これ、クエストなんですか?

「勇者登録は勇者事務所行かないとできねえから、それはまあ後回しでイイだろ。今日は特別クエストぶちかましに来たんだからなっ!

 腕がなるぜえ!」


 フィルフィーは腕をぐるぐるまわしてやる気満々ですよ!

 ぶちかますって言うけど、なんでフィルフィーが張り切ってるんだ?

 クエストこなすのは俺じゃないのかな?


「あのー。クエストって、何をするんですか?」


「バスケだよ?」


 え。

 ナニ言ってるんですかねキャノラさん。

 確かにキャノラさんはバスケのユニフォーム着てますがっ。


「あの……なんでバスケなんですか?」


「えー?だって楽しいじゃん、バスケ。ダメ?」


 イヤ、ダメじゃないですがっ!

 バスケって、コレ、クエストなんですかねっ!?


「あ、もしかしてダンジョン行くとか、廃城行くとか、洞窟行くとか考えてたんでしょー?

 まあ、そこに行ってもイイけどさー。そんなのありきたりすぎてつまんないじゃーん?」


 じゃーん?って軽いノリで言いますがっ!

 異世界ファンタジー感がっ!俺の中の異世界ファンタジーがガラガラと音を立てて崩れていきますよおおっ!


女神わたし自らがレクチャーしてあげるんだから効果は絶大だよー?わたしも久しぶりに二人と大好きなバスケできるから楽しみなの!

 一石二鳥ってヤツだよーん♪」


 二人と、って。


「えっ?フィルフィーとペリメール様もバスケするんですかっ?」


「ったりめーじゃんヒカリぃ。試合って一人じゃできねえだろーが。今日は2on2でぶっ倒れるまでやるからなっ!

 ペリ子もヒカリも泣くなよー?」


 ニターリと悪魔の微笑みですよヤンキー女神っ!


「むっ!望むトコロですわっ!

 頑張りましょうねっ、ヒカリ様っ!」


 フィルフィーの挑発的な態度にペリメール様もやる気スイッチが入ったみたいですよ。


 えっと。

 まあ。

 ランクアップの為ならやりますけども!

 俺の中の異世界ファンタジー感は遥か彼方に置き去りです。

 異世界ファンタジーって……なんだっけ?



「しゃーねえなあ。あたしも特別にレクチャーしてやんよ、ヒカリぃ」


 フィルフィーが?一体ナニを教えてくれるって言うんですかねっ?

 

「お着替えガチャスキルのコトだ。ヒカリはある程度の魔力は持ってるんだから、強くイメージすればお着替えガチャで出したい衣装を出せるハズなんだぞ?」


 えっ?そうなのっ?完全ランダムじゃないってコトかっ!

 言うのが遅いぞヤンキー女神っ!


「バスケの試合とかユニフォームをイメージしながらガチャってみろや。

 グミスライムツブして1年前よりは少しは強くなってるんだから、今のオマエの魔力なら出来るかもしれねーぞっ」


 オマエの魔力、って。まあステータス表には『魔力 すごい』って書いてありましたけどね!

 これって何なのかな?って訊いたコトあるんだけど、フィルフィーは教えてくれなかったんだよなー。

 魔法剣術師マジックソーディアンなんてスキル持ってるのも教えてくれなかったし。

 丸投げ女神もイイとこですよ!


 イメージかあ。

 うーん。バスケ?バスケと言えば!やっぱりあのアニメ、あのマンガしかない!

 俺の前世では、この作品を知らないヤツなんていない!

 たぶん!

 登場人物の中でめちゃめちゃ上手いのは主人公じゃ無いヤツです!

 バスケなのに必殺技っぽい技名がバンバン出てくるヤツですよ!


 うむむ、イメージ、イメージですよー!


「それじゃあ、お着替えガチャ1回目っ!行きますようっ!うにゃあっ!」


 勢い良く右手を振り挙げるっ!


 っぽん!


 子供用シャンパンの栓を抜いたみたいな音!

 1回目のガチャで出た衣装、これはっ!


 チアガール!

 可愛いポンポン持ったチアガールです!

 バスケの試合をイメージしてみたら、アタマの片隅にチアガールがいたけれども!これでは応援は出来てもバスケは出来ない!


「それでバスケやんのかヒカリぃ?

 プチッとツブしてやるぞー?」


 むむっ!なんかあおってきますよヤンキー女神っ!ここは気を取り直して、ひっひっふうう。


 気持ちを落ち着かせて、2回目っ!

 イメージ!イメージですよおー!


「お着替えガチャ2回目っ!行きまあすっ!うにゃああっ!」

 

 勢い良く右手を振り挙げるっ!


 っぽん!


 本日二度目の子供用シャンパンの栓を抜いたみたいな音!そしてっ!

 おおっ!?これはっ!

 出ました!


 胸には『KUROJO』のアルファベット!

 少しだけダブついたユニフォームには『23』の番号ナンバー

 おおっ!スゴいっ!出ちゃった出ましたよバスケのユニフォームですよー!

 なかなかやるじゃないの、俺っ!


 KUROJOの文字が、なんていうかこう、ちょっと切ないような気がしないでもないですが!

 バスケのユニフォームを出せたコトは快挙と言っても良いのでは!


 アタマの中でイメージしたユニフォームとはちょっと違うけど、胸の『KUROJO』の文字が物語ってますよー!


 これはっ!


 クロジョのバスケ。


 なんつって。


 ね!


「へー、キミ、お着替えガチャスキルでバスケのユニフォーム出せるんだねー。ちょっとビックリしちゃったよ」


 おっ、キャノラさんが褒めてくれましたよ。

 まあ、出した本人が一番ビックリしてるんですけどねっ。

 久々にお着替えガチャやったけど、このユニフォームは初めて出たな。いつの間にか出せる種類が増えてるのかなっ?


 フィルフィーとペリメール様もバスケのユニフォームに着替えましたよ。

 フィルフィーの番号ナンバーは『666』ってオイ!女神なのにそれでいいのかっ?

 ペリメール様の番号ナンバーは『1』。ペリメール様らしくて良きですよ!


 キャノラさんがパンパンっと手を叩くと、ベンチとかアイスボックスとかが現れたっ!



「よっしゃ、バスケの準備はオッケーだなヒカリぃ。ブチのめしてやるぜっ!」


 なんでバスケでブチのめされなきゃいけないんじゃいヤンキー女神っ。

 テンション上がるのは別にイイとして、ちゃんと試合になるのか不安ですよ!


「じゃあ、軽くアップしてから試合やろっか。使うボールはコレだから慣れといてねっ♪」


 キャノラさんが何も無い空間からバスケットボールを出現させて、ポイッと俺にパスしたそれが、なんとっ!


 おもっ!バスケットボールなのにめっちゃ重いっ!通常の3倍くらいはありますよっ!

 はっ!これはっ!

 アニメとかマンガとかでよく見かける、重量を増やして筋力アップ的なアレなんですかねっ!


「あ、間違えた。こっちだった」


 違うんかいっ。

 まあね!いきなりそんな重いボールでプレイなんて無理ゲーすぎるよねっ。

 わざとなのかオチャメさんなのか、なーんかクセのある女神様ですよキャノラさん!


 バスケットボールなんて触ったのいつ以来かな?今の俺は女の子の手だから、ボールがめちゃめちゃでっかく感じるなー。



「あたしはバスケの有段者だからなっ。ハンデ付けてやるよ。左手だけでやってやんよ!」


 なんつってドヤ顔ですよヤンキー女神!

 バスケに有段者とかって。初めて聞いたけど階級なんてあるのか?


「フィルフィーさんたら、またデタラメな事をっ。真に受けてはいけませんよ、ですわっ。ヒカリ様っ」


「え、デタラメ!?女神って嘘つけないんじゃないんですか?」


「嘘とデタラメとは微妙に意味が異なるのですわっ、ヒカリ様っ。その線引きというのも曖昧なものですが、ですわっ」


 とまあ、雑談しながらストレッチで身体をほぐし。

 いよいよ試合開始ですよ!

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