新たな展開!?俺の物語!

女神事務所のイケメンクソメガネ!

 魔王城から帰ってきて数日が経過して。


 なんかこう、心にぽっかり穴が開いたというかなんというか。

 虚無感と言うか喪失感と言うか、まあなんかそんなカンジですよ。


『魔王ラーフィア陥落!』


 この大ニュースは、あっという間に広まって、世のオトコ達は『これで俺達の股間コカンは安泰だ!』なんつって大喜び。


 ざまぁみやがれとか、ガキがしゃしゃり出てくるからだとか、ぺったんこのクセにとか、酷い言葉がそこかしこから聞こえてくる。

 ぺったんこって、ただの悪口なのではっ?


 魔王が倒されるって、こういうコトなんだな……

 多くのオトコ達に恐怖を植え付けちゃってたから、その反動が大きいっていうのもわからなくも無いけど……


 でも。

 ラーフィアちゃんの野望は、本当に間違ってたのかな、って思ってみたりして。

 スローガンに掲げてた『全ての女性に安全と安心を』って考えは純粋なものだったんじゃないのかな……

 ただ。

 男のアレを小指サイズ化ってやり方が間違ってたのかも……


 俺が魔王を倒したコトになりそうになったけど、それはさすがに違うかな、って。


 だって俺、なーんもしてないですからね!


 ラーフィアちゃんに呼び出されて魔王城に行ってみたはいいものの、吊し上げられて丸出しにされた上に、ちっちゃいちっちゃい言われて泣いちゃって、って!

 どんだけド底辺のザコなんですかね妄想勇者っ。


 ラーフィアちゃんが魔王の座から陥落とは言うものの。


 大魔王サマに『魔王不適合』を言い渡された、っていうのがホントのトコロだし。


 魔王不在の魔王城には新魔王が現れるまでのしばらくの間、大魔王サマが仮魔王として勤務する事に。

 仮魔王って、なんじゃいそれ。

 

 ホント、おかしな世界ですよ。



 今日はバイトも無し。

 掃除洗濯もしちゃったし。ぽけーっと青空を眺めてる俺ですよ。


 白い雲がぷーかぷか。

 

 ラーフィアちゃん達……

 今ごろ、どうしてるのかな……

 更正施設って何をするのかな……



「くあああ~ああ。ヒマだな、ヒカリぃ。遊んでくれよー」


「ちょっ!フィルフィーっ?やめてようっ」


 あくびをしながら俺のジャージをずり下ろそうとするんじゃないぞ、ぐうたら女神っ。


 魔王ラーフィアちゃんの『快進撃』という名のチョン切りが終了した事でフィルフィーの『再生』の仕事も激減。

 だからってアパートから一歩も出ずにゴロゴロするないっ、ニート女神っ!


「ジャージ脱がさせろやヒカリぃっ!うらあっ!」

「なあっ!やめてってばあっ!」


 寝っ転がったまま俺のジャージの裾を引っ張るフィルフィー!

 脱がしてナニする気なんじゃい追い剥ぎ女神っ!


「ジャージの次はパンツだっ!うらあっ!」


「ちょっ!フィルフィーっ!」


 またおパンツ破く気かっ!

 と、その時勢い余って、ぺち!ってな音と共に、俺の短足がフィルフィーのキレイな顔を足踏みですよ。

 イエこれは事故ですよー!


「……やってくれるなヒカリぃ?」


「わっ!ワザとじゃないようっ」


「待てコラぁっ!」


「待てと言われて待つヤツなんていないようっ!」


 てな感じでわちゃわちゃとお戯れしてる時。

 ピポーン。とドアチャイムの音。


「ほらっ!誰か来たでしょっ!」

「ああんっ?」


 フィルフィーの一瞬の隙をついて、脱げかけのおパンツとジャージを直しつつ素早くすててっと逃げる俺っ。

 とりあえず、ほっ。


「おジャマしまあす」


 え!?勝手に入って来ちゃったよこのヒトっ!玄関の鍵かけてあったのに!

 しかも土足っ!


「やあ、フィルフィー。久しぶりだね」


 え。フィルフィーの知り合い?だったら土足も納得です。

 イヤ違うっ!

 イケメンだけど非常識にも程がありますよっ。

 

 まあ、スラリと背の高いヒトですよ。

 すらっとスリムなスーツがイケてます!

 フィルフィーよりアタマひとつくらい背が高いかな?

 あ、スズキさんと同じくらいかな?

 足長いなー。短足な俺の倍くらいの長さはあるんじゃないですかね?

 しゅっとしたメガネがめちゃ似合ってますよ。イケメンメガネさんですよー。

 俺のだっさいぐるぐるメガネとは大違いです!


「あん?誰だオマエ。勝手に入ってきやがって馴れ馴れしいヤロウだなっ。靴を脱げ靴をっ!部屋の中汚したらペリ子に怒られちゃうんだからなっ」


「ペリ子ってペリメールちゃんのコトかい?  

 一緒に暮らしてるってキャノラが言ってたのは本当だったのか。いいなあ。羨ましいなあ、ペリメールちゃん」


「ああん!? だったらなんだっつんだよ、このイケメンクソメガネっ」


「イケメンクソメガネはヒドイなあ。せめてクソメガネって言っておくれよ」


 クソメガネはオッケーなんですねっ?なんか変わったヒトですよ。


「え、フィルフィーちゃんたら私のコト忘れちゃったのかい?

 ひどいなあ。同期の女神だよう。今は女神事務所で働いてるのさっ」


 のさっ、と言いつつこげ茶色の前髪をかきあげるイケメンメガネさん。

 なんと女神だったのかっ。

 しゅっとした仕草がサマになっててカッコいいですよー!それを見てもフィルフィーはなーんとも思わないみたいだけど。


「同期の女神?お前みたいなイケメンクソメガネなんていたっけか?」


「えー?幼馴染みの顔忘れるなんてヒドイなあ。アーラ=ヴィアータだよ。フィルフィーちゃんっ」


 またもや幼馴染みの同期生!

 なんかパスタソースみたいな名前だな。

 まあ覚えやすくてイイですけど!


「あん?アーラ……?オマエ、アーラか?

 なんだよ、だったら早く言えよなー!クソメガネかけてっからわかんなかったぜっ」


「思い出してくれたかいっ?」


 かいっ?と言いながら、すいっとメガネを外すアーラさん。

 その素顔がなんとっ!

 めっちゃイケメンなんですけどっ!

 オトコの俺から見ても、めっちゃ超絶美形マンですよ!

 なんかどっかの歌劇団の花形スターさんですかってくらいの美形マンです!

 あ、でも女神だから、マンじゃないのかっ?

 


「こちらのカワイイ方がヒカリちゃんだね?

 キャノラから聞いてたけど、やっぱり実物はカワイイねえ。

 どうもー。女神事務所に所属しておりますアーラ=ヴィアータと申しますー♪ まだまだ駆け出しですが、ひとつよろしくどうぞですー♪」


 なんつってアーラさんがすいっと名刺を差し出してきましたよっ!

 これはっ!

 名刺交換の流れってヤツですよっ。

 俺ったら、名刺持ってないならまだしも持ってるからね!

 名刺交換は社会人として、大人の階段登る的なアレですよ!

 ささっと名刺を用意してっ!


「あ、どもども。妄想勇者のコウダヒカリと申します。どぞ、ヨロシクお願いいたしマス」


 なんつって名刺交換ですよ。やっぱりこっぱずかしいですよー。


 アーラさんは俺の名刺をすっと受け取って、からの!

 片ヒザを床について俺の手の甲に、ちゅっとキスをしましたよっ!?


「君みたいなカワイイコと知り合えて幸運だなあ。以後、お見知りおきをっ♪ 妄想勇者のヒカリちゃんっ♡」


 と、パチッとウインクですよ!

 なんっですか、この王子様キャラはっ!

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