あって無いようなポイントなんて

 更生施設の入り口で三人コントを繰り広げた後ですよ。

 

 受付窓口にやって来てちょっとビックリ。

 更生施設の受付嬢がなんとっ!


 ダークエルフ!

 めっちゃキレイなダークエルフのお姉さん!

 異世界ファンタジー感バリバリのダークエルフのお姉さんですよー!

 ダークエルフって初めて見たけど、ワルい感じなんてなくって高貴なカンジですよー!

 アレかな?ハイダークエルフってやつかなっ?


 切れ長の目。瞳の色は濃黒。

 艶やかな銀髪は絹の糸みたいになめらかで、すらりと長くて細い手足。

 絵に描いたお人形さんみたいな小顔美人のダークエルフさんです!

 

 こんな所で働いてるってのが不思議ですけどねっ。

 ドキドキしながら話しかけてみるですよっ。


「あの、スミマセン。ちょっとよろしいですか?」


「はい。ご用件は?」


 めっちゃクールビューティーですよダークエルフのお姉さん。

 美少女男のver.2の俺を見てもなんとも思わないみたい。


「ラーフィア=リンデルっていうコが入所してるとハズなんですけど……」


「ラーフィア=リンデルさんですね……はい。確かに入所中ですが」


「まどろっこしいコトやってねえで、さっさと用件言えやヒカリよう」


 むむっ。ヤンキー女神がイラついているっ?

 どーせ暴れたくてウズウズしてるんだろ殴り込み女神っ。


 この時、俺の中では二つの選択肢が。


 ◆◆


 ◇ 「面会に来たんですけど」


 ◇ 「迎えに来たんですけど」


 ◆◆


 どっちを言うべきかっ?

 うむむ迷いますよ男のっ。


『一瞬の迷いが戦場では命に関わる』とは、前世のネトゲ『異星間戦争』のマッサ大佐の言葉っ。

 ちなみにマッサ大佐は異星人です。


 迷ってなんかいられない!

 オトコらしく、イヤ、男のらしく言うのだ!

 

「あのっ。ラーフィアちゃんをっ、あっ。ラーフィア=リンデルさんを迎えに来ましたっ!」


 そうです!迎えに来たのです!

 連れて帰れるものなら連れ帰るのです!


 若干声が震えるよ男のっ!

 静かにクールに対応するダークエルフのお姉さんから出た言葉はっ!


「入所して間もないので無理です」


 ですよね!

 常識的に考えてもそうだよな……


「どうしてもと言うのなら、現金なら500万エルン。女神ポイントもしくは勇者ポイントなら50万ポイント必要となりますが」


 高っ!めちゃめちゃ高いじゃないですかっ!


 現金なんて俺のバイト代じゃ絶対ムリだし、女神ポイントでもフィルフィーが『再生』の仕事でゲットしたポイント全部ですよ!?

 フィルフィーは少し使っちゃったみたいだからむしろ足りない!?


 って言うか、フィルフィーがポイント出してくれるとは思えないんですけど!

 さすがに出所は無理か……


 と、思いきや!


「そのくらいで出られるんなら払ってやんよ。でもちょっと足りねえんじゃねーかなあ?」


 んななっ!なんとっ!

 大量ゲットした女神ポイントを支払ってもよいですとっ!?

 なんでそんな太っ腹なんですかねフィルフィーはっ!


「いっ、いいのフィルフィー?女神ポイント無くなっちゃうよっ?」


「そんなもん、また働いてゲットすりゃいーんだよ。でも足りねーからなー。ヒカリも少しは出しやがれっ。ペリ子はどうするよ?」


「私も少しならお出し出来ますわっ。ラフィーさんの為なら、えんやこらですわっ」


 えんやこらってなんですかねっ?

 それはまあいーです!

 俺だって少しは持ってるハズだから出してあげますよポイントを!


 ポイントは勇者登録カードに自動加算される筈だけど、チェックしたコト無いからわかんない。

 俺って勇者ポイントなんて持ってるのかなっ?


「そちらのお方は勇者様なのですか?

 では、勇者カードをお持ちでしたらポイントチェック致しますが?」


 と、ダークエルフのお姉さん。


「あ、じゃあ、お願いシマス」


「こちらのモニターにポイントが表示されますのでご確認下さい」


 なんか宝くじ売場の当選結果が表示されるアレに似てますよ。

 ダークエルフのお姉さんにカードを手渡して確認してもらった俺の所持勇者ポイントは、なんとっ!


『35』


「……ふっ」


 なぬっ!?

 鼻で笑ったよダークエルフのお姉さん!

 マジかっ!

 いや、まあ、確かに勇者になってからと言うもののなーんもしてないから、ポイントなんて無くて当たり前ですけども!


 35ポイント!

 さんじゅうごっぽいんっとっ!です!

 むしろドコでゲットしたのか知りてーです!


 鼻で笑われちゃったよ妄想勇者!


「カードお返ししますね、妄想勇者サマ♪」


 くああっ!バカにされてるっ!

 めっちゃバカにされてますよ妄想勇者っ!


 エルフとかダークエルフって、人間を見下すトコロがあるってホントだったんだなっ!

 自分より『レベル的に下』と見た人間には、特にそういう傾向が強いとかなんとか!


 ダークエルフのお姉さんの目がクールでヒヤヤカっ!

 めっちゃバカにしてますよー!


 ぐぬぬぬっ。

 なーんも言い返せないのがなんともかんともってヤツですよー!


「そちらの女神様は……あっ、失礼いたしました。ペリメール=アコルディオーネ様っ」


 え。

 ペリメール様に対してめっちゃカシコまってますよダークエルフのお姉さん。

 て言うか顔を知ってるっぽい?


 ペリメール様って有名なのかなっ?


「恋愛の女神ペリメール=アコルディオーネ様の御守りのおかげで私の恋が実りましたっ。感謝いたしますっ。ありがとうございましたっ」


 ん?

 それって、恋愛成就の御守りのコトですかねっ。

 ペリメール様が内職で作ってるのを見た事ありますよっ。


「あらあらまあまあ!それは女神冥利に尽きるというものですわっ。

 私の魔力と願いを込めた御守りが少しでもお役に立てたのなら、嬉しい限りですわっ。

 ですが、私の作った御守りは心ばかりに過ぎません。貴女の持つ魅力が貴女の恋を成就させたのですわっ」

 

 おおー。さすがペリメール様はおっしゃる事が女神っぽい!

 あっ、女神だった。

 内職で御守り作ってるってのは言わない方が良さげですよ!

 こういうのも女神ポイントに加算されてるのかな?

 ペリメール様はポイントをコツコツ貯めるのが得意みたい。


 ペリメール様の女神カードをチェックしてもらうと、ペリメール様の所持ポイントは、なななんとっ!

 33万ポイント!

 さんじゅうさんっまんっ、です!

 フィルフィーよりちょっと少ないけど、二人合わせればラーフィアちゃんを出所させるには十分足りるポイント!


 俺の所持ポイント『35』なんて、あって無いようなものっ!

 ザコ過ぎてため息すら出ませんようごおおおっ!


 あっ。


『35』って数字は『ザコ』って読めるっ。

 くああっ!なんじゃいこの偶然はっ!


 こんなんじゃ、ほんのちょっとしかラーフィアちゃんの助けになれないぞ男のっ!


 ナニしに来たんだ妄想勇者っ!


 ふああああっ!

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