!」


 と、エスコートする神様店長の腕を取るフィルフィー!

 親父でもなく、父ちゃんでもなく、ましてやパパでもなくって『おとっつぁん』と呼ぶなんてっっ!

 どこまでも型破りですよ、江戸っ子女神!

 でもやっぱり、パッと見では親子に見えませんがっ。


 フィルフィーのお母さんは、柔らかく微笑んで二人を見送りましたよ。

 まだ話せてないから、後でちゃんと挨拶しなければっ。


           ◇


 まず先にフィルフィーと神様店長が入場。


 みんなに見守られながら、バージンロードをしずしずと歩いて行く二人。


 パイプオルガンの柔らかな響きが神聖な空間を演出してますよ。


 祭壇までフィルフィーをエスコートする神様店長は緊張するでもなく、ひょうひょうとしたもんですよ。


 俺とフェイリアちゃんは、フィルフィーの長いヴェールを持って後に続きますよ。

 ここで長いヴェールかドレスの裾を踏んづけたら面白いかなー、とかは思うだけにしておいてあげますよ!


 俺は二人が並んでるのを見て、この時ばかりは思っちゃいましたよ。


 神様店長に似なくて本当に良かったね、フィルフィー。

 ってね!



 祭壇に付くと、神様店長はそのまま神父サマに早変わり。

 フィルフィーはペリメール様が来るのをおとなしく待ってますよ。

 でも、なーんかビミョーにほっぺたがピクピクしてるのは、笑いをこらえてるからだろうなー。

 人がいっぱいいるのに、誰も喋らない空間ってなんか笑えるからなー。

 そこだけはフィルフィーに共感出来ますよ!



 さてさて、続いてペリメール様の入場です!


 ペリメール様をエスコートするのは、イケメンダンディーなお父さん。

 何なんですかね、めちゃめちゃ絵になる二人なんですけど!

 バージンロードが似合い過ぎるっ!


 ラーフィアちゃんとレイルさんがペリメール様の長いヴェールを持つ姿も、めちゃめちゃサマになってますよ!



 一歩一歩、フィルフィーを見つめたまま静かにゆっくりと祭壇に向かうペリメール様。

 待ち受けるフィルフィーの表情が、さっきとはうって代わって穏やかです!


 二人ともずーっと見つめ合ったままですよ!

 あなたしか見えないってカンジがめっちゃ伝わってきてますよー!


 パイプオルガンの演奏が終わると同時に、祭壇の前に並ぶ二人の花嫁さん。


 ここで『愛の宣誓』再びです!

 前の時は俺がやらかしちゃってグダグダだったけど、今回は正真正銘のホンモノですよー!



「あー。本日はお日柄もよろしく、お二人のご結婚をココロから祝福いたしまするじゃ」


 神父としての神様店長を見るのは初めてだけど、ちゃんと進めてくれるんですかね?

 いきなりバグったりしないだろうなっ。



「あー。女神フィルフィーマートよ。

 そなたは、病める時も健やかなる時も、いつ如何なる困難があろうとも、女神ペリメールを愛する事を誓いますかな?」


「はいっ!誓いますっ!」


「ホントかな?」


「あたぼうよっ!こちとら伊達に長年ヤンキーやってねえからなっ!一途なヤンキーの愛は永遠だってトコロを証明してみせらあっ!」


「うむ。善きにはからうがよいぞ、女神フィルフィーマートよ」


「あざっす!」


 なんなんですかね、このやり取りは。

 宣誓の儀でタンカ切るなんてアリなのかっ?


「あー。それでは。

 女神ペリメールよ。そなたは、病める時も健やかなる時も、いつ如何なる困難があろうとも、女神フィルフィーマートを愛する事を誓いますかな?」


「はいっ。誓います!ですわっ!」


「ホントかな?」


「もちろんですわっ!私は、幼い頃からフィルフィーさん一筋なのですからっ!ですわっっ」


 ペリメール様は祭壇に上がってからも、ずーっとフィルフィーを見つめたままですよ。

 一瞬たりとも目を離してない!

 神父の神様店長のコトなんて、まったく眼中にナッシング!

 幼い頃からって、どんだけフィルフィーのコトを好きなんですかね、ペリメール様っ!



「うむ。善きかな善きかな。それでは指輪の交換をば」


 指輪の交換とは言いますが。

 実は二人ともしちゃってるんですよ、ラーフィアちゃんから受け取った指輪をね。

 どうするのかなー?と思ってたんだけど、フツーにお互いの左手の薬指に、二人が用意した指輪の交換をしましたよ。

 ダブルリングってヤツですよ。



「うむ。しかと見届けましたぞ、お二人さん。

 それでは、あー。誓いの口づけを。ぶちゅっとどうぞ、ですじゃ」



「……ペリ子っ」


「……フィルフィーさんっ♡」



 神聖で厳かな空間の中。


 二人の女神様は、お互いのヴェールをめくって、誓いの口づけを交わしましたよ。

 

 二人とも、スゴく幸せそうな顔ですよ。


 フィルフィーとペリメール様。

 俺がこの世界に来てから、ずっとお世話になってる二人。

 いろんなコトが思い浮かびますよー。


 あれ……?

 あれっ?


 うわ、なんか泣きそうっ。


 と、チラッとカシマシ三人娘を見てみると。


 号泣!

 三人ともポロポロと大粒の涙をこぼしてますよー!


「おめでとうっ、お姉ちゃんっ、フィルフィーっ」


 ラーフィアちゃんは、まるで自分の事のように嬉しそうですよ。


「おめでとうございますっ。お幸せにっっ」

「尊いっ♡ 尊いですぅ♡」


 レイルさんとフェイリアちゃんも、めっちゃ嬉しそうです!



「今ここに、新たなる愛の絆が誕生した事を祝福いたしまする。二人に永遠の幸あれ、ですじゃ。おめでとうさんじゃ。フィルフィーマート。ペリメールよ」



           ◇


 ここで一旦、外に出て。


 さてさて、お次は!

 ブーケトスの時間ですよー!

 女神様が投げるブーケなんて、超激レア!

 式に招待された女性陣が位置取りに必死ですよ!

 もちろんアーラさんとキャノラさんも参加です!


「フィルフィーちゃんっ!

 ぜひとも私にそのブーケを下さいなっ!

 そしてそのブーケをもって私とケッコンしよう、フィルフィーちゃんっ!」


「誰がするかっ!あたしのぺリ子への愛は永遠だっ!」


 アーラさんのトンデモ発言に反抗しつつ、ぐいっ!とペリメール様を抱き寄せるフィルフィー!


「あんっ♡ フィルフィーさんたらっ♡」


 あー、ハイハイ。

 みんなが見てる前で『愛の宣誓』しちゃったんだから、誰の目も気にせずにイチャコラしちゃって下さいましっ。



 まずはペリメール様のブーケトス。

 現役の恋愛の女神様のブーケは、女の子だったら誰だって欲しいハズ!


「それでは、いきますですわあっ! それえっ!」


 ペリメール様が、ぽーんと放り投げたブーケは、ふわっと風に流されて。

 ぱしっ!とブーケをキャッチしたのは、なななんとっ!

 

 ラーフィアちゃん!


「やったあ♪ ねえねえ、これってもしかしてっ!次は私とヒカリちゃんだったりするのかなっ?」


「えっ!?」


 マジですかっ。

 俺とラーフィアちゃんがご結婚っ!?

 イマイチ現実味が無いですけどもっ!


「次はあたしだあっ!オマエラ、よそ見してんなよおっ!くぜえっ!うらあああああっ!」


 大きく振りかぶって、バカヂカラでブーケをぶん投げるフィルフィー!

 ぎゅわわっ!と高速スピンしながら飛ぶブーケ!

 こんなの誰が取れるんじゃいっ!

 と思った瞬間、ぎゅん!とブーケが向きを変え!


 避ける間も無く、べち!っと、俺の顔面に直撃っ!


「あいたあっ!?」


 こらっ豪腕女神っ!イタイじゃないかっ!

 ブーケってもっとふわっと投げるもんだろっ!

 ブーケトスするだけで伝説作ってくれちゃいますよフィルフィーはっ!


「ヒカっ!ヒカリちゃんっ!大丈夫っ?」


「あーははははっ!ナイスキャッチだなヒカリぃ!」


「お二人がブーケをキャッチしたというコトは、次はヒカリ様とラフィーさんの番かもしれませんねっ。ですわっ♪」


「やっぱりお姉ちゃんもそう思うよねっ!ねっ!」


 ラーフィアちゃんは照れつつも、めっちゃ嬉しそうですよ!

 うおお、俺はどんな顔していいかわからんですよー!


           ◇


 かららん、ころろんと鐘が鳴り。


 爽やかな風が吹く、雲ひとつ無い快晴の下。


 新婚女神のお二人と周りの人達は、みんなみんなニコニコ笑顔ですよ。


 たくさんの祝福の花びらが舞う中で。



 二人の女神様は、最高に幸せそう。



 俺は、この世界に来られて良かった。

 願う姿にはなれなかったけど。



 そんなの、もう、どうでもいいや。

 


 こんな素敵な瞬間にいられる事を。


 心の底から嬉しく思う。



 ラーフィアちゃんが、そっと俺の手を繋いでニコッと笑顔を向けてくれた。

 魔王だった頃とは全然違う、柔らかい微笑みですよ。


「いつか……私とヒカリちゃんも……ね?」


 オーシャンブルーの瞳で、俺を見つめるラーフィアちゃん。


 うおお、カワイイっ!

 カワイイが過ぎますよラーフィアちゃんっっ!


 んっ? でも、これって、男と女がフツーに、ってコトだよな……


 いいのかなっ?

 いいんだよね?

 いいんですっ!


 男の百合娘ゆりっこカプは継続なのだからっ。

 

「うん……いつか、ねっ」

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