急展開!俺の物語!

男の娘《コ》VS黒竜王!?

「きゃあああああっ!ですわああああっ!」


 今朝フィルフィーはペリメール様のベッドに潜り込んでましたよ。

 でもって、ペリメール様の悲鳴から始まる月曜の朝ですよー!

 これ、パターン化するのかな?

 

「あにゃっ!あにゃたはっ!どうしてまた私のベッドに潜り込んでいるでごじゃりましゅるでしゅかあっ!ですわっ!」


「あー?ウルセエなあ。いーだろ別にー。これから長い付き合いになるんだからさー」


「えっ!?」


「なんなら毎晩でも一緒に寝たいんだけどなー」


「えっ!?」


「抱きマクラじゃなくって抱きペリ子!抱き心地サイコー!なっ!」


「なっ!じゃごじゃりませぬでごじゃりましゅるですわあっ!」


 ばちーん!

「ぶあっ!?」


 炸裂!ペリメールスマッシュが月曜の朝からフィルフィーの顔面に炸裂ですよー!

 ……面白い。


 ペリメール様は耳まで真っ赤になって、でも怒ってるっていうよりは照れてる……っていうよりは、デレてる感じ?

 見ようによっては、なんか嬉しそうにも。


 んー?まさか、ねえ。……ねえ?


「さあさあっ!新しい朝、ですわっ!希望に満ち溢れた新しい朝!ですわあっ!」


 なんかテンション高いなペリメール様っ!

 照れ隠しなんですかね、ペリメール様っ!


 さて!


 今日も始まりますよ、1日が!

 なんか学校生活が楽しみになってきてる男のですよー!


           ◇


 二度目の月曜日の朝。二度目の全校集会。


 フィルフィーは『集会シューカイだあ!』っつって、やたらテンション高くなってるのはなんでだろ?


「おはようっ、ヒカリちゃん!」


 と、ラーフィアちゃんの声ですよ。俺に手を振って銀髪美少女スマイルを向けてくれてマス!

 俺も手を振って応えますよー!ニャハー!


 全校集会。全学年が集う会ですよ。

 そこで事件は起きました。


「えー、

 『穏やかな 秋空の元 いわし雲

   サンマ食べたし 焼きイモもよし』」


 また一句詠んじゃったよ神様校長。

 全校生徒の前で『ワシお腹空いた』って言ってるのと同じじゃないですかね?

 先週の月曜日は春の句で、今日は秋の句。

 ちなみに今の季節は初夏ですよ。


「えー、あー、皆さんご存知の通り、いよいよ明日、第19話で話した通り黒竜王との試合なわけですじゃが」


 何ですかね第19話って。時々不可思議なワード出すよね神様校長先生。

 でも、なに?え?黒竜王?黒い竜の王?ブラックドラゴンキングてヤツですかね?おおー、いかにも異世界ってカンジです!

 でも試合って言ったよね?


「えー、黒竜王と戦う予定となっておった勇者育成コースの3年生、アマノタカコが『お腹が痛い』という事で、えー、病欠と相成りまして」


 何ですかねその理由。明らかに仮病じゃ無いですか?

 でも周りからは『腹痛じゃしょうがないよねー』とか『お腹痛いと無理だよね』とか賛同の声が聞こえてきます。

 うーん、あれかな?『オンナのコの日』なのかな?それなら俺は何も言えないなっ。

 周囲の女子生徒達からは次々と『お腹痛いと無理』の声。

 鵜呑みにする訳じゃ無いけど、女の子って、誰かと共感するコトで自分の身を守るってネットで見たような……


「えー、そこでじゃ。急遽、代理の者を選抜し黒竜王とバトってもらう事に相成りまして」


 バトってって。代理の者って、やっぱ強くて優秀な人なんだろうなー。勇者育成コースの人だよね、きっとね。


「えー、相手は黒竜王であるからにして、勇者育成コースの中から、えー、優れた成績の者を選抜して、あー、黒竜王と戦ってもらいたいと、思いまする」


 うんうん、そうですよねー。黒竜王がどんなかわかんないけど、ここはやっぱり成績優秀者じゃないとねっ。


「えー、第2候補である3年生のタカマガハラリョウコはおいでますかな?えー、アマノタカコに代わって、あー、黒竜王とバトって頂けませんかのう?」


 神様校長先生が言うとほぼ同時に『きゃあっ』と響く悲鳴!何事ですかねっ?


「神様校長!タカマガハラさんが貧血で倒れましたっ!」


「むむっ?それは大変じゃ。保健室へ連れたったんさい。はようはよう」


 ショックで貧血っちゃったのかなっ?まあ、そうですよねっ。びっくりしますよっ。


「あー、それでは、えー、第3候補の2年生のカミワズミイクミに黒竜王に……」


 今度は神様校長が言い終える前に、どたっ!と何かが体育館の床に倒れる音!


「神様校長っ!カミワズミさんが白目をむいて気絶しましたっ!」


「なんとっ!それは大変じゃっ。保健室へ連れたったんさい。はようはよう」


 立て続けのアクシデントにざわつく生徒達!そりゃそうですよねっ。いきなり黒竜王とやらと戦えって言われたらそうなりますよね!


「それでは、えー、取っておきのカクシダマをぶっこんでみようかと、おー、思いまする」


 なんだ、そんなのあったんですね神様校長っ!だったらもっと早く言えばイイのに!


「えー、勇者育成コースの中でも、あー、スキルを所有している者が良い、と、思うのね。えー、幸いなコトに、うー、勇者育成コースの中に。あー、スキルを所持している者がおる。しかも2つ」


 ふむふむ。俺の他にもスキル持ってる人いるんだな?

 俺のはスキルなんて呼べるようなシロモノじゃ無いけどね。

 と、思ってたら。


 再びざわざわする周りの生徒達。

 なんでかわかんないけどドヤ顔の神様。


「育成中なのにスキル2つも!?スゴイ!」 

 とか。


「1つ取れればいい方なのにねー!ウラヤマだよー!」

 とか。


 ん?そうなの?スキル持ってるコト自体珍しいの?俺、2つ持ってるんですけど……

 ラーフィアちゃんも持ってるんだけど。

 あれ?この流れって……もしかしてっ!?

 

 でもねっ。言えない……言えるワケないでしょ!

 お着替えガチャと謎の黒光くろびかりだよ!?

 お着替えガチャはともかく、コカンの謎の黒光くろびかりなんて何の役にも立ちませんて!

 お着替えガチャだって、いきなりバニーガールとかに衣装チェンジしたら、そりゃもうただのヘンタイですよ!

 しかもしかも!


 女子高ですよ!?


 男だってバレたらと思うと……


 いっ……


 いやああああああっ!


 絶叫した!俺は心の中で絶叫したね!


 ヘンタイどころかドヘンタイの烙印押されて、毎日のように袋叩きの高校生活送るなんて公開処刑みたいなモンですよ!


 この状況、波風立てずに済ませるのは!

 決して目立つべからず。

 これ!もうコレしかない!


 ところがですよ!


「えー、学業成績はパープーじゃが、スキルは2つ所持している者。先週編入した新しいオトモダチのコウダヒカリに黒竜王と戦ってもらいたい、と思いまする」


 名指しで俺!?なんで俺!?

 っていうか、パープーってコト、全校生徒の前でバラさないで下さいよ神様校長先生っ!


「と言うわけで決定。皆さん、温かい拍手を」


 と、パラパラパラ、と小雨がトタンを叩くようなまばらな拍手。

 せめてもうちょっと大きな拍手が欲しかったー!

 イヤ違うっ!それ、決定なのっ!?俺に拒否権は無いのっ!?


「では。あー、コウダヒカリ君は、この後で校長室に来てもらおうかの」


 頑張ってねー!とか、応援してるよー!とか無責任な声がする。

 ええっ!?黒竜王と戦うのっ?俺が!?


 男のの俺がっ!?


 先週編入したばっかのザコレベルのこの俺がっ!


 黒竜王とやらと戦うんデスカっ!?


           ◇

◇ クロジョでの試合に向けて準備中の黒竜王 ◇


 右を向き。


「ククク……我が名は黒竜王、スズキ!畏怖と敬意の念を込めてスズキさんと呼ぶ事を許す!待っているがいい、俺の嫁っ!」


 左を向いて。


「んー……もうちょっとカッコいい言い回しは無いもんだべか?」


 右を向き。


「ククク……心おきなく待つがよい!俺の嫁っ!」


 左を向いて。


「なんか違くねが?心おきなく待つって文法的にどうなんだべさ?首を長くして待つ、じゃねがな?」


 右を向き。


「ククク……俺の、俺の嫁っ!」


 左を向いて。


「それではただのヘンタイっぽくねーべかなー?」


 右を向き。


「ククク……首を洗って待っていろ!俺の嫁っ!」

 

 左を向いて。


「殺す気は無いでば、それもちょっとちげえんでねがなあ?」


 なんていう一人芝居を黒竜王が小一時間近くやってたなんて、この時の俺は全然知らなかったんだ。

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