リセット実行!

「それでは行こうかのー。あー、ほいっ」


 神様店長の右手のひと振りで、しゅわわわわあっ!と、白いモクモクスモークのエフェクトがかかり!


 煙が晴れたその場所はっ!


 やって来ました選択の部屋!


 なんだか懐かしい、白い部屋ですよ。

 全部、ココから始まったんだよなー。


 思い起こせば1年と数ヶ月前。


 ヤンキー女神にキレられて、男のにされちゃって!

 あれやこれやとありながら!

 今ようやく!イケメン勇者への扉がカチャリと開きますよー!


 俺はウキウキ気分なんだけど、フィルフィーはいつにも増して仏頂面。

 うーん。せっかくの美少女の姿をリセットされるのがイヤなのかなっ?

 我ながらイイ美少女っぷりだぜ!って言ってたし、ペリメール様も褒めてたし。


 まあ、それにしても何もない空間ですよ。

 殺風景を通り越して味気ないというかなんというか。

 初めて来た時はそんなコトなんて思わなかったんだけどなー。

 俺もこの世界観に順応したってコトなのかな?



「では、ココからはフィルフィーマートに任せようかの。この1年間、女神として成長したトコロを見せてみんさい」


 神様店長とペリメール様は後ろに下がって、俺とフィルフィーが向かい合う立ち位置に。


 煌光神衣グリスタードレスのフィルフィーはスゴくキレイで、スゴく女神様っぽい。

 だがしかし!

 フィルフィーったら、なんかめっちゃメンチ切ってくるんですけどっ!


 向かい合って仁王立ちのフィルフィーが俺を見下ろすカンジ、これはっ!

 ヤンキーにカツアゲされてるいじめられっこの図的なアレですよっ。

 なんかずっと不機嫌だから、俺から話を切り出すしかないっぽい!?


「あああのっ!フィルフィーってリセット権取得したんだよねっ?

 どうやってリセットするのっ?」


「……特別なコトなんてなんもねえよ。

 この『選択の部屋』で、あたしがリセット実行するだけだ。

 一旦、魂を仮の入れ物に入れてから、次の違う姿に再生する。

 違う姿になっても、今までの記憶とか取得したスキルは消えない」


 ふむふむ。三つのスキルは消えないのか。

 不機嫌なままで答えてはくれたけど、なんか事務的で棒読みですよ。

 いつものフィルフィーとは明らかに違います。


「リセットするかどうかはオマエの自由だ。

 ただ……違う姿になるってどういうコトなのか、よく考えろ」


 考えろとは言うものの。

 ムリヤリ男の娘の姿にしたのはフィルフィーなんだからなっ。

 一番最初に俺が願った姿にしてれば、こんなコトにはならなかったんだからなっ。


 だから言ってやったですよズバっとね!


「ボクをっ!リセットして下さいっ!

 ボクはっ!イケメン勇者になりたいんですっ!」


 ズバっと言うって割りに敬語なのは、メンチ切ってくるフィルフィーがコワイからですよ!


 反抗的な態度の俺に対して何か言い返してくるかと思いきや、フィルフィーは。



「……女神フィルフィーマート=チェインストアがリセットを実行する。

 私の指先を注視せよ、コウダヒカリ」

 


 おおっ!いつものフィルフィーじゃないですよ!

 なんか、ちゃんと女神様っ!

 初めて出会った時に聞いたキレイな声、ゴッデスボイスが再びです!

 

 フィルフィーの指先を見るコト数秒間。

 


実行エンフォース。ReSet」



 美しいゴッデスボイスとともに、ピアノを弾くみたいにしてキレイな指をしならせると!


 しゅわわわわあああっ!と、足元から現れたもっくもくのスモークエフェクトが俺を包み込んだっ!


 むっ?

 むむっ?

 だんだん身体が変化していきますよっ?

 しゅるるとしぼんでいきますよー!


 ちっこい俺がさらにちっこくなっていきますよー!

 

 ふわわあっとスモークが晴れると。


 ん?

 んん?

 目線がめっちゃ下がってるし動けない。

 なんか最初の時のコトを思い出すなー。


 ん?

 んん?

 なんかフィルフィーがめっちゃデカい。

 っていうか、俺がちっちゃいからかっ?


「コウダヒカリ。オマエは今、ミカンの姿になっている」


 え。

 ミカンっ!?またミカンなのっ?

 なんでかなっ?


 って、これはっ!


 ミカンになってローアングルから見上げるフィルフィーの長い美脚がとってもナイス!

 ドレスの裾は長めだけど、チラチラ見える内ももがなんともはやっ!

 裾がヒラリと揺れちゃったりしたら、おパンツ見えちゃいそうですよ!

 フィルフィーのおパンツは何度となく見てるけど、ひらひらドレスからチラリと見えるのはまた別格!

 ニャハー!


「フィルフィーさんフィルフィーさんっ。ヒカリ様のゲスい視線にご注意下さいませっ、ですわっ」


「ほえあっ!?」


 ゲスい視線ってペリメール様っ!?

 そんなつもりはっ!

 ちょっとだけありますけどもー!


 フィルフィーと想いが通じたあったからか、いつもなら言わないようなコトをズバっと言ってくれちゃいますよペリメール様っ。


「わーってるよ。パンツなんか見たけりゃどんだけでも見せてやんよ……なあ、ヒカリぃ」


 オオウ。

 フィルフィーったら、めっちゃ不機嫌にメンチ切りながら見下ろしてきますですよー。

 ズゴゴゴって謎の効果音が聞こえてくるようなド迫力!


 キレイな女神様にそんな態度でそんなコト言われちゃったら、股間の双子ツインズが縮こまっちゃいますよ、キュ!ってね!

 ミカンになった俺だけど感じるのですよ、股間の双子ツインズの存在をっ。


 にしてもっ!


 ◇ またミカン

    ミカンですよ

     ミカンです  ◇  ヒカリ



 ミカンの俺をじっと見つめながら、不機嫌なままフィルフィーが静かに語りかけてきた。


「なあ、ヒカリ……ラフィーのコトはどうするんだよ?」


「えっ?」


 ラーフィアちゃんは魔王不適合を言い渡されて現在は更正施設。


 根はワルいコじゃ無いんだから更正施設に入れるなんてコトしなくてもとも思ったけど。

 それが魔王不適合となった者が辿る道であり『勇者と魔王のバランス』を保つ為のルールだそうで。


 施設に入れられちゃったら、俺にはどうしようも出来ないんじゃないだろうか?

 更正プログラムをこなしてから施設を出るしかないのでは?


 そう思ってたんだけど。


 俺を見つめるフィルフィーの声がどこか寂しそうな気がするのは、なんでかな……?

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