クエストマスター!ゴリュウさん!

「着いたぞここだっ!まずは腹いっぱい食ってからだな!」


 フィルフィーに連れてこられたのは、なんとっ!

 お寿司屋さん!

 異世界ファンタジー感をブチ壊すお寿司屋さんです!

 のれんには漢字で『五竜鮨』って。

 まあ、もう1年以上この異世界に住んでるから驚きも少ないですけどね!

 廻るお寿司じゃなくてカウンターに座るヤツですよ。こういうのってお高いんじゃないんですかねっ?

 ペリメール様のコジャレたカジュアルな服装はイイとして、フィルフィーと俺はジャージなんだけどオッケーなのか?

 


 フィルフィーを先頭にガラガラっと横開きの扉を開けて中に入ると。


「ヘイらっしぇい!あれっ!?フィルフィーの姉御アネゴじゃねーっすか!ペリメール様もっ!お久しぶりぶりブリ一丁!なんてね!」


 なんですかこのテンション高い板前さんは。

 フィルフィーのコト姉御アネゴって言ったよね。

 てことは、フィルフィーの知り合い……もしかして舎弟なのかな?


「おうっ。今日もイイチョーシみてえだな、ゴの字っ!あんまチョーシこいてっとはっ倒すぞチキショーめっ!」


「さすが、姉御アネゴは元気いっぱいでヤスねっ!」


「フィルフィーさんっ!ゴリュウ様をヘンなあだ名で呼ぶのはおよしなさいなっ、ですわっ」


 二人の呼び方からすると、フィルフィーとゴリュウさんはやっぱり知り合いみたいだな。

 にしても、ゴリュウさん。

 デカい!縦にも横にもデカい!身長は200センチオーバー、体重も軽く100キロは超えてそう。アタマのねじりハチマキがなんかカワイイですよ!


「ゴの字はこう見えて『クエストマスター』なんだよっ。ザコレベルからハイレベルまでいろんなクエストをニギれるんだぜっ。スゲーだろっ!」


 なんつってドヤ顔ですよヤンキー女神。

 スゴいのはゴリュウさんであってフィルフィーじゃないハズだぞっ。

 でもクエストニギれるってどういうコトかな?


「まあまずは食ってからだなっ。腹減ったし。その後でクエストをな、一つニギってくんねーかなっ」


「あいよっ!レベルはどんなもんでヤンスかっ?」


「レベルは無し。ランクアップがメインだから腹にもたれないヤツで。それでいーよな、ヒカリぃ」


「えっ?……うん」


 よくわかんないから生返事しちゃったけど、サビ抜きで!みたいなノリですよ。

 ギルドだけじゃなくて、こんなトコロでもクエスト発行してるんだなー。

 異世界ファンタジー感ブチ壊しのお寿司屋さんですけどね!


 で。


 遅い夕食はゴリュウさんのでっかい手で握られるお寿司を頂きましたよ。でっかい手だから人差し指一本でニギれちゃう。

 きゅうきゅうに圧し固められてるのかと思いきや!

 口の中でほぐれるシャリと、舌の上でとろける新鮮なネタのハーモニー!久々の味に感動です!

 フィルフィーとペリメール様も美味しそうに食べてますよっ。

 異世界でこんなに旨いお寿司を頂けるなんてね!今だけはフィルフィーに感謝かな?

 


「腕はなまってねえな、ゴの字っ!うまいぞっ!」


「フィルフィーの姉御アネゴのお褒めのコトバは何よりでヤスよっ!」


 なんて会話を交えつつ一通り食べ終えて!

 さてさていよいよ!

 クエストニギりです!一体どんなのが出てくるんですかねっ。楽しみですよ!


「そんじゃあクエストいっちょニギらせていただきヤス!はっ!」

 

 気合いを入れるゴリュウさん!

 両手を高々と掲げてからのっ!


「うりゃさあっ!」


 おおっ!手がピカっと光ったっ!

 しゅぱぱぱあっと鮮やかな手付きで虚空に文字を描いてますよ!

 キラキラ光る古代文字っぽいヤツ!

 これはっ!

 呪文的なアレですよ!詠唱は無しで文字を空中で操ってるカンジですよ!

 カッコいいっ!


「はっ!」


 ぱあん!とでっかい手で、でっかい音を打ち鳴らしてから手を開くと!

 にゅるーんと出来上がったのはスクロール!

 黒くて太いスクロール!

 っていうか、太巻きです!


 うん。

 太巻きだな、これは。


「いっちょ上がりっ!『短期集中ランクアップ巻き』でヤスっ!そこのカワイイお嬢さんがこなすんでやしょ?ちょっとキツイかもわからねえでヤスよ、フィルフィーの姉御アネゴっ」


「いーんだよ、ちょっとキツイくらいで。ヒカリはドMだからなっ。あと、コイツ男だから」


 なぬっ!?俺がドMだとっ!?

 まあ否定はしませんがねっ!


「ええっ!?こんなカワイイのに男っ!?あ!アレですか!男のでヤスかっ?さすがはフィルフィーの姉御アネゴっ!美少女の美少女による美少女のための美少女にっ!でヤスねっ!」


 ゴリュウさんは俺が男と聞いてビックリしてますがっ!

 前にも聞いたコトあるけど、美少女の、ってそれは一体なんなんですかねっ?

 

「へへっ!まあそういうこった!」


 そういうこったって、どういうこったですかねヤンキー女神っ!

 何の脈絡もなくシメようとしないでもらえませんかねっ。確かにお寿司は美味しく頂きましたけれども!


「よっしゃ!まだ食えるよなヒカリっ!今から行くぞ特別クエスト!コレを食えばイイだけだからなっ」


「えっ!?今からっ!?」


 けっこうお腹いっぱいなんですけど!

 その上にこの太巻きを食べろとっ?


「フィルフィーさんっ。今夜はもう帰った方がよろしいのでは、ですわっ。ヒカリ様は明日のおバイトはお休みでしたわよね?ですわっ」


 おバイトって言い方はどうかと思うよペリメール様っ。


「はいっ、明日はバイト休みですよペリメール様っ。ね、フィルフィー、今日はもう遅いからクエストは明日にしないっ?」


「ああん!?根性ねえなあ。そんなんだからいつまでたってもザコっぱちなんだぞヒカリぃ」


 なぬっ!?ザコっぱちだとっ?

 俺だって好きでザコってるワケじゃないんだぞヤンキー女神っ!


「まあまあフィルフィーの姉御アネゴっ!今夜はお休みになって明日頑張ればイイんでヤスよ!お寿司だけに時すでにおすし、なんてね!」


 ナニを言ってるんですかね、ゴリュウさんっ!

 こちとらコヒカリ君の大ピンチに直面してるから笑顔を作る余裕なんてナイんですからねっ!

 そんなしょーもないダジャレでは笑えませんよっ!

 ところがどっこいフィルフィーはっ!


「あーはははははっ!相変わらずやるなあゴの字ジようっ!あーはははははっ!」


 大爆笑!大爆笑ですよヤンキー女神っ!

 今のダジャレがツボったみたいですよ!

 お腹を抱えて笑ってます!

 けっこう有名メジャーなダジャレだと思うけど、知らなかったのかなっ?


「さっ、さすがですわっ。ゴリュウ様っ。いつにも増して冴えてらっしゃいますわ、ですわっ。ぷふっ!」


 ペリメール様も思わず吹き出しちゃってます!

 寿をかけただけなのに、そんなに面白いダジャレでしたかねっ?


 ゴリュウさんのおかげで場の雰囲気は良くなりましたけどね!


 まあとにかく!

 明日の特別クエストが楽しみですよ!

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