三人目の女神様!

 翌朝です。


 ゴリュウさんが作ってくれた『短期集中ランクアップ巻き』という名の太巻き、もといスクロール、イヤやっぱ太巻きを朝ごはんとして食べると、なんとっ!


 足元に紫色に輝く魔法陣が出現!

 同じものを食べたフィルフィーとペリメール様の足元にも魔法陣が!


 しゅわわわわあっっという音と共に三人揃って転移した!?


 一体どこに行くのかなっ!?


 ダンジョンかなっ?廃城かなっ?

 なんかどっかの洞窟とかかなっ?ゾンビ的なアレとか、ゴブリン的なアレとか、スケルトン的なアレとか出るのかなっ?


 ちょっとワクワクしながら出た場所、ここはっ!

 体育館!

 ここは……体育館ですよ。どこにでもあるようなフツーの体育館。

 なんじゃいコレ。どうなってるんだ?クエストってナニするんだろ?


「おー、ここかあ。懐かしいなー、なあぺリ子っ」


「えっ?ええ、そうですわね、ですわっ」


 ん?なんだかペリメール様の挙動が不審ですよ?


「どーしたよぺリ子っ。転移酔いでもしたのかっ?」

 

「ここに出たというコトは、その、あのお方がいらっしゃるのではっ?ですわっ」


 ん?あのお方?知り合いでもいるのかな?

 

「あーっ!フィルフィーちゃんとペリちゃんだー♪おっひさー♪」


 体育館中に響くでっかい声に振り向くと!


 あお色の長い髪、丸っこい印象の小顔に紺碧の瞳、身長は俺よりちょっと大きいくらいのカワイイ系の女子!

 胸にでっかく『10』の番号ナンバーのユニフォーム!バスケのユニフォームです。

 バスケ好きなのかな?


「よう!久しぶりだなキャノラっ!」


「会いたかったようー♡フィルフィーちゃあんっ!」


 キャノラって娘はてててっと駆け寄ってきて、フィルフィーにがばっと抱き付いた!

 フィルフィーのオパイに顔を埋めて再会を喜んでますよ!

 んっ?これって、わざとかな?


「女神になってから全然会えなかったから寂しかったよう、フィルフィーちゃあん。くすん」


 くすんはどうやらウソ泣きです。そんなの俺でもわかりますよ。

 初対面でアレだけど、ちょっとあざといかなって思っちゃいましたよ?


「ねえ、フィルフィーちゃんっ。このカワイイ娘はどちら様かなっ?紹介してようっ」


 チラッと俺に目配せするキャノラさん。

 フィルフィーにぎゅうっと腕を絡めて上目遣い。なんか甘え上手だな。

 俺の目にはちょっとあざとく見えちゃうのは、前世でのギャルゲーのやり過ぎですかねっ?


「ああ、紹介するよキャノラっ。コイツはヒカリ。コウダヒカリってんだ。ヒカリ、コイツはキャノラ。キャノラ=オリーブ。あたしらと同期の女神で幼馴染みなんだぜっ!」


 キャノラ=オリーブ、ってサラダオイルみたいな名前だな。まあ覚えやすいですけどねっ。

 この娘も女神なのかー。なんか女神っぽくない服装ユニフォームだけど。

 あ、フィルフィーだってジャージだった。


「よろしくねヒカリちゃんっ。ペリちゃんも久し振りっ!ペリちゃん、ずいぶん髪伸ばしたんだねー。足首まであるじゃない。絡まったりしないのお?」


「お久しぶりですわっ、キャノラさんっ。おっしゃるとおり、髪が長いと毎日のケアが大変なのですわっ」


「だったら切ればイイじゃない?あ。もしかしてフィルフィーちゃんが子供の頃に言ったコト真に受けてたりするう?」


 おっと、ちょっと意味ありげな発言ですよ?


「子供の頃に?ってなんだ?あたし、なんか言ったっけか?」


「えっ?イエ、にゃにゃっ、にゃんでもごじゃりませぬですわっ」


 んっ?ペリメール様がうろたえてますよ。

 フィルフィーはすっとぼけてるけど、ホントに忘れてるっぽいな。

 んー。この三人の間にはフクザツなナニかがあると見た!みたいな!

 そーいうコトにはうとい俺でもわかるような気がしないでもないですよ!

 でも、ここは黙って見守るのが男の娘のツトメってものですよね!



「今日はコイツをちょいと鍛えてもらおうと思ってな!ゴリュウのランクアップ巻きでココに来たんだよっ」


 珍しくフィルフィーが事情を説明すると、キャノラさんはちょっと不思議そうな顔をして。


「ふーん?ねえキミ、転生者だよねえ?なんでフィルフィーちゃんと一緒にいるの?」


「えっ?えっと、フィルフィーは、その。神様に言われてボクの面倒を見るコトになってるんです」


 普段の面倒見てくれてるのは、ほとんどペリメール様なんですけどねっ!て言うか、ペリメール様はフィルフィーの面倒まで見ちゃってますからね!


「へー。じゃあ、ペリちゃんは?なんでフィルフィーちゃんと一緒にいるの?」


「わっ、私はフィルフィーさんの監視役を神様に命じられたのですわっ。望んで一緒にいるワケではありません!ですわっ」


「ふーん、へーえ、そうなんだー。望んで無い、ってホントかなあー?」


 キャノラさんのペリメール様に対する眼差しが、なんかこう。ヒヤヤカでギワクの色が見え隠れしてますよ?


「女神はウソついちゃいけないんだよう?」


「えっ?あっ。イヤそんなっおほほほほっ!ですわっ」


 ごまかすのヘタすぎますよペリメール様っ。

 目が泳ぎまくってます!


 キャノラさんはフィルフィーと腕を組んだままで、フィルフィーは別にイヤがる素振りも見せないから、まあイヤじゃ無いのかな?

 ペリメール様は二人の腕組みが気になるのかチラチラと目配せしてますよー。

 わかりやすいなー。

 

「キャノラはここの管理者やっててな。で、あたしらみたいに特別クエストブチかましに来るヤツらの相手をしてんだよ」


 へー。俺の他にもいるんだな。

 ん?

 女神は中立の立場のハズ。ってコトは。


「もしかして、魔王側のヒト達もここに来たりするんですか?」


「うん、たまに来るよー。この前ここに来た娘は飲み込みが早くてねー。あっという間にわたしより強くなっちゃった。魔王側のレイル=フォレスターって!スゴかったよー?」


 れいる=ふぉれすたー?

 レイル=フォレスター、って!

 マジかっ!

 昨日の夜、SSランクの冒険者を瞬時に5人も倒したあの娘ですよ!

 ホットパンツからのむちむちフトモモがえっちっちなあの娘ですよー!


 あっという間に強く、ってコトは!

 俺も強くなれちゃうかもしれないってコトなのではっ?


「まあ、あの娘は元の素質がスゴかったから、あんまり教えるコトもなかったんだけどね」


 デスヨネー。元の素質がポンコツな俺があんなに強くなれるとは思えないっ!


「フィルフィーちゃんの頼みとあれば!今日はヒカリちゃんをみっちりねっちり鍛えてあげるから覚悟しておいてねっ」


 みっちりねっちり!

 一体ナニされるんですかねっ。

 キャノラさんが鍛えてくれるってコトは修行に近いようなカンジなのかな?


 体育館内には俺達以外に誰もいない。貸し切り状態ですよ。


「あのー。勇者側の人達って、ボク以外にも来てたりするんですか?」


「んっ?勇者側?キミが?」


 キャノラさんはきょとんとしてますよ。

 え。

 あれ?


「キミって勇者側なの?」


「えっ?ボクって、一応勇者側じゃないのっ?」


「勇者側ってヒカリぃ、クロジョの勇者育成コースプログラム修了してないだろ?勇者登録もしてないし。今のオマエはただの一般人だぞ?」


 はあっ!そうだった!俺はっ!

 勇者じゃ、ない!

 ただのザコレベルの男のだったっ!


 俺はクロジョの勇者育成コースのプログラムをこなして無いし、卒業もしてない!

 追放されたんだったっ!

 今さらだけど俺はっ!


 勇者じゃ、ない!


「キミ、勇者登録してないんだったら登録すればイイじゃない」


「えっ?登録って、そんな簡単に出来るんですか?」


「簡単カンタン♪3分もかかんないよ?15歳以上だったら全然問題無いんだから」


 軽ーいカンジで言うキャノラさん。

 なんてお手軽なっ。お料理番組並みですよっ。


「でもね。勇者登録するってコトは魔王と戦う意志がある、ってコトだよねえ?」


 魔王と戦う意志、それすなわち!

 ラーフィアちゃんと戦うってコトですよ!

 ザコレベルのこの俺がっ!

 ラーフィアちゃんと戦う!?


 勇者が魔王と戦う、って言われてみれば当然だけど考えてもみなかったですよ!


 漆黒の翼とか、武器召喚とか、他にもいろんなスキルを持ってるラーフィアちゃんとっ!

 ポンコツザコレベルの男のが戦う!?


 無理ゲーすぎやしませんかねっ!?


「キミ、強くなる為にココに来たんでしょ?どの程度強くなれるかはキミの頑張り次第だけど、どかんと大化け出来ちゃうかもしれないよ?」


 どかんと大化け!

 もしそんなコトが出来るなら!

 魔王となったラーフィアちゃんと戦える力を身につけるコトが出来たなら!


 それってつまり!


 男ののこの俺がっ!

 この世界の男達をっ!

 ひいては『全世界を救う』ってコトになっちゃったりするのかしらっ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る