スズキさんとレイルさん!

 スズキさんの名前を呼びながら駆け寄って来たのはっ!


 レイルさん!

 レイル=フォレスターさんじゃないですかあっ!

 モニターからにょろりと出てくるスキルを持ってるレイルさんですよ!

 ホットパンツからのむちむち太ももがえっちっちなレイルさんですよー!

 ニコニコと笑顔だから、なんか最初の印象とはずいぶん違うんですけどっ!


 だがしかしこれはっ!

 いきなり大ピンチなのではっ!?


「おー、おはようさんだべ、フォレタスちゃん」


「フォレタスじゃなくてフォレスターですようっ。いつも言ってるじゃないですかあ♡」


 ん?あれ?このカンジはもしかして。

 カワイ子ぶってるな?

 レイルさんは俺達の事なんて眼中に無いみたいですよ。

 ここはっ!そろーりとドロンするチャンスなのではっ?


 ドロンと言っても空を飛ぶアレじゃないですよっ!ひっそりこっそりニンジャのように姿をくらますアレのコトなのです!

 そーっと背中を向ける俺っ!


 ところがですよ!


「こつらはおらの嫁、ヒカリっつうんだー。めんこいべさー?」


 なぬっ!?紹介されちゃったっ!

 ナニしてくれてるんじゃいスズキさんっ!


「……は?嫁?って、このって……」


 うお! レイルさんの眼がっ!

 ひんやりと冷え冷えなめた目ですよ!あからさまに俺を毛嫌いしてますよー!

 なんでっ?


「キサマ……」


 なんと、初対面でいきなり『キサマ』呼ばわり!

 しかも眼がマジなもんだから威圧感がハンパないっ!


「キサマ、コウダヒカリだな?何故ここにいる?何をしに来た?」


 顔と名前がバレているっ!?

 ラーフィアちゃんの部下なんだから、俺の顔知ってるのは当然と言えば当然かっ!


「ああああにょっ!ボクっ、ラーフィアちゃんに呼ばれて来たんですけどっ!」


 俺はラーフィアちゃんから貰った手紙とチケットを見せたんだけど、レイルさんはそれを手に取らずにチラッと見ただけでしたよっ。


「コウダヒカリ。私はキサマには個人的な感情などただのひとかけらも無い。これっぽっちもない。存在すら無に等しい。宙を漂うチリ以下だ」


 チリ以下ですかっ!

 なんか初対面でいきなりボロクソ言われてるんですけどっ!なんでそんなに敵対心むき出しなんですかねっ?


「今すぐにでもくびり殺したい所だがやめておこう。ラーフィア様の想い人だからな。そうでなければ、キサマはくびり殺されていたと知るがいい」


 なんか物騒だよレイルさん!

 なんでかなっ?そんなに機嫌損ねちゃうようなコトしたっけかっ?


「スズキ君に嫁と呼ばれる気分はどうだ?最高か?最高だろう!

 だが!スズキ君に嫁と呼ばれる理由がせん!まったくもってせん!」


 はー、なるほどっ!

 どうやらレイルさんはスズキさんの事が好きみたいですよ!

 俺を嫁呼ばわりするもんだからヤキモチ妬いちゃったんだなっ?

 スズキさんはちょっとおバカさんだけどイケメンですからねっ。

 でもこの前、バイト先のお客さんの女の子お持ち帰りしてなかったっけかっ?

 もしかして、二刀流なんデスカっ!?


「どしたんだべさフォレタスちゃんよー?ヒカリってば、めんこいべさー?おらとヒカリは生き死にをかけて戦った仲だからよーお、言わばアレだべさ、戦友だなっす!」


 不機嫌なレイルさんにスズキさんが声をかけてくれましたよ。

 戦友、ってまあ、コブシを交えた仲ではあるけども。あの時の俺はラジカルラミィだったけどねっ。


「あっ!アレだべ!セフレってヤツだべさ!センフレンドだから間違いなかんべっ!

 なあ、ヒカリっ!おらの足腰立たなくなるほどヤりあったもんなー!あん時のヒカリの攻めはスゴかったべさー!またヤりあいたいっぺなー!」


「えっ!?」


 セフレだとっ!?

 ナニをほざいてくれちゃってるんですかねスズキさんっ!

 まあ、スズキさんの膝はガクガクしちゃってましたけど!

 セフレって言い方が間違ってるぞっ!


「おほー♪ やるなあヒカリぃ!いつの間にそんな関係になったんだー?スミに置けねえなあ、こんチキショーめっ」


 こらっ!話がややこしくなるからあおるんじゃないっヤンキー女神っ!


「ヒカっ!ヒカリ様っ!?せせせせせせせセフ……なんてっ!嫁入り前の男のがそんなふしだらなコトではいけませぬっ!ですわっ!」


 ちょっ!?ペリメール様までっ!?

 男のって嫁入りするものなのかっ!?

 イヤそこじゃなくっ!

 二人ともナニ言ってるんですかねっ!

 俺はっ!

 童貞だし、お尻だっておかしなコトには使ったりしないんだからねっ!

 つまりは未使用新品ってコトですよー!

 なんか言い方がおかしいような気がしないでもないけど、間違ってはないですよねっ!


 スズキさんのセフレ発言に、レイルさんもビックリしちゃってますよ!


「セフ……っ!?そんなっ!?こんなちんちくりんとスズキ君がっ!?」


 ちんちくりんて、レイルさんっ。まあちんちくりんですけど!


「ヒカリってば、ちっこいけどスゴいんだべさー。おらの事ガンガン攻めまくってなあ!そこの女神様も見てたでなあ。女神様が証人なんだからウソなんかじゃないべさー?」


「ガンガン責めまく……っ!?見てたって、まさかの公開プレイっ!?そうなんですかっ?女神様っ!?」


「あー?まあ、言ってるコトは間違ってはねえなあ。なあ、ペリ子?アイツの膝とかガクガク大爆笑してたよな?」


「えっ!?まあ、そのっ。当たらずとも遠からずと言いますか、ですわっ」


「ほらなー!俺達おらたつ戦友セフレだべなー!なあヒカリっ!」


 俺とスズキさんがセフレと聞いたレイルさんの顔色がっ!

 激怒の赤から大激怒の赤紫色に変化しちゃってます!


 ギロリと俺を睨み付けるレイルさんの眼がっ!眼がああっ!

 鷹とか鷲とか猛禽類が小動物を狙う目ですよ!キレイでおっきな目をかっぴらいて獲物を狙うソレですよー!

 

「コウダヒカリ……っ!ラーフィア様の想い人じゃなければ、文字通りの八つ裂きにしてやるのに……っ」


 マジですか。

 文字通りの八つ裂きって、人体バラバラってコトですかっ!


「まあまあフォレタスちゃんよー。仲良きコトは美しいかもって言うべさー?ヒカリってば、めんこいべさー?仲良くしなっせえなあ」


「すっ、スズキ君っ!私はフォレタスじゃなくてフォレスターですっ!畑の青物と一緒にしないでっ」


「え?ああそう。んだばおらの嫁ヒカリよう。城ん中を案内してやるで一緒にイクべ?セフレなんだからイク時は一緒だべ?」


 おいスズキさんっ!

 言い方っ!言い方がエロオヤジっ!

 エロオヤジ化してますよスズキさんっ!

 俺を睨みつけるレイルさんの肩が怒りで震えちゃってますよー!

 誤解もいいとこですようおおおおっ!


「まっ!待ってスズキ君っ!スズキ君にはお仕事あるでしょっ?私がこのちんちくりんをラーフィア様の所に引きずっていくからっ」


 引きずるのっ!?

 なんか俺への対応がヒドイよレイルさん!


「え?ああそう?ほんだばフォレタスちゃんにバトンタッチだべなっ。おらはヒカリにおっぱいタッチして、ジエンドオブソウロウぶっこみたいだけんどもなっ!なんつってよー!ぬはっ!ぬはっ!ぬははははははっ!」


 ジエンドオブソウロウをぶっこむだとっ!?

 それ以上喋るんじゃないぞエロオヤジスズキさんっ!

 レイルさんが尋常じゃない眼光で俺を睨み付けてるんですけどっ!

 とばっちりもいいとこですようごおおおおっ!

 あと、ぬはぬはウルサイ!


「まあぶっこもうにも、おらのジエンドオブソウロウは今はチュンされちまって寂しいんだけんどよー、残念だなっすー!」


 えっ?チュンっ?ジエンドオブソウロウがっ?

 まさかっ!これは訊いておかなければっ!


「チュン、ってどういうコトですかっ?」


「小指サイズにされちまったんだべよー!チュンチュン!っとさー!」


 マジ……かっ!

 なんでそんなに軽く言えるんですかねっ!?


 やっぱり魔王側の男もチュンされてるのかっ!

 そう言えば、ラーフィアちゃんは『魔王に慈悲は必要ない』って言ってたっけかっ!


「まあ、おらの場合またでっかくなっからなー。ほら、おらってば竜だしなっ」


 なぬっ!?

 ジエンドオブソウロウって、そんな再生能力あるのかっ!

 なんて便利な、イヤ違うっ!

 それよりも、魔王側なのにチュンされているという事実が恐怖でしかない!


おらのジエンドオブソウロウがまたでっかくなったら、ヒカリにぶっこむのが楽しみだなっすー!」


 ぶっこませるかっ!

 俺のお尻がトンデモナイコトになるだろっ!


「『ズイブンと楽しそうだな……話は済んだかコウダヒカリ』」


「ほえあっ!?」


 地の底から響く地獄の使者のような重低音ボイス!声の主はレイルさん!

 俺とスズキさんが楽しそうに話してるのが、相当お気に召さなかったみたいですよ!

 怒りのオーラがズゴゴゴゴっと立ち上っちゃってますよー!

 楽しそうに話してるつもりはこれっぽっちも無いんですけどねっ!

 

「話が済んだのならスズキ君から離れろちんちくりんがっ。今すぐ手足をもいで口の中に突っ込むぞっ」


 マジですかレイルさんっ!

 いくらなんでも、口の中に手足なんて入りませんよー!


「ほんだばフォレタスちゃん、おらの嫁ヒカリと女神様の案内よろすくなー!おら戦友セフレヒカリよーう、またなっ!ぬはっ!ぬはっ!ぬははははははっ!」


 おいスズキさんっ!俺は嫁でもセフレでもないぞっ!

 レイルさんの燃え盛る怒りの炎にじゃぶじゃぶと油を注いではイケマセンヨっ!

 あと、ぬはぬはウルサイ!


「すっ!スズキ君っ!またねっ!」


 仕事に戻るスズキさんの姿が見えなくなるまで、その背中をじーっと見てましたよレイルさん。

 その目は恋する乙女のソレですよ。


 レイルさんが、ふっと俺の方に向き直り。


「……チッ。行くぞちんちくりん。はぐれるなよちんちくりん。迷子になったら三ツ頭の凶獣に探させるからなっ」


 マジですか。

 とりつく島もないくらいツンツンですよ。

 三ツ頭の凶獣なんてヤバい名前の獣は、迷子探しに適さないんじゃ無いデスカネっ?

 見つかり次第、アタマとかかじられちゃうんじゃないデスカネっ?

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