大魔王サマのムチャ振り!《フィル×ペリはヒカリ達の元へ移動中》

「いつまでも丸出しの吊し上げは酷じゃろうて、まあ、降りんさい」


 大魔王サマがすいっと手を振ると、俺は吊し上げの輪っかから解放されましたよ。


 なんで解放されたのかわかんないけど、まあいーです!

 脱げかけのおパンツとめくれたスカートをささっと直すのだ!

 タマタマが風邪ひいちゃうからねっ。


 大魔王サマって敵なのかも知れないけど、とりあえずお礼を言っとかないと!


「あっ、ありがとうゴザイマスっ。大魔王サマっ」


「うむ、苦しゅうない。まあ、それはさておき。オマエ達、ちょっとここに整列しなされ。ヒカリちゃんもな」


「えっ?ボクもですかっ?」


 なんでかなっ?

 疑問に思いつつ、俺達四人は横並びに整列ですよ。

 逃げようにも逃げられそうに無いから、ここはおとなしく言うコト聞いておいた方が良さげです!

 なんかこう、センセーにお説教食らってる学生ってカンジがしなくもないですがっ。


「あー、さて、皆の衆」


 なんだか高まるよ緊張感!

 カシマシ三人娘が静かに縮こまっちゃってるからね!

 そんな中、大魔王サマから放たれた言葉は!


「ワシはナニしにココに来たんじゃ?」


 知らんがな。

 いきなり現れて有無も言わさずカシマシ三人娘の脳天グーで殴っておいてコレですか。

 パワハラバグりもいいとこですよ大魔王サマっ!


「……あの、大魔王様。私達に何かお達しがあったのではないのですか?」


 と、レイルさん。

 さすが落ち着いてますよ。クールでビューティーなカンジですよ!


「このちんちくりんなら、いつでも小さく折り畳んでみせますが」


 うお!矛先が俺にっ!

 ちょっとレイルさんっ?こんな場面でもやっぱりツンツンなんデスカっ!?

 

「お達し?ああ、そうそう。大事な話をしに来たんじゃったわい。

 あー、ラーフィアよ。オマエの掲げる魔王としてのスローガンを言ってみそ」


 みそ?

 神様店長もみそみそ言うのがクチグセですよ、さすがは双子っ。

 神様店長と言い大魔王サマと言い、みそ好きなんですかねっ?


「はい!私が掲げるスローガンは『全ての女性に安全と安心を!』です。大魔王様っ」


「ふむ。ラーフィアよ、それはどちらかと言えば魔王側と言うより勇者側に近い考え方じゃと思わんか?」


「えっ?」


「魔王側ならば『全ての人類に畏怖と恐怖を』くらいでないとな。じゃが、もうそんな時代では無くなってしもうたからのう」


 ふう。とため息を一つつく大魔王サマ。

 

「まあ、それはそれ。世のオトコ達に恐怖を植え付けるという意味では、オマエは良い功績を残していると言っても良いじゃろう」


「はいっ。ありがとうございます大魔王様っ!」


「しかし、じゃ。オマエの考えはまだまだ甘い」


「……えっ?」


 むむっ。一旦褒めておいてからのダメ出しですよ?

 持ち上げておいて落とすって、流れ的にはよろしくないような気がしないでもないですよっ?

 

「えー、では続きまして。ラーフィアよ。お前の掲げる野望とやらを言ってみそ」


 また出ましたよ、みそですよ。

 みそと聞いても、三人は平然としてますがっ。


「はいっ、私の野望はっ!

 女性に対する虐待を行うオトコ達のアレを、チュンしてチュンしてチュンしまくるコトです!

 それが!私にトラウマを植え付けたオトコ達への復讐でもあるのです!」


「それって、ワシもかな?」


「当然です!魔王に慈悲は必要ありません!」


 当然ですって、マジですか。

 大魔王サマのアレまでチュンするつもりなんですねっ!

 でもですねラーフィアちゃん。

 オトコ達とは言いますがっ。


 ラーフィアちゃんにトラウマ植え付けたのは、ラーフィアちゃんのオジサンですからねっ。

 他のオトコ達は、とばっちりもいいトコですよ!


「ふむ。復讐、か。では続けて問う。

 野望を叶えたその後は?

 復讐を終えたその後は?

 全ての男達のアレを小指サイズ化したその後のセカイは?」


「えっ……それは……」


「なーんも考えておらんのじゃろ?

 ラーフィアよ。お前に反抗する勢力が数を増やしつつあるコトは知っておるのか?」


「……私はっ!私の野望を達成する為ならどんな試練にも耐えてみせます!

 反抗勢力などに屈したりはしません!そのような者達など、一瞬で一網打尽にしてみせます!」


「ふむ。たとえ、それがお前が守らんとする女性達の団体であったとしてもか?」


「えっ!?」


「複数の女性団体から抗議文書が届いとるハズじゃが?」


「抗議文書っ!?そんなの私は……っ」


「……あのぅ、見せてないんですぅ。ラーフィア様が傷付いちゃうんじゃないかって思ってぇ……」


 さっきまでのはしゃぎっぷりがウソみたいに小さな声のフェイリアちゃん。


「え……見せてない、って……フェイリアは知ってたのっ?」


「はぃ……ごめんなさいですぅ……」


「レイルはっ?」


「はいっ、あのっ……申し訳ございませんっ」


 レイルさんも知ってたのか。

 うむむ、ラーフィアちゃんはめっちゃショック受けてますよ。

『ほうれんそう』を怠ってはいけませんよ、レイルさんとフェイリアちゃんっ。


 女性からの反感買ってるのは知ってたみたいだけど、抗議文書まで届いてるとは思ってなかったのかなっ?


「そんなっ!私は!私の野望は……全ての女性の為に、って……!」


「ラーフィアよ。オマエの一途で真っ直ぐな性格とちょっとヘンタイなトコロは大いに認める。じゃが、魔王的思考とは呼べんのう」


 ヘンタイって言われちゃったよラーフィアちゃん!大魔王サマが認めるくらいにヘンタイなんですねっ。

 イヤ違うっ。

 今はヘンタイのコトは置いといて!


「しかもヒカリちゃんに悪口言われて泣かされとったじゃろ?オコサマ同士の口喧嘩にも程があるぞい、まったく」


「あれはっ!そのっ!あのっ!」


 それ、俺も泣いちゃったんですけどね。

 ちっちゃいちっちゃい言われて喜ぶ17歳なんていませんからねっ!


「私はっ!たとえ女性団体から反対されても、私の野望を成し遂げてみせます!

 私が魔王であり続ける為に!」


「そうか。では、そこの勇者を殺してみそ」


「「「「……えっ!?」」」」


 思わずハモる俺達4人!


 とんでもないムチャ振りぶっこんできましたよ大魔王サマっ!

 ちょっ!マジかっ!


           ◇


 《 一方その頃。ヒカリ達の元へ向かうフィルフィーとペリメール 》


「ペリ子の弁当食べるの楽しみだなー。ラフィーも喜ぶぜ、きっとな!」


「それは私も同じですわっ」


 ヒカリ様の好きなカツサンド。

 ラフィーさんの好きなツナサンド。

 フィルフィーさんの好きなタマゴたっぷりタマゴサンド。

 シークレットのフルーツサンドっ。

 気合いを入れて早起きして作ったのですからっ、ですわっ♪

 

「ちなみにナニ作ったんだー?」


「それはナイショ、ですわっ」


「当ててやろうかー?サンドイッチだろー?耳付きのヤツなっ」


「えっ?どうして知ってるんですかっ、ですわっ」


「スパイス効かせたローストビーフサンドとタマゴサンド、ツナサンド、カツサンド。あと、フルーツサンド、だろ?」


「ええっ?ぜんぶ正解っ、ですわっ」


「へへっ!ペリ子のコトならなんでもわかっちゃうんだからなっ」


「えっ!?……なんでも、って……フィルフィーさんはわかってません!ですわっ」


「あーん?ナニがだよー?」


「なんでもありません!ですわっ」


 私はイジワルくプイッとそっぽを向いちゃうのですわっ。

 ……って。

 あら?あらあらら?


 城内への入り口ってどちら様でしょうっ、ですわっ?

 

「ドコ行くんだよ、こっちだろー?迷子になるなよなー」


「えっ?あっ?はわわっ!?手がっ!手をっ!?」


 またっ、またでしゅかっ?

 どどどどうして手を繋ぐのでしゅかっ?

 ふぃふぃふぃフィルフィーしゃんたら、今日はとっても積極的でドキドキしちゃいますですわあっ!

 

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