オペレーションOBEKKA!

 俺達はでっかい城内の広い廊下を進んで行きますよ。

 レイルさんに案内されて目指すは魔王となったラーフィアちゃんの部屋! 

 最上階に近い魔王の部屋ですよ!

 ドッキドキですよー!

 案内付きで魔王の部屋に行くなんて想定外だったけどね!


 俺の前を長ーい足で足早に歩くレイルさん!

 歩幅と歩く速度が違いすぎて、短足な俺は小走りに近い!もしくは競歩!


 だがしかし苦ではないのです、なぜならば!


 カツンコツンと響くサイハイブーツのヒールの音とともにぷるぷるしちゃってるレイルさんの大きめのお尻と、むちむち太ももの裏側がなんともエロス!


 仕方ないですよねっ。だって俺の視界に入るんですものー!

 目をつむって歩けないですもんねっ。

 目の前のお尻をガン見するのが男ののツトメってものですよね!

 ムハー!


 と、いきなり突然くるりと振り向くレイルさん!

 うお!お尻ガン見の視線に気づいちゃったのかっ!?


「コウダヒカリ。キサマからは何かイヤらしい視線を感じるのは気のせいか?」


 このレイルさんの汚物を見るような冷ややかな目っ!クロジョのサトナカ教官を思い出すであります!

 女のヒトって、オトコの視線に敏感説を立証してるでありますよー!


「えっ、あのっ!気のせいであります!」


 俺はビシッと敬礼ですよ!

 サトナカ教官に叩き込まれた上官に従順なザコ根性を!

 今こそ見せる時であります!


 レイルさんはじーっと俺を見据えたまま動きません!

 うおお、コワイっ。無言の圧力ってヤツですよー!


「……正直、ラーフィア様がキサマをお探しになられている理由がわからなかったが、実物を見てわかったような気がする。

 確かにキサマはカワイイ。ちんちくりんだがカワイイ。私みたいなデカい女には無い愛らしさを持っている」


 え。

 いきなりどうしたんですかねレイルさん。

 まさか、ちんちくりんな俺が敬礼する姿を見てカワイイって思ったのかなっ?


「だが!スズキ君の隣に立つのは私でありたいと願っている。キサマのようなちんちくりんには負けないからなっ!」


 びしいっ!と俺に指を突きつけるレイルさん!

 おおっ!これはっ!

 恋敵ライバルへの宣戦布告的なアレですよ!


 でも、あのですね、レイルさん。

 そもそも俺は男なんですよ。

 ナニがどうぶっ転んでも、俺とスズキさんがくっつくなんてあり得ませんよ。

 BLの世界に行く気は無いのですよ。

 お尻がヤバいコトになっちゃいますからねっ。


 ここは一つ、レイルさんを持ち上げてみようじゃないですかっ。

 おべっか作戦ですよ!作戦名は『オペレーションOBEKKA』です!

 センスのカケラも無いそのまんまのネーミングだけど、まあそんなカンジです!

 怒られちゃうかもしれないしちょっとコワイけどレッツトライっ!


「あのっ……背の高いスズキさんとちんちくりんのボクとでは、釣り合いが取れないと思うんですけど……」


「スズキ君は身長が高いか低いかなど気にしない。そんな器の小さいお方ではないからなっ」


「えっと、レイルさんは知ってると思うんですけど、ボク、男のなんですよっ?」


「スズキ君はキサマが男のかどうかなど気にしない。そんな器の小さいお方ではないからなっ」


 マジかっ!

 それには賛同出来ませんよレイルさんっ!


 でもまあ、なるほどそーですか。

 好きなヒトの悪口なんて言いたくないのがオトメゴコロってものですよねっ。たぶん!

 ではでは『オペレーションOBEKKAその2』を発動です!


「レイルさんは美人でスタイル良くって長身だから、スズキさんとお似合いだと思いますよっ?髪の色とかも同じだし」


 レイルさんを褒めつつ、スズキさんとの共通点をさらっと言ってみるのがポイントですよ!

 スズキさんもレイルさんも黒髪ですからねっ。気になるヒトと髪の色が同じって、親近感わくわくポイント高いハズ!

 

「きっ……」


 き?なんですかねっ?


「キサマ、いいヤツだなっ」


 チョロいっ!チョロいよレイルさんっ!

 でもキサマ呼ばわりは変わらないんですねっ?

 もうひと押し!ここはちょっと、二人の女神様も巻き込んでみようじゃないですかっ!『オペレーションOBEKKAその3』発動ですよ!


「フィルフィーとペリメール様もそう思いますよね?ねっ?スズキさんとレイルさんてお似合いデスヨネっ?ねっ?」


 どうですかこの誘導作戦!ねっ?て言うのがポイントですよ!


「ああん?あたしはそんなの専門外だからなっ。ペリ子に訊いてみろやっ。ペリ子は恋愛レンアイつかさどってやがるからなっ」


 え!?初耳っ!ペリメール様は恋愛の女神様っ?まさかの新情報ですよ!

 レイルさんもビックリしてますよ!


「そうなんですかっ?そちらの女神様は恋愛を司っていらっしゃるのですかっ?」


「えっ、ええ、まあ。ですわっ」


 おおう、グイグイ前のめりですよレイルさん。今は魔王ラーフィアちゃんの部下じゃなくて一人の恋する乙女ですよー。

 恋愛の女神ペリメール様が圧されちゃってますよ!


「あのっ女神様っ!私の想いをスズキ君に届けるにはどうすればよろしいのでしょうかっ?」


 想いを届ける、って。

 ペリメール様だってフィルフィーに『あの言葉』を言いたいハズなのに言えなくてもじもじしてるんですよっ?

 そのペリメール様にソレを訊きますかっ。

 

「誰かを純粋に想う心は尊いもの、ですわっ。想いは素直に言葉にして、相手の目を見てハッキリと言うとよろしいのではないでしょうか、ですわっ」


 ペリメール様?それってご自分のコトなのではないデスカネっ?


「大切なのは一歩を踏み出す勇気だと思います、ですわっ」


 ペリメール様?それってご自分のコトなのではないデスカネっ?


「一歩を踏み出す勇気、ですかっ。頑張ってみますっ」


 うむむ。ペリメール様に対しては、なんだかとっても素直ですよレイルさん。


 にしても、ペリメール様が恋愛を司る女神様だったとは。今の今まで知らなかった俺も俺だけどねっ。

 ん?じゃあ、フィルフィーは?

 とりあえず訊いてみますかね。


「フィルフィーって何の専門なの?」


「ああん?『再生』だよ。ヒカリが転生した時にその格好にしたのも再生スキルの内だからなっ。なんだモンクあんのかっ!?」


 なんでそこでキレるかなヤンキー女神っ。

 これまた初耳ですよ!フィルフィーが『再生をつかさどる』女神って、似合わないなー。

 どっちかって言うと破壊の方が似合ってるような気がするんですけど!

 

「フィルフィーさんは『再生』のスキルで人助けをしていらっしゃるのですわっ」


 え。

 人助け?フィルフィーが?

 カツアゲの間違いじゃないんですかねっ?


「余計なコト言わなくていーんだよ、ペリ子っ」


「えっ、でも、そろそろヒカリ様には教えてあげておいた方が良いのではっ?ですわっ」


 ん?なになにどしたのかなっ?

 俺に知られちゃマズいコトなんですかねっ?


「そちらのジャージの女神様は、チュンしたオトコどもの『アレ』を再生しておられるのですよね?」


 え!?

 思わぬ回答者はレイルさん!

 チュンしたアレを再生!?

 レイルさんも小指サイズ化のコトをチュンって言うんデスネっ。


 え!?フィルフィーがっ!?

 て言うか、再生の女神って、そんなコト出来るのかっ!


「それがあたしの仕事だからなっ。ベンジョ掃除も誰かがやんなきゃ汚いままだろうがっ。それと変わんねえよっ」


 ベンジョ掃除って。

 照れ隠しなのかもしれないけど、チュンしたアレを再生とベンジョ掃除を一緒にするんじゃないぞヤンキー女神っ!


 ん?仕事って言ったよね。

 てコトは、朝帰りが多いのはそんな理由があったからだったのかなっ?

 女神の仕事って、そういうのも含まれるのかー。


「チュンされたのを元に戻すってどうやって?

 まさかっ!触ったりしてるのっ?」


「触るか、あんなキモいブツっ!あたしが触りたいブツは初恋の銀髪君のだけだっ!

 あ、ヒカリのコヒカリ君触ったコトあるけどアレはノーカンなっ。ちっちゃかったからなっ」


 ナニを言ってるんじゃいヤンキー女神っ。

 俺はともかく、フィルフィーの言う『銀髪君』はペリメール様なんだからブツなんて無いんだぞっ。

 ちらっとペリメール様を見ると頬を赤らめてプイッとそっぽむいちゃいましたよ、あからさまにっ。


 でも、チュンされたアレを再生してる、ってコトは魔王側にとってフィルフィーは目障りなのではっ?

 とりあえず訊きますよ!


「あのっ。フィルフィーって、魔王側にとってはジャマな存在だったりしないんですかっ?」


「……確かにそうだが、魔王側は女神様のお仕事に口出しはしない。ラーフィア様の方針でもあるからな」


 ラーフィアちゃんが?

 ラーフィアちゃんの野望をフィルフィーがジャマしてるようなものなのに?

 そっかー……


 アレの小指サイズ化は恐怖でしかないけど、女性の安全と安心の為に、って思ってやってるコト自体はどす黒くもなんともないからなー。

 魔王の野望としてはどうかと思うけどねっ。


「私にとっては、スズキ君の周りをチョロチョロするキサマの方が目障りでジャマな存在なんだがなっっ」


 うお!鎮火したと思いきや再燃焼ですよレイルさん!

 ここは『オペレーションOBEKKAその4』を発動です!


「美人でスタイル抜群のレイルさんなら大丈夫ですよ!想いはきっと伝わります!自信持ってクダサイっ!応援してますからっ!」


 応援してます、って言うのがポイントなのです!自分は敵じゃないってコトをアピっておかなければっ。

 勇者になった時点で俺は敵なんですけどねっ!


「きっ……キサマっ、いいヤツだなっ」


 チョロい!チョロいよレイルさん!

 でも、やっぱりキサマ呼ばわりなんですねっ。


 それにしても、フィルフィーは『再生』を司る女神様だったなんてめちゃめちゃ意外ですよ!


 でも、それってさ。

 フィルフィーがやってるコトって、善行になってるんじゃないのかなっ?

 あっ。

 女神ポイント!そうですよ女神ポイント!

 ここ最近バタバタしててすっかり忘れてたけどっ!


「ねえフィルフィーっ。朝帰りするくらいに働き詰めだと、女神ポイントもいっぱい貯まるんじゃないのっ?今、何ポイントくらい持ってるのっ?」


「ああん!?知らねーわそんなもん。女神事務所から明細送って来ねーからわからんっ。なんだよなんかモンクあんのかっ!?」


 なんでそこでキレるかなヤンキー女神っ。短気すぎだろっ!

 所持ポイント教えてくれるペンダントも持つ気ないみたいだしっ。

 1万ポイントで昇格のハズなのに昇格してないってコトは、まだまだ足りてないってコトなのかなっ?

 そもそも昇格する気はあるのかフィルフィーはっ!


 再生を司る女神様はっ、仕事が忙しいコトを理由にして、俺をリセットする気はさらさら無いようですよー!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る