指チュー!

 甘々スイーツタイムはスイーツより甘々でした。

 美味しかったです。いろんな意味で。


 ナンパ君にはビックリしたけど、アイツ大丈夫かな?まあ、ね。自業自得ってヤツですよ!


 ラーフィアちゃんが店の御手洗いでナンパ君に触れられた俺の肩を念入りに消毒殺菌。そこまでしなくてもとは思いつつ、まあ、ウレシイもんですよ!

 その後、スイーツ店を出て二人でブラブラして、イイ感じのベンチでまったり休憩。

 何気ない他愛ないお喋りの中、その質問は突然俺に投げ掛けられた。


「ねえ、ヒカリちゃんはどうして勇者になりたいって思ったの?」


「えっ!?」


 いっ、言えないっ!


 ホントのトコロは『フィルフィーを昇格させて俺をリセットさせる。でもって俺はイケメン勇者に転生!』っていうのが目的なんだけど。


 そもそも。


 イケメン勇者になって、モテモテでウハウハでウフフでアハンなハーレム作りたいから。なんて言えましぇん!


 イケメンすなわちそれ、男!

 男だってバレた日にはっ!


 ラーフィアちゃんにどんな血祭りにあげられるか想像するのもコワイっ!

 世界中の、イヤ、異世界中のどんな祭りよりも恐ろしい『コヒカリ君の血祭り』が!開催されるコトになっちゃいますよー!


 ここはオーソドックスでポピュラーな返答をっ!

 子供の頃に見たヒーローアニメ!

 でも、こっちの世界でもそんなのあるのかなっ?


「私が当ててみよっか?」


「えっ?」


 当てるの!?当てちゃうの!?ウフフでアハンなハーレムをお見通しなんですかっ?

 読心術でも使えるんですかっ?


 じっと俺の目を、イヤ俺のぐるぐるメガネを見つめるコト数秒。


「ちっちゃい頃に見たアニメとかの影響でしょ!どう?」


 内心ドキドキしてた俺に向かってイタズラっぽく言うラーフィアちゃん。


 KAWAEEEEっ!


「あっ、えっとっ、その……正解、デス」


 ホントは違うんですけどねっ。不正解ですなんて言ったら、じゃあ正解は?とほじくられること必須でしょうからね!


「やっぱりー!ヒカリちゃんも見てたんでしょ?『愛の大魔王天使ラジカルラミィ』!よかったよねー!」


 なんですかそのアニメ。こっちの世界のアニメなんて全然知らないんですけど。

 魔王で天使ってのが気になりますが!


 良くない!これは良くないぞっ!

 ウソにウソの厚塗りを繰り返して、ウソのミルフィーユが出来上がっていきますよ!

 コジらせにコジらせて、誤解のマンションがタワーマンションに大化けしますよー!

 あ、今のは『誤解』と『五階』をかけた、ちょっとおシャレな言い回しなんですけどっ。


 イヤ違うっ。

 

 このままでは!

 ラーフィアちゃんをだまし続けるコトになってしまうっ!それはさすがに心苦しいというか、良心が痛むというかっ。

 ホントは女の子のフリしてる男のなんだから!

 なんの特技も取り柄も無い、ただのパープーでド底辺のカワイイだけの男のなんですからー!


 いつ言うのっ?今!?今なのっ!?

 言わなきゃ!ホントのコトをっ!

 俺が男だってコトをっ!


「あのっ!ラーフィアちゃんっ!違うの!」


「えっ?違う、って……」


「あのねっ、ホントはねっ」


「あっ!『超絶合体ラリラリルレ美』の方!?こっちかー!あれもよかったよね!特撮美少女ロボットモノっていうのが新しかったよね!」


 らりらりるれみ?なんですかソレ。


 この世界のアニメとか特撮のタイトルおかしくない?方向性はそれでいいのか?

 ていうかね。ラーフィアちゃん、結構なヲタっぷりですよ。

 まあ、俺もそうなんですけどねっ。

 子供の頃のヒーローアニメとか特撮モノってワクワクしながら見てたからねー。

 わかるわー!


「第4話で主人公が死んじゃって!」


 えっ?そうなの?


「第5話で生き返って!」


 おおっ!引き込まれる!


「第6話でまた死んじゃうんだよねっ。笑ったよね!大爆笑!」


 ラーフィアちゃん?それ笑うトコロなんですかっ?主人公が死んで大爆笑って、どんな特撮モノなんだっ?

 なんか見たくなってきましたよ『超絶合体ラリラリルレ美』!


 イヤ違うっ!


 本題がどんぶらこと川に流れるお椀のように離れていきますよっ!

 川に流れるお椀なんて見たコト無いけど、まあそんなカンジです!


 ここはっ!

 一旦ラーフィアちゃんを落ち着かせようっ!


「ラーフィアちゃんっ!」


 俺はベンチから立ち上がって、ぐるぐるメガネを外し!

 ニコニコ笑顔で『ラリラリルレ美』を語るラーフィアちゃんの両肩をぐっと掴み!

 真剣な眼差しでラーフィアちゃんのオーシャンブルーの瞳を真っ直ぐに見つめますよ!


「えっ?えっ?ヒカっ、ヒカリちゃんっ……?そんなっ、ここで……?」


「えっ?」


「他にも人が……でも……ヒカリちゃんがしたいなら……いいよ?……ん♡」


 ん?なんで目を閉じるのラーフィアちゃん?


 えっ?これはっ!


 まさかの!


 キス待ち!?


 マジかっ!


「ん♡」


 うわ!なんておねだり上手なんですかラーフィアちゃんっ!いや、きっかけ作っちゃったの俺かもしれないけどっ!

 人通りの多い場所でチューはマズイのではっ!学校名バレバレの制服着てるしっ。


 回避!全力で回避!でもどうやってっ!?

 あっ!あれだっ!アレやってみよう!人差し指でチュー!


 ゲームショーのVR体験でやってみたヤツ!

 VRゴーグル着けたら目の前に2次元の美少女キャラが3次元的に浮かんでて、本物みたいに触れるってヤツですよ!

 でも実際に触ってるのはシリコンゴム人形っていうアレですよ!

 

 俺はドキドキしながら、目を閉じてキスを待つラーフィアちゃんの唇に人差し指でちょん、と触れてみたっ。


 イヤ、それが精一杯ですって!おおっぴらに人前でチューなんて無理!

 それでも!女の子の唇に触っちゃったっ!

 ぷにょんで、ぷるるで、ふわわなやーらかいクチビルにっ!

 VRの時みたいな冷たいシリコンゴムの偽物クチビルなんかじゃない!温かい生身の女の子の唇にっ!

 捕まる!?俺、捕まっちゃう!?


 ぱちっと目を開けて、ぱちくりとまばたきするラーフィアちゃん。一瞬、何が起きたかわからなかったみたいだ。


「えっ?チューしてくれるんじゃないの?なんでしてくれないのっ?わたしのキス顔見てただけっ!?ヒカリちゃんのイジワルっ!恥ずかしいようっ!うん、もうっ!」


 うわ!ラーフィアちゃん、真っ赤になっちゃった!色白だから首筋まで赤くなってるのがハッキリわかる。

 女の子に、うん、もう!なんて初めて言われちゃいましたよ!うん、もうっ!


「あのっ、後で、ね?ここじゃ、ちょっと、ね?」


「ホントは私が責めなのにっ。でも、こういうのも……キライじゃないよっ」


 ちょっと上目遣いで照れてるラーフィアちゃん。


 KAWAEEEE!!天使かっ!


「あのカプ、イチャイチャしてるねー」

「いいよねー。うらやましい」

「あたしもコイビト欲しいなー」


 なんて声が聞こえてきますよっ!


 あれっ?なんだっけ!?

 なんの話しててこうなったんだっけっ!?


「私っ、ちょっと飲み物買ってくるねっ。喉渇いちゃったの、ヒカリちゃんのせいだからねっ!」


 と、ウインクながらペロッと舌を出し、ベンチを立つラーフィアちゃん。

 ふわっと風に揺れる長い銀髪が太陽の光を受けて、キラッと輝いて見えたんだけども。


 YABEEEE!KAWAEEEE!

 

 ギャルゲとかエロゲのパッケージなんかより1億倍カワイイっ!

 例えがパープーだけど、まあそんなカンジです!イヤそれ以上です!

 

 ただ!状況的に!

 い、言えなかったっ。なんか、イチャイチャしてただけだったっ。


 ◇ 言いたいの

    でもね無理なの

     言えないの  ◇ ヒカリ 


 そんなつもりじゃ無かったのに。ナニやってんだ、俺っ。



 ◇ 自動販売機の前にて ◇


 ヒカリちゃんにあんなコトされちゃったら……もう、ガマンできないなあ……もう押し倒しちゃおっかなあ。キスの向こう側って、そういうコトだもんねっ!

 

 ヒカリちゃんっ♡


 ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃん♡ヒカリちゃんっ♡♡♡♡♡

 

 ヒカリちゃんっ♡


 この後は……お揃いの下着ブラパンを買いに行く予定……そこで私は!ヒカリちゃんのっ!おっぱいを触ります!


 初デートだからって関係ナイ!


 私はっ!やると決めたコトはやる女!


 頑張るぞっ!私っ!おー!

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