大勝利!?

「一撃目の凄まじさに比べるまでも無いスカスカパンチだったぞ、俺の嫁ヒカリよっ!」


 ふいに黒竜王が掴んでいた手を放し、どてっとリングマットに落ちる俺っ。


「うにゃっ!?」


 かさかさかさっと素早く距離を取って立ち上がり!

 俺はびしぃっと指差して言ってやったですよ、黒竜王スズキさんにっ!


「オパっ!オパイつつくにゃんてサイテーですよスズキさんっ!」


「……オパ?」


 黒竜王は俺のオパイをつついた右手の人差し指をじーっと見つめ。


 ぺろり。


 とっ!指先を舐めやがりましたですよっ!


 その様子はモニターにも大きく映り!

 それを見ていた、イヤ、見せられた校舎の生徒達からは『ひゃあああっ!』とドン引きの悲鳴!

 女子からの悲鳴を聞いても平然としてるんだから、タフなメンタルですよ黒竜王スズキさん!


「美味っ!美味だぞ俺の嫁ヒカリよっ!」


 ナニをほざいてるんじゃい黒竜王っ!

 実際に舐めてるのは自分の指でしょーがっ!

 キモいっ!キモいキモいキモいっ!

 そんな発想、俺には無いっ!

 イヤ、無いんだからねっ!


「今夜は!今夜はオマエのナマのおっぱいを!ぺろーりぺろりと!ぺろぬははははははっ!」


 ぺろぬははってなんじゃいっ!

 喋ってる途中でぬはぬは笑うもんじゃないだろっ!

 イケメンなのにキモいっ!

 キモすぎですよ黒竜王っ!

 もうっ!付き合ってられないんだからねっ!

 俺の攻撃っ!

 ラジカルキックいきますよおっ!


「スズキさんっ!お覚悟ぉっ!らっ!ラジカルっキーックっ!うにゃあああっ!」


 くあっ!やっぱりハズいっ!

 とてとてとてっと走ってピョンと跳び!

 そんなカンタンにはいかないかもしれないけど、ラジカルキックをお見舞いです!

 本物がどんなのかわかんないから、ドロップキック的なアレをぶっこみますよ!

 

 するとなんとっ!


 キュワアッ!

 ズドオオオオオンッ!


 俺の短い足が黒竜王の胸元に炸裂!


「ぷぎゅわあああっ!?」


 またも吹っ飛ぶ黒竜王スズキさん!

 ラジカルキックも相当な破壊力ですよー!

 ぷぎゅわああなんて叫び声なんて初めて聞いたっ!


『こぉれぇはぁっ!スゴい威力っ!ヒカリちゃんのラジカルキックが直撃いぃっ!キモい黒竜王がボロぞうきんのように吹っ飛びましたあっ!

 ヒカリちゃんは本当にザコレベルなんでしょうかあっ!?体力測定の反復横跳びで短い足がもつれて転んでたとは思えない機敏な動きです!』


 反復横跳びで転んでたって、なんで知ってるんですかね実況のワタナベさんっ!?

 あと、さらっとキモい黒竜王って言いましたよねっ?

 それには激しく同意ですよ!


「ややややるではにゃいかっ。おっ!おらの嫁にふさわしいだすっ!俺の嫁ヒカリよほっ!」


 どこの出身かわかんないけど、なまりが出ちゃってますよ黒竜王!

 動きがさっきよりカックンカックンしてて操り人形みたいですよ!

 ズタボロになりながらも膝をリングマットにつかない根性だけはスゴいです!

 

「つっ!次はおらの攻撃だべっす!」


 なまりがヒドイよ黒竜王スズキさん!

 と思った次の瞬間!


 ばさあっ!と背中から黒い翼がっ!

 これはっ!

 ラーフィアちゃんと同じスキル『漆黒の翼』なのではっ!?

 ラーフィアちゃんは羽ばたかずに浮いてたのに対し、ばっさばっさと無駄に羽ばたいてウルサイですよ黒竜王スズキさん!


「ぬはっ!ぬはっ!ぬはははははっ!べっくらすたべっ!おらの嫁ごっさヒカリよっ!これにさ届く攻撃なんどなかんべっさあっ!」


 あのですね、スズキさん。

 なまりがヒドくて途中からナニ言ってるかわかんなかったんですけど、俺のボキャブラリーが乏しいのはカンケーないですよねっ?


 いわゆる標準語しか使えない俺は、なまりとか方言はちょっとうらやましいって思ってる派ですが!

 まったく聞き取れない方言となると、それはもう異国語ですよー!

 イヤ、ホントになんて言ったんだっ?


「ヒカリ様っ!羽根の攻撃に気を付けて下さあいっ、ですわあっ!」


「うぇあっ!?羽根のっ!?」


 ちょっとほけーっとしちゃってる俺にペリメール様からの警告っ!


「食らえ!おらの嫁ヒカリよっ!黒羽根ブラックフェザー爆弾ボム雨あられ!」


 あっ!聞き取れたっ!

 イヤ違うっ!


 黒竜王の漆黒の翼から放たれた黒い羽根の矢が無数に俺に降り注ぐっ!

 これは避けられない!

 ラミィの防御力を信じるしかないヤツ!


 ズドドドドドドオオオッ!!


 なんとっ!

 前に出した両腕をすり抜けて羽根爆弾フェザーボムが全身に直撃っ!

  

「くうううっっああああっ!」


 黒い炎はバリヤーっぽいので防いだけど!

 これっ!ヤバイかもっ!?

 衝撃がスゴすぎるっ!


 あっ!死んだっ?

 俺、死んだっ?

 俺、一瞬でバラバラにっ。


 センセエ、さようなら……

 みなさん、サヨウナラ……


 ……?


 ……んっ?


 んんんっ?


 確かに衝撃はあったのに、痛くもないし、痒くもないぞ……?


 するとっ!


『あぁーっとっ!大丈夫でしょうかヒカリちゃんっ!黒竜王の黒羽根爆弾が直撃です!

 爆煙でなーんにも見えなくなっちゃいましたぁっ!』

 

 聞こえる!聞こえてますよワタナベさんの実況がっ!


 生きてる!

 俺っ!生きてますよワタナベさあんっ!

 

 ふわあっと煙が晴れ、ズタボロになっちゃったリングに立つ無傷の俺の姿がモニターに映し出された!

 演出的にカッコいい!

 カメラスタッフさんいい仕事です!


『あああっ!無傷!またしてもっ!ヒカリちゃんは全くのノーダメージっ!スゴいスゴすぎますよヒカリちゃあんっ!ラミィは最強で最高を証明してくれてまぁす!』

 

 実況のワタナベさんは大コーフン!校舎の生徒達からもきゃあきゃあと大声援ですよ!


「「きゃああっ!ラミィちゃーんっ!」」

「「サイコーっ!」」

「「ウケるー!」」


 イヤ、俺、ラミィのコスプレしてるだけですからっ。中身は男ののコウダヒカリですからー!

 あと、ウケるってナニが!?


「くうっ!またしても耐えるとはっ!それでこそ俺の嫁にふさわしいぞ、俺の嫁ヒカリよっ!」

 

 黒竜王は羽根爆弾を使った後、漆黒の翼を引っ込めて再びリングに降り立った!

 なまりが消えてるのがちょっと残念です!

 ラジカルキックのダメージが残ってるのか、黒竜王の長い足は生まれたての子鹿ちゃんみたいにプルプル震えてますよ!


 ここはっ!チャンス到来っ!

 今こそ!

 俺のささやかなオパイをつっついたセクハラ黒竜王に制裁の鉄拳を!

 黒竜王の『ジエンドオブソウロウ』にっ!

 ラジカルラミィの必殺技をぶっこむ時!


「今だヒカリ!ラミィキャンディーハンマーアタックパンチだっ!いけえええっ!」


「って、それどうやるのフィルフィーっ!?」


 フィルフィーも必殺技をぶっこむチャンスと見たようですが!

 わかりません!わかりませんよラミィキャンディーハンマーアタックパンチ!

 ハンマー持ってるハズなのに、最終的にはパンチ!魔法のステッキに意味はあるのかコレっ!?


「なんっで知らねーんだよっ!ったくしょーがねーなヒカリはっ!」


 またそんなコト言うっ!?

 この世界に来てまだ日が浅いんだからしょーがないでしょーがっ!

 しかもラジカルラミィ初見だし!

 

「あたしの言う通りに言ったら、ステッキがナックルガードに変化するからそれでパンチだっ!いいかっ言うぞっ!」


 すうっと息を吸い込んで、でっかい声でラジカルラミィの決め台詞ゼリフを言うフィルフィー!


「みんなの想いをコブシに乗せて!」

 「みっ、みんなの想いをコブシに乗せて!?」


「オイタする子に鉄拳制裁!」

 「オイタする子に鉄拳制裁っ!」


「愛と勇気の大魔王天使!」

 「愛と勇気の大魔王天使!」


「ラジカルラミィがぶっ飛ばす!」

 「ラジカルラミィがぶっ飛ばす!」


 ハズいっ!ハズいですよ!

 これっていちおう、呪文詠唱的なアレなのかなっ!?

 左手に持ってる魔法のステッキがキラキラ輝きながらナックルガードに変化した!

 うおお、ココロ無しかイケるような気がしますよー!


「いっけえええ!ヒカリぃぃぃ!ラミィキャンディーハンマーアタックパンチだぁっ!」


 ええ、いきますよ、いきますともっ!

 フィルフィーの言葉をトレースして繰り出す俺のっ!


「ラミィ!キャンディーハンマー!アタックパーンチっ!ふにゃああああっ!」


「来ぉいっ!俺の嫁ヒカリよおっ!」


 両手を拡げて避ける気ナシですよ黒竜王!

 そんでもって、なんか嬉しそうなんですけどっ!

 もちろん!エンリョはしませんよおー!

 とてとてとてっと走り込み!


 全身全霊を込めて!

 ラミィキャンディーハンマーアタックパンチをっ!

 黒竜王の『ジエンドオブソウロウ』にぶっこみまあす!


 アッパースイングで!


 同じ男だからわかる!

 アッパースイングがどれほどまでに強烈なダメージなのかという事がっ!


 どごおおおおおおおおんっ!


「ぷるぎゅわああああああっ!!」


 クリティカル!めっちゃクリティカルヒットですよラミィキャンディーハンマーアタックパンチ!


 黒竜王は俺のパンチを避けようともせずにまともに受けて、上空に浮かぶモニターまで吹っ飛んだっ!

 ぷるぎゅわああ、なんて叫び声なんて初めて聞いたっ!


 これはっ!

 決定打になったような気がしないでもないですよー!

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