舞う刀!

 黒竜王との戦いは午後2時からです。


 って、マジかっ!

 もうそんなに時間無いんですけどっ!


 俺とラーフィアちゃんは校長室を後にして校舎の裏で特訓です!


 うむむラーフィアちゃん。

 何故に人気ひとけの無い校舎の裏なんですかね?

 なんかこう、いいムード的なアレなような気がしないでもナイですがっ!


 でも、それどころではなく!

 俺の心はざわざわしっぱなしなのですがっ!

 死んじゃうかもしれないのですがっ!

 消し炭にされちゃうかもしれないのですがっ!


「二人っきりだね、ヒカリちゃん♡」


「えっ?うん……そうだね……」


 銀髪美少女ラーフィアちゃんはニコニコ笑顔!今日も銀髪はツヤサラです!

 イヤ違うっ!

 確かに二人っきりですがっ!

 俺は今日!消し炭になってしまうのかも知れないのデスヨっ!?

 黒コゲの消し炭にいいっ!


「ではでは!ヒカリちゃんに私の剣術をレクチャーしてあげたいと思いまあす!」


 なんか楽しそうですよラーフィアちゃん!俺を励まそうとしてくれてるのかな?

 それはそれで見てる俺も微笑ましくてウレシイのですがっ!


「ちょっと待ってね……んー、ハイっ!」


 パン!と手を叩いてパッと両手を拡げると!

 何も無い空間から現れたのは一振りの刀!

 刀です!

 一流の手品師もビックリのマジック!


「魔王スキルの一つだよ。武器召喚サモンウェポンって言うの。刀とか剣ってね、腕の力で振り回すんじゃなくてその重さを利用するんだよ!」


「重さを?どうやるの?」


「お手本見せるから、ちゃんと見ててね?」


 ラーフィアちゃんは現れた刀をすらりと鞘から抜き放ち、ピタリと片手で構え。

 

「はっ!」


 凛としたかけ声と共に!


 ひゅんひゅんっ!

 ひゅわわわっ!


 うわ!すご!!アニメとかゲームとかの動きそのまんま!というかそれ以上!

 ゲーム画面から飛び出した3Dモデルみたいです!


 マンガだったら集中線とかで迫力演出するアレですよ!

 あるはずの無い集中線が見えますよ!

 ラーフィアちゃんの剣捌きは達人レベル、イヤそれ以上でマジでスゴい!

 ペン回しするみたいな感覚っていうか、スタンドマイクアクションする感覚っていうか。


 あっ!アレ!

 バトントワリング的なアレですよ!

 空中に放り投げてプロペラみたいにくるくる回って、自分の手の中に戻って来る、みたいな!

 コレはもう剣術ってレベルを超えてます!


 俺のしょーもないパープー脳ミソひねり出しても口から出るのは!


「……すごい!」


 の一言ですよ、ラーフィアちゃん!


 ひゅんひゅんっ!ひゅわあっ!

 ひゅるるるんっ!ぱしいっ!


 ラーフィアちゃんは教室の後ろの掃除用具入れに入ってるホウキ振り回すみたいに、軽々と刀を操ってます!

 なんで?

 どうやって?

 異世界人だからか?

 俺のアタマは『?』マークでいっぱいですよ!


 あ。


 魔王候補だからかっ!?魔王候補第2位だし!


 ひゅるるるんっ!

 っきん!


 と、刀を鞘に納めるラーフィアちゃん。

 めっちゃ絵になってますよ銀髪美少女と刀の組み合わせ!

 カッコ良すぎる!フィギュア化したら3つ買う!鑑賞用と保存用と保存用の保存用の3つお買い上げですよ!


「ふうっ。どうかな?」


 ニッコリ笑顔で俺に向き直るラーフィアちゃんは息一つ乱してない。

 イヤ、解りませんよナンなんですかその刀捌き。

 

「ヒカリちゃんも持ってみる?」


 と、手渡された刀は。


おもっ!重いよラーフィアちゃんっ!こんなの片手で持てないっ!両手でも扱えないよっ!?」


 見た目と違って、刀ってめちゃめちゃ重いっ!ザコレベルの俺には絶対!操れないシロモノですよ!


「アレ?ダメだったかー……じゃあ、ヒカリちゃんにはこっちの方がいいかな?」


 そう言ってラーフィアちゃんがもう一度パンっと手を叩いて。


「はっ!」


 かけ声と共に両手を広げ、しゅわわっと音を立て輝きながら現れたのはっ!


 またしてもカタナっ!

 今度は黒い鞘と白い鞘の二振りの刀!

 それはただの刀じゃなく!


 アニメとかゲームとかに出てくるみたいな浮遊刀!ラーフィアちゃんの右肩と左肩の辺りをふわふわと漂ってます!

 カッコいい!エクセレントでマーベラス!意味がだだ被っちゃってるけど、まあそんなカンジです!

 めちゃめちゃカッコいい!


「この刀は所有者の思いどおりに動いてくれるの。今は私の所有物だから私の言うコトには忠実なんだよ。見ててねっ♡」


 そう言うとラーフィアちゃんは両手を指揮者みたいに構えてから。


「舞え!白月しろつき黒月くろつき!」


 刀の名前を呼んでしゅぱっと両手を振るとっ!


 すらんっ!

 ひゅるるるひゅわあっ!


 二振りの刀が鞘から飛び出し、つむじ風を巻き起こしながらくるくるとプロペラみたいに回転です!

 ホントにゲームの世界から飛び出したような圧倒的な臨場感!


 SUGEEEEE!カッコいいっ!


 ラーフィアちゃんの周りをびゅわわわっ!と乱舞する白と黒の刀!


「戻りなさい!白月!黒月!」


 ラーフィアちゃんの一声で!ひゅるるるっ!カチン!と鞘に納まる二振りの刀!


「どう?スゴいでしょ!このコ達、最初は言うこと聞いてくれなくて大変だったんだけど今は下僕げぼくだから!ヒカリちゃんに貸してあげる!」


 マジですか下僕げぼくですか。

 ラーフィアちゃんは、刀を下僕にしちゃうほどのチカラを持ってるのデスカっ。


「黒竜王はオスだからね。何も遠慮は要らないの。三枚に卸すなり、ミンチにするなり、切り刻み放題だから楽しみ!遠慮無くやっちゃってよね、ヒカリちゃん!千切りでもオッケーだよ!」


 ラーフィアちゃん。

 言ってる事が残虐過ぎて楽しみどころかドン引きです。黒竜王がどんなのかわかんないけど、同情しちゃいますよっ!?

 それに、ザコレベルの俺がニワカ仕込みの剣術で戦える相手なのっ?


「この刀は私の言う事には忠実だから大丈夫!ザコレベルのヒカリちゃんでも、持つだけで達人になれるんだよ!スゴいでしょ?」


 ぐはっ!

 ラーフィアちゃんまでザコレベル認定です! 

 ぐうの音も出ないとはまさにこのコト!


「じゃあ、ヒカリちゃんもやってみよう!ハイ!」


 ラーフィアちゃんが細くてキレイな腕をふいっと振ると、ふわーりと『白月』と『黒月』が俺の左右の肩近くに近寄ってきた。


 こっ!これはっ!


 ゲームの中に入り込んだプレイヤーの様ですよ!VRでもARでもVRMMOでも無い新感覚!

 だって、リアルの世界で剣がふわふわ浮くなんてあり得ない!


 感動的っ!

 イヤ今はっ!

 そこに感動してる場合じゃない!


 なんせ、消し炭になるかならないか!

 つまりは、生きるか死ぬかの戦いに放り出されようとしてるんですからー!


「気を抜くと魂かじられちゃうから気をつけてね!」


 マジかっ!

 そんな物騒なモノなんで持ってるのかなラーフィアちゃん!

 

「意識を集中して、刀が舞う姿をイメージしてみて!」


 イメージ!落ち着いてイメージ!妄想なら大の得意ですよー!

 落ち着いてー。

 ひっひっふうう。ひっひっふうう。


 ラーフィアちゃんがやったみたいに……


「舞え!白月っ!黒月っ!うにゃあっ!」


 右手を前に突き出す俺っ!上に振り挙げると『お着替えガチャ』スキル発動しちゃいますからね!

 

 しゅらりん!と鞘から飛び出す二振りの刀!

 イメージ!イメージですよー!

 くるくる回って水平飛行からのおー!


「垂直上昇っ!」

 

 びゅわあああっ!と凄まじいスピードで回転しながら上昇する白月と黒月!


「急降下っ!」


 ぎゅわわっ!ひゅるるるんっ!と俺の指示通りに急降下!


 うわ!スゴいっ!


「戻れっ!白月!黒月!」


 びゅるるるんっ!かきん!

 と鞘に納まる白月と黒月!

 おおー!イメージ通りに出来たっ!

 俺にこんなセンスがあったとはっ!

 これはっ!ゲームで鍛えられたおかげかも!?


 ラーフィアちゃんは可愛いお口をあんぐりですよ。

 んっ?ダメだったのかなっ?


「スゴい……!」


「えっ?そうなの?……お世辞でも嬉しいよラーフィアちゃんっ」


 俺はエヘヘと照れ笑い。銀髪美少女にスゴいって言われちゃあね!

 エヘヘ以外になんと言えばっ?


「お世辞なんかじゃないよう!スゴいよ、ヒカリちゃん!初めて操るとは思えない!ホントにスゴい!私だって慣れるのに1ヶ月かかったのに!」


 え。ほんとに?

 ラーフィアちゃんでさえ1ヶ月もかかったのっ?

 お世辞じゃないっぽい?

 ザコレベルのこの俺がっ!バケモンみたいな刀を操っちゃってるんですかっ!?


 マジかっ!


 なんか。なんかこう!

 みなぎる何かがこう、りんりんって湧いてきますよ!

 上手く言えないけど、まあそんなカンジです!

 こんなスゴい刀を貸して頂けるなんて感謝感激ですよラーフィアちゃんっ!


 コレなら!

 勝てるかもしれない!

 消し炭にならずにすむかもしれないっ!


 俺はっ!このラーフィアちゃんからレンタルした刀で!

 黒竜王を倒せるかもしれないような気がしないでもないような気がしてきましたよっ!


 かかってきなさいっ!黒竜王っ!


 あ、でも戦わずにすむならそれがイチバンだと思うのですよ。


 和平合意ってヤツです。


 ね!

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