俺っ!絶体絶命っ!?
「その者はオトコじゃろ?見た目は美少女じゃが、お前が嫌って止まないオトコじゃ。
この先も魔王であり続けたいと言うのなら、その覚悟を示してみせい。ラーフィア=リンデルよ。
さあ、殺してみそ」
ななななんとっ!
いきなりハードな展開にっ!
今までは何処かしらふわあっと、ぽわあっとしたカンジだったのにっ!
いきなり現れて『殺せ』だなんて、ただ事ではナイデスヨっ!?
少々バグってるのかと思いきや!
いきなり大魔王っぽいコトぶっこんできましたよ大魔王サマっ!
でも『みそ』って言い方のせいで緊迫感に欠けてますよ!
「わっ!私がっ、ヒカリちゃんをっ?」
「魔王が勇者を殺すなど、別におかしなコトはあるまい?昔は殺し合いなど当たり前だったぞ?」
「それは昔の話でっ、今はっ……」
「ほう。大魔王に逆らうのか?ラーフィア=リンデルよ」
「……いえっ、そんなっ!」
眼光鋭くラーフィアちゃんを睨み付ける大魔王!その威力たるや凄まじく!
俺は端から見てるだけなのに、股間の
大魔王サマから放たれる『大魔王オーラ』が俺達4人を萎縮させちゃってますよ!
大魔王オーラってどんなのかよくわかんないけど、まあそんなカンジです!
「出来ぬというなら、レイルよ。オマエが代わりに殺してみそ」
「わっ!私がっ!?お言葉ですが大魔王様っ!こんなちんちくりんでもラーフィア様の想い人なのですよっ?」
「それがどうした?
魔王の部下が勇者を殺すなど大金星ではないか。我は、殺してみそ、と言ったぞ?」
大魔王サマから、ゆらゆらと放たれる黒い大魔王オーラっ!
これはとんでもない威圧感!
逆らおうなんて思うだけで、ぷしゅっと押し潰されちゃいそうですよ!
俺達の周りにどんよりと淀めく重い空気!
これはっ……!
「……申し訳ございませんっ、ラーフィア様っ!大魔王様には……逆らえません……っ」
レイルさんがゆっくりと俺の前にっ!
これはとってもヤバい展開、だがしかし!
いくらノーテンキな俺でも黙って殺られるワケにはいかないっ!
お着替えガチャで変身です!
でも、ただガチャっただけではポンコツな衣装しか出ない!
強い衣装をイメージ!イメージですよー!
ところがですよ!
「あー、ほいっ」
大魔王サマが指先をくるっと回すと、ピキっ!とガラスにヒビが入ったみたいな音がして!
あれっ!?金縛りっ!?
直立不動で動けませんよ男の
「うっ!動けないんですけどっ!?」
「お着替えガチャはさせんぞい、妄想勇者のヒカリちゃんよ。アレはなかなかに厄介なスキルじゃからのう」
なんとっ!
俺のお着替えガチャをご存知なんですか大魔王サマっ。
でも封じられちゃったからなーんも出来ない!
「ヒカリちゃんのように妄想力が強いとな、お着替えガチャで最強無敵の武器や防具を伴った衣装を具現化出来る、というコトに繋がるからのう。恐ろしいスキルじゃわい」
え!?そうなのっ!?
大魔王サマの口から『最強無敵』なんてパワーワードが!
まあ、ラジカルラミィは確かに強かったですがっ!アレは偶然出ただけなんですけど!
もしかして、お着替えガチャって俺が思ってるよりスゴいスキルってコトですかっ!
でもそれを今知ったトコロで動けないんですけどうごおおおおっ!
「魔王に慈悲は必要無い。そうじゃったの?ラーフィアよ」
「それはっ……」
「動けない者の首をハネるくらい、野菜の千切りくらいに簡単じゃろ」
まあそうかも知れませんが!
俺っ、千切りにされちゃうのっ!?
「千切りはちと難しいか……では、動けない者の首をハネるくらい、カツラ剥きくらいに簡単じゃろ」
カツラ剥きっ!
俺っ、全身の
「ん?カツラ剥きは更に難しいか……では、動けない者の首をハネるくらい、みじん切りくらいに簡単じゃろ。もうコレでいいかの」
みじん切りっ!
ランダムに細かくみじん切りにされちゃうのか男の
直立不動で動けないからなんも出来ないっ!
これはマジで詰みっぽい!?
転生した人生がここで終了ってマジですかああああああっ。
生命の危機ですよ男の
「……悪く思ってくれてもいい。大魔王様には逆らえない……私は、情弱だ」
「れっ!レイルさんっ!?」
「……スズキ君が……悲しむのかな……そんなの……見たくないな……」
ぽそっと寂しそうに呟いたレイルさんの表情は、屈強な
レイルさんが魔王側にいる理由って、もしかして……スズキさんがいるからなのかな?
「……痛みはないようにしてやる」
「えっ!?」
一瞬だった。レイルさんのモーションさえ見えなかった。
音も無くレイルさんの
ガギィンッ!
目の前に飛び散る火花っ!
「わあっ!?」
えっ?白月と黒月!?
「……ラーフィア様……っ!?」
ラーフィアちゃんの浮遊刀がレイルさんの攻撃を止めたっ!?
驚くと同時に、なんかほっとした顔をしてるように見えますよレイルさん!
「ヒカリちゃんを……誰かに殺されちゃうくらいならっ……私がやるよ、レイルっ」
ふわふわと浮く浮遊刀の片方『白月』の柄を握るラーフィアちゃん。
そのまま、すっと俺の首筋に鋭い刃をあてがう。
ほんの少しだけ腕を動かせば、俺の細い首なんて簡単に胴体から離れちゃうんだろう。
俺っ……絶体絶命っ!
ここでサヨナラかっ……!
何もかも……終わりかっ!
でも。
ラーフィアちゃんの手にかかって死ねるならっ……
俺は、ぎゅうっと目を閉じた。
この世界からすべての音が消えたみたいに静かだ。
首筋に当てられた刃が心地良いくらいにひんやりとしてる。
……
……?
……ん?
……何も起きないぞ?
「……ムリ、だよ……」
ラーフィアちゃんの消え入りそうなか細い声。
「ダメ……出来るワケないよう……っ」
ハッとして目を開けると。
涙。
ラーフィアちゃんが大粒の涙をこぼして。
俺を見つめてる。
俺のうるうるキラキラの目を。
目を反らさずに、正面から見つめてる。
ラーフィアちゃんのオーシャンブルーの瞳から。
いくつもいくつも。
ぽろぽろと、大粒の涙があふれてる。
「ラーフィアちゃん……!」
きゅうっ!と、俺の胸が締め付けられた。
俺の目を見るだけで真っ赤になって照れてたラーフィアちゃんが、目を反らすコト無く俺を見つめたまま涙を流してる。
ラーフィアちゃん……
そんなにも……
そんなにも俺のコトを想って……
「……私には……出来ません」
すっ、とラーフィアちゃんが力無く刀を下ろした。
「……やはりそうか。お前に魔王の荷は重すぎたのかのう。魔王検定でずば抜けた成績を収めたとは言え、現実的には不向きじゃったかのう」
やはり、って。
大魔王サマは何か思うトコロがあったのかな……
「ハッキリ言おう。お前は魔王失格じゃ。ラーフィア=リンデルよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます