黒竜王との戦いの前に
全校集会の後。
行きたくもない校長室に、これまたご丁寧に生徒会の皆様が連れてきて下さいましたよ。
前後左右を固められて、逃げたくても逃げられないっ。
これって連行っていうのではっ!?
校長室に入ると、大きな机を前に神様校長先生が神妙な顔つきで『校長椅子』に座って待っていた。
どこの学校にもある校長椅子。さすが校長、校長椅子が似合いますよ!
イヤ、今それはどうでもよくて!
校長室に入るや否や抗議の声をあげる俺っ!
「神様校長先生っ!黒竜王と戦うってどういうコトですかっ!?ボクなんて編入したてのド底辺のザコレベルなんですよっ!?戦えるワケないじゃないですかっ」
自分で自分をディスる俺っ!
だがしかし!
今だけは!胸を張って言おう!
俺はド底辺のザコレベルなんですよ!とっ!
「……ヒカリよ、言いたい事は山ほどあるじゃろう。だがその前にワシの話を聞いて欲しいのじゃ」
おおっ!
今までに見たコトの無い神様校長先生の真剣な眼差し!
顔の前で手を組み低く重い声!
意外にシリアスが似合うな神様校長先生!
「お前に、とても大事な事を伝えておかねばならぬ」
これはっ!
何か重大な事を言おうとしているのかっ?
心なしか空気が重いっ!俺にも走るよ緊張感!
そんな中、神様校長先生から放たれた言葉は!
「サトナカ先生はな」
んっ?サトナカ先生のハナシなの?
「Hカップだそうじゃ」
マジすか!
Hかっぷ……えっちカップ……えっちなかっぷ……平仮名で書くと格段にエロいっ!
A、B、C……指折り数えて8番目っ!
イヤ違うっ!
「せっ、セクハラですよっ?なんでそんなコト神様校長先生が知ってるんですかっ?」
「ヒカリよ。興味無いワケ無いじゃろ?」
「それはまあ……」
ぶつかり稽古の時のサトナカ教官のあのなんとも言えないぷにょふわ感!Hカップと聞いて納得です!
俺の顔がずぶずぶと埋もれるほどのオパイですからねー。
えっちカップ……ラーフィアちゃんに1カップでもお裾分け出来ないものなんだろうか?
「そっ、そんな情報ドコから入手したんですかっ?」
「ん?飲み会の席でほろ酔いになったトコロでな」
ほろ酔いっ!?飲み会ハラスメントってヤツかっ!
「ワシが土下座して聞いたんじゃよ。ほっほっほっ」
土下座っ!神様が土下座っ!?マジかっ!!
ほっほっほって!神としてのプライドとか無いのかっ?
「サトナカ先生のな、あの汚い虫でも見るような目がたまらんよのう。わかるじゃろ?」
うっ。それはまあナントナク……
イヤ違うっ!
俺はっ!土下座してまでサトナカ先生のブラジャーサイズを知りたいとは思わないっ!
とんでもない仲間意識を持っちゃうトコロでしたよっ!
「ヒカリよ」
「はいっ!?」
あっ。イラっと返事しちゃったっ。冷静に冷静にっ!
「もう一つ、お前に伝えておかねばならぬコトがあるんじゃ」
黒竜王の話はドコいった!?
なんかイヤな予感しかしないんですけどっ。とりあえず聞きますけども!
「なんですかっ?」
「ワシの投稿しとる小説がランキングに乗らんのじゃ」
なんじゃいそれっ。
って言うか、この異世界にもそんなのあるのっ!?
「……そんなの知りませんよっ。頑張って投稿し続けるのが大事なんじゃないですかっ?」
「ナニがいかんのかのう?」
ああもう、めんどくさっ!とりあえず聞いてあげますけどもね!
「どんな内容なんですかっ?」
「三十路前の女教師と校長先生の禁断のエロスのお話なのじゃが。続けてええもんなのかのう」
それってサトナカ先生と神様校長先生のコトですよね!?
ダメでしょ!倫理的にというか世間的にというかっ!
「ミスキャスティングなんじゃないですかっ?」
「ん?三十路前の女教師がダメじゃったかのう?」
「ちっがいますよ、むしろウエルカムですよっ!歳上過ぎやしませんか、ってコトですよっ」
「ん?三十路前の女教師がかな?」
「校長先生っていう設定が!ですよっ。作品の中の校長先生って何歳なんですかっ?」
「800歳じゃ」
年齢離れ過ぎだろっ!普通の人の人生10回分くらい生きてますよっ!て言うかソレ、神様校長先生そのままじゃないのっ?
「その作品は設定変更した方がイイんじゃないですかっ?」
「ほほう。例えば例えば?」
なんかグイグイ前のめりですよ神様校長っ。よっぽど行き詰まってるのかなっ?
「神様校長先生の女教師の設定、当ててみましょうかっ?」
「むむっ?苦しゅうない。言ってみそ」
みそ?何ですかねそれ。まあ、ツッコミませんけどねっ。
「女教師は美人でスタイルいいのに、寄って来る男はダメ男ばっかり。貢がせるつもりがいつの間にか貢いでて、身体を弄ばれて飽きられてポイされる、の繰り返し!そこに現れたダンディーな新任の校長先生!始めは意見がぶつかり合うんだけど、いつの間にか惹かれあい禁断の恋に落ちる女教師!どうですかっ?」
マンガとか小説だとベタな設定かも知れないけど大概こんな感じでしょっ?
「……ヒカリよ」
「はいっ?」
あれ?違ったかな?
「お前は神か……っ?」
神はアナタですよ神様校長先生っ!テキトーに言ったのに的中しちゃったのかっ。
「ヒカリならどんな女教師の設定にするんじゃ?」
俺に訊きますか神様校長先生っ。ネタに困ってるのかなっ?
「そうですねえ。普段は真面目で清楚なんだけど、ホントはドSで男も女も眼光だけでドレイにしちゃうような女王様タイプ、とか?」
「……ヒカリよ」
「はいっ?」
「お前はいずれこのセカイを制するじゃろう」
マジすか!こんなんでセカイ制するなんて無理でしょ!
「頑張って作品をたくさん作るコトが大事なんだと思いますよ?」
「ん?作品?何のじゃ?」
アレ!?またバグりだしたか!?
「……神様校長先生のエロ小説ですよっ!」
「なんでヒカリが知っとるんじゃ?」
「今そういう話をしてたでしょーがっ」
「今?あ、アレじゃろ?『今でしょ』ってヤツじゃろ?」
「ちっがいますよっ!」
またコレかっ!地獄のループの始まりかっ!
バグるのも大概にして下さいよ神様校長っ!
「ヒカリよ」
「はいっ!?」
あっ。またイラっと返事しちゃったっ。
「お前に会わせたい者達がおるんじゃ」
「えっ?誰ですかっ?」
「サトナカ先生とザコレベルB班の皆さんじゃ」
「えっ!?」
なんか気まずくない!?今の神様校長先生のエロ小説の話の後ですよっ!?俺も『女教師はドSな女王様』って設定言っちゃったし!
「サトナカ先生や。入って来て下されい」
なぬっ!扉の向こうでスタンバっておられたのデスカっ!?俺の話まるまる聞こえてたっ!?
カチャリ、とドアノブが回る音。
キィィィィ、と丁番が軋む音と共にゆっくりと開く扉っ!
こわっ!なんかホラゲっぽい!
「……おはよう、ザコ12番」
「おっ!オハヨウゴザイマスっ!サトナカ教官っ!」
サトナカ教官が俺を名前じゃなくてザコナンバーで呼んだってコトは、今の俺は『コウダヒカリ』では無い!
ザコレベルB班の『ザコ12番』であります!
サトナカ教官の後ろにはザコレベルB班の皆さんが待機中っ。
俺の元にコツン、コツン、と踵を鳴らして一歩ずつ、ゆっくりと近づくサトナカ教官!
チラッと神様校長先生を一瞥したその目が!
汚物を!汚物を見る目!あからさまにイヤそうな顔っ!
神様校長先生って一応、上司デスヨネっ!?
「私の胸はそんなに垂れているか?ザコ12番」
「えっ!?」
言って無い!サトナカ教官のオパイが垂れてるなんて、会話の中で一言も言ってナイデスヨっ!?
「答えろザコ12番……」
「えっ?あのっ!垂れてなんてないでありマス!」
「誰が答えていいと言った?」
出た!答えろって言っておいてコレですよ!
ブラック!ブラック教官が降臨であります!白いモノでも教官が赤と言えばそれは赤なのであります!
「もう一度訊くぞザコ12番……私の胸はそんなに垂れているか?」
「さっ、さー!いえっさー!」
「そうかザコ12番……お前はそんな目で私の胸を見ていたのか……」
キラリと光るよサトナカ教官のメガネの端が!
メガネのその奥に見える瞳の冷酷さと言ったら!
サトナカ教官はえっちかっぷって刷り込まれちゃってるから、俺はもう目が泳ぎまくりデスヨっ!
ここはっ!
しっかりと目を見て話す!視線を!
1ミリも逸らしてはなりませぬっ!
チラッとでもサトナカ教官のオパイに視線が移動してしまったら!
俺はフリーズドライな男の
だがしかし!
なんで今日に限ってそんなに胸元の開いた薄手のブラウスなんですかサトナカ教官っ!
ブラウスが白でキャミソールがピンクって!透けるのわかってるハズなのにー!
俺はっ!ヘビに睨まれたカエルっ!
一歩も動けやしませんよー!
ぬおおおおっ!
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