再び爆誕!新しい俺!

「いつまでもウダウダやってらんねえからな……コウダヒカリよ。

 オマエがなりたいと願う姿を言ってみろ」


 冷たく事務的な感じでそう言って、フィルフィーは静かに目を閉じた。



 俺は……覚悟を決めた。


 後悔なんてしない!



「はい!……それじゃあ!言います!」


 俺が願う次の姿に驚くがいい、ヤンキー女神フィルフィーマートよっ!

 そしてぎゃふんと言うのだっ!


 ミカンになった俺が告げますよ!


 ヤンキー女神フィルフィーマートに!


「女神フィルフィーマート様っ!

 ボクをっ!元の姿に!

 とびっきりカワイイ男のにして下さい!」


 ってね!


 一瞬の静寂。

 フィルフィーは目を閉じたまま沈黙。


 高まるよ緊張感っ。

 ドキドキするよ俺の心臓っ。


 ミカンだから心臓なんて無いんだけどドキドキはするのです!


 目を閉じて押し黙ってたフィルフィーが、くわっ!と目を見開き!


 俺にメンチ切りながら言い放った言葉は!


「やなこった」


 なぬっ!?

 なんでなんでっ?

 元の姿にっ!

 男のにして下さいって言ってるのにっ!

 やなこったとはどういうこったですよアマノジャク女神っ!


「ちょっ!フィルフィー!?なんでっ?ナニがやなこったなのっ?」


「ああん!?それが本当にテメェのなりたい姿なのかよ!?」


「そっ!そうだよっ?だってっ!

 違う姿になったら、今までのボクがいなくなるってコトでしょっ?

 みんなとの思い出とかっ!

 全部無くしちゃうってコトなんでしょっ?」


 クロジョでの出来事、バイト先での出来事、ゴリュウさん、キャノラさん、アーラさん。

 スズキさん、レイルさん、フェイリアちゃん。

 神様店長。

 ペリメール様。

 フィルフィー。


 そして……ラーフィアちゃん。


 全員と親しいってワケじゃないけど。

 今まで出会った人達との繋がりを全部断ち切ってまで。


 俺はっ。



 イケメン勇者になりたいとは思わない!



 真剣なミカンに対してフィルフィーは仏頂面のままですよ。

 

「……だったらなんでリセットしたんだよ?」


「それはっ、そのっ。

 その場のノリというか、流れというかっ?

 浮かれすぎてて考えが追い付かなかったっていうかっ。

 あのっ。要するにバカだったんですうっ!」


「……オマエがバカなのはよーく知ってらあっ」


 むっ。

 フィルフィーがソレをいうのかっ?


「だけどよっ。それでこそオトコノコだぜヒカリぃ!」

 

 ニターリと悪魔の微笑みですよヤンキー女神!

 

「あたしの舎弟ならそうじゃなきゃなっ!

 そんなオマエにプレゼントをくれてやるぞっ。

 女神の祝福のキスだ!ありがたく受けやがれっ!」


 なぬっ!?キスですとっ!?

 勝手に盛り上がりスイッチが入ったっぽい!?

 なんでなんでっ?

 動けないからなーんも出来ないんですけどっ!


 うわわっ?

 ひょいっと持ち上げられたと思ったらっ!

 

「まるまる太った美味そうなミカンだぜ!」


 食うんかいっ!

 と、思いきや!

 フィルフィーのぷるぷるクチビルが近付いてくるですよっ?


 そんでもってっ!


 ちゅっ♡


 なんつってミカンに優しくキスをしましたよー!


 ふああっ!

 ミカンとは言えっ、フィルフィーにまたチューされるとは思ってもみなかったですよー!

 フィルフィーにチューされるのは2回目だけどっ!

 なんだかドキドキしちゃいますよー!


「あっ!あーっ!ヒカリ様ったらっ、ズルいですわあっ」


 おっとペリメール様がヤキモチです!

 端から見ればミカンにチューしただけなのにっ。

 どんだけフィルフィーのコト好きなんですかねっ?


「ペリ子には、後でいくらでもチューしてやっからな!べろっべろにな!」


「べべべべべべべべろっべろじゃなくてもよいのですわっ。フィルフィーさんたらお下品ですわあっ」


 なんつって頬に手をあてて赤くなっちゃってますよ!カワイイ新妻さんですよー!

 んっ?ところでどっちが妻なのかなっ?


「わちゃわちゃしてて楽しそうじゃのう。ほっほっほっ」


 神様店長がニコニコして嬉しそうですよ。

 なんじゃいこの茶番劇。

 でも、なんだかいつもの俺達に戻れたっぽい?

 やっぱりこうじゃなくっちゃね!



 てなワケで!


 ヤンキー女神フィルフィーマートのラブリービームとファイナルフィニッシュビームで!

 男のの姿に再生リフォームです!


「うらああああっ!」


 フィルフィーのムダに豪快な掛け声とともに、ラブリービームのしゅぱぱぱぱああっ!という軽快な音!


「オラアアアアアっ!」


 続けてファイナルフィニッシュビームのしゅわわわわあああっ!ってなサイダーの泡みたいな音とともにっ!


「よっしゃカンペキぃ!バッチ来いだぜっ!」


 出ましたよ、どや顔フィルフィー!

 

 そしてっ!


 ゆらーりと淡いスモークエフェクトの中!

 戻りましたよ男のっ!


 男の勇者コウダヒカリが復活です!


 衣装がまたしてもゴスロリメイド服なのは、フィルフィーの趣味丸出し!

 そんでもって、やっぱりアリますよコヒカリ君!なんか、ほっとしますよね!

 男のってこうじゃないとね!

 でもなんかコカンに違和感が……?

 


「ただ元に戻すなんて面白くねえからなっ。

 超絶美少女男のver.2にしてやったぜ!」


 なぬっ?

 ver.2ですとっ?

 美少女なのに男のってなんだか矛盾してるけどっ。


「えっ?ドコが違うの?」


睫毛まつげ微妙ビミョーに長く、そばかすを薄く!眉毛もうっすらリメイクしたぞっ。

 さらに天然のアイシャドウで、うるキラの目元はマニア垂涎スイゼンモノっ!

 さらにさらにっ!

 クチビルのプルプル感をアップっぷだ!

 前のヒカリらしさを残しつつのグレードアップっぷだからなっ!

 美少女好きのラフィーなら、ひと目見ただけでぶっ倒れるクオリティだぜ!

 言っとくけどプチ整形なんかじゃねえからなっ!

 元の素材を磨き上げただけだからなっ!」


 なんて解説しながらフィルフィーは大コーフン!

 アップっぷって言い方はカワイイけど、ちょっと落ち着きなさいよ美少女ヲタ女神っ。

 

 前にも増して美少女っぷりがマシマシって!

 これでいいのか妄想勇者っ!


「ヒカリ様っ!ラヴリーですわっ!キュートですわあっ!

 美少女の美少女による美少女のための美少女にっ!ですわあっ!」


 またソレですかっ。

 ただ美少女って言いたいだけなんじゃないデスカネ、ペリメール様っ。


「おお、おお。善きかな善きかな。カワイイぞい。

 ヒカリ目当てのお客様も増えるというものじゃわい。看板娘ならぬ看板男のじゃのう。ほっほっほっ」


 ちょっと神様店長っ?

 俺のバイトは継続確定なんですかっ!?

 

「またヒカリのぷりケツにさわれると思うと嬉しいぞい。ぐすん」


 おいっエロジジイっ!

 お尻なんて触らせませんよっ!触らせてたまるものですかっ!


「オトコ同士なんだからいーだろ別にぃ」


 なんつって、なんかさっきからニヤニヤしてるフィルフィーから、更なる衝撃のひと言がっ!

 

「ヒカリにもういっちょサプライズ!

 コヒカリ君を小指サイズにしてやったぜ!」


「なっ!?」


 なっ!

 なぬっ!?

 ただでさえちっちゃいコヒカリ君を小指サイズにっ!?

 ナニしてくれてるんじゃいヤンキー女神っ!


「なっ!なんでなんでっ!?」


「いーだろ別に。失くなったワケじゃねーんだし。

 その方がラフィーも喜ぶだろうし、カワイイし」


 なっ!なっ!なっっ!

 なんてコトをしてくれてるんじゃいヤンキー女神っ!


「元からちっちゃいんだから大して変わんねーだろっ。笑えるわー!」


 笑えるかっ!

 さっき感じたコカンの違和感はそのせいかっ!


 どうやらこのヤンキー女神はっ!

 いくら女神ランクアップしたとは言え!


 やっぱり更生させないとダメなようですよー!

 

 うごおおおおおっ!

 

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