初ナンパ!
二人して照れてる内に、注文の品がやって来ましたよ。
ラーフィアちゃんのはホイップクリームたっぷり、パンケーキは三枚重ねのラズベリー、ストロベリー、ブルーベリーのベリーミックスパンケーキ。『甘酸っぱくてラブラブな味』だそうです。
俺のは、これまたホイップクリームたっぷりのガトーショコラパンケーキ。パンケーキの中にはブラックチョコチップが入ってて『甘くてほろ苦い初恋のような味』だそうです。
なかなかにこっぱずかしいネーミングだけど、キライじゃ無いですよ!
カフェラテはよくあるカンジのヤツですよ。ラテアートはお決まりのハートマーク。
なんかね!こう、ね!甘々ですよね!
スマホがあれば写真撮るのになー。スマホは無いにせよ、通信器機的な物はこの世界には無いのかな?
「わはー♡美味しそうっ!食べようよ、ヒカリちゃんっ!」
ラーフィアちゃんは美味しそうなパンケーキを前にテンション上がってます。16歳の女の子!ってカンジですよ!
目をキラキラさせながら、ナイフとフォークを使って一口サイズに切り分けて。
「ほらっ!ふわふわだよー♡3つのベリーがカワイイよねー♡」
フォークに乗せたそれを一旦俺に見せてから、カワイイお口にパクっとイン!
「んー♡♡美味しー!甘くって酸味があって、ベリーベリー!ってカンジだよー!」
銀髪美少女の食レポ!
こんなの動画投稿サイトに出したらあっという間に100万回再生いきますよー!
カラダでっかいヒトが、ただただ食ってる動画も面白いかもしれないけど、銀髪美少女が美味しそうに幸せそうに食べてる姿の方が1億倍!尊いですよー!
「ヒカリちゃんもっ!食べて食べてっ!感想聞きたいなー」
うお!俺に食レポをしろと!?うむむ、なかなかに高いハードルですよラーフィアちゃん。
ここは一つ!男の
「ソトハサクット、ナカハフワット、ワー」
「ヒカリちゃん?なんで棒読みなの?」
「えっ?ダメだったっ?」
「うふふっ!ヒカリちゃんて、変!」
くはっ!空回り!ダダスベり!こっぱずかしいです!カワイイ女の子の前でスベるコトほどツラいコトなんてこの世に無いです!
穴があったら入りてーですよー!
だがしかし!
ココロが天使なラーフィアちゃんは、ダダスベってる俺に優しく微笑んでくれてます!
救いの女神ですよ!ラーフィアちゃんが目指してるのは魔王だけど!
気を取り直して、ひっひっふうう。
パクっと食べたガトーショコラは、ちょっと苦くてでも甘くって。ホイップクリームがふわふわで!
「美味しいっ!」
「……はうっ!」
パッと顔を上げた瞬間にぐるぐるメガネがずり落ちて、ばっちりラーフィアちゃんと目が合った瞬間!
再びフリーズするラーフィアちゃん!
「ヒカっ、ヒカリちゃんっ!突然ぐるぐるメガネをずり落としてはイケナイと思いマスっ……ヒカリちゃんの目には魔法がかかっているみたいデスっ」
「えっ!?」
そうなのっ?でも、フィルフィーとかペリメール様とか、サトナカ教官とかムラサメさんとかは全然平気っぽいけどっ?
それほどまでにラーフィアちゃんのどストライクってコトですかー!
この顔にしてくれたフィルフィーに感謝……してイイのかっ?
◇
気を取り直したラーフィアちゃんからのおねだり攻撃!
「ね、ね、ヒカリちゃんっ!あーん、して欲しいなっ♡」
くあ!来るかと思ってたけどやっぱり来ましたよ!お昼のランチ以来の『あーん♡』ですよ!
ここはっ!あの時とは違う俺を見せる時!
あ、ただケーキをお口の中にインするだけですけどね。あの時はキンチョーして手が震えてたからね。
「じゃあ、はいっ、あーん」
「あー♡」
ぐはっ!なんで『あーん』じゃなくて『あー♡』なの、ラーフィアちゃんっ!?口の開け方までカワイイってどんだけカワイイんですかあっ!
切り分けてフォークに乗せた『甘くてほろ苦い初恋のような味』のガトーショコラを!
カワイイお口にパクッとイン!
「んふふっ♡美味しいっ」
ぬお!今日も頂きましたよ銀髪美少女の『んふふっ♡』を!
俺、
この姿も、今だけはヤンキー女神に感謝っす。
「あ……ランチの時もそうだったけど、コレって、間接キスだねっ。もうキスしちゃったから気にならないかなっ?」
いえいえラーフィアちゃん。俺はあの時もドキドキしてましたよ。心臓ばっくばくでしたよー!
「私もお返しねっ!ハイっ!あーん♡」
ラーフィアちゃんが一口サイズに切り分けたベリーミックスパンケーキ!
それが今!俺の口の中に!
入りましたっ!
もぐもぐ。
UMEEEEE!
3つのベリーが踊ってますよ、ベリーダンスですよー!ダンス的になんか違うような気がするけど、まあそんなカンジです!
デートって!デートって!デートってえ!
こんなにもココロがフワフワになるモノなんですかあああっ!ホイップクリームよりフワフワですよー!
うおおおっ!
◇
二人できゃっきゃしつつパンケーキをペロリと完食。
お腹もココロも満たされました。だがしかし!デートが終わったワケでは無いですよ!
とは言え!
知らない町だし、お金も無いからリード権はラーフィアちゃんにあるんだな。
コレって、ヒモって言うのではっ!?
「私、ちょっと御手洗いに行って来るねっ」
と、ラーフィアちゃんが席を立って間も無く。
「こんにちはっ!久しぶり!」
と、いきなり若い男に声をかけられてちょっとビックリですよ。
え?どちら様ですかね?
前髪をサラッと横に流したニコニコ笑顔が爽やかな背の高いイケメン君。18歳くらいかな?
久しぶりってコトは何処かで会ってる筈なんだけど、こっちの世界に来てから出会った人なんて限られてる。
うむむ。どう考えても初対面ですよ?
と、困惑してる俺を見て。
「あっ、ごめん!人違いだった!」
と謝るイケメン君。
でしょうねー。いや、まあ、誰にでもありますよね、そういうコトってね。
でも、こんなぐるぐるメガネの地味子を誰かと間違えるなんてある?
「君、クロジョの生徒だよね?お詫びにと言っちゃなんだけど。アイスクリームおごらせてくれないかな?美味しい店知ってるんだけど、どう?さっき一緒にいた銀髪の娘も誘ってさ。ね?」
人懐っこくて爽やかな人だなー。アイスクリームか……ちょっと食べたいかも。
って、これはっ!
ナンパ!ナンパですよ、コレ!
ナンパなんて初めてされたっ!いやーん!
って違うっ!
これは恐らくっ!ラーフィアちゃん狙い!『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』ってヤツですよー!
なかなか巧妙なイケメン君ですよっ。
アイスクリームと爽やか笑顔を武器にナンパっ!なんて羨ましい戦術なんですかっ。ウラヤマ戦術ですよ!
どう対応していいものかわからない俺に向かって、イケメン君が聞きたくも無いアイスクリームのプレゼンをし始めた。
「そのアイスクリームっていうのがさー、カップとコーンのどっちか選べるんだけど」
まあ、フツーですかね。よくあるよね、それね。
「そのコーンっていうのがこーんなでっかいんだよ!コーンだけに!」
と、両手を広げるイケメン君。
そんなでっかいコーンなんてあるかいっ。
サムい!サム過ぎる!アイス食べても無いのにカラダが冷える!イケメンだからってナニ言っても許されると思うなよっ!
「でさ!カップっていうのが、コーンなにでっかいんだよ!カップだけに!」
なんじゃいそれ。
コーンと一文字も合ってないぞっ!めんどくさいからツッコみませんよっ!
「ね、アイスクリームって、なんでアイスクリームって言うか知ってる?」
ん?凍らせたクリーム、じゃなかったかな?
「凍らせたクリーム、っていう意味なんだってー!ウケるよねー!」
ウケる要素がドコにあるんじゃいっ。
コイツはなかなかにしつこそうですよ!イケメンだからってナニ言っても許されると思うなよっ!
「君はバニラとチョコレートとミントとチョコミントとストロベリーとオレンジと抹茶とカフェオレとミルクティーとこしあんのミックスでいいよねっ?」
俺にナニを食わせる気なんじゃいっ。
ミックスし過ぎだろっ。あと無駄遣いはダメ!絶対!
「銀髪ちゃんはチョコミントが好きってカンジだよね!」
おいっ!あからさまにラーフィアちゃんひいきしてるだろっ!まあいーけど、イケメンだからってナニ言っても許されると思うなよっ!
「あれっ?君のぐるぐるメガネって……」
むむっ!?なんか気付いちゃったかなっ?
「牛乳ビンのフタみたいだねー!ウケるー!」
それを言うなら『牛乳ビンの底』って言うんじゃい!ビンゾコメガネならまだしも、ビンフタメガネなんて視界ゼロだろっ!
「なんか君と話してると楽しいなあ。ねっ!」
俺と一言も喋ってナイだろっ。俺のココロのツッコミが聞こえるのかっ!?
イケメンだからってナニ言っても許されると思うなよっ!
「お待たせ、ヒカリちゃんっ。その人……誰?」
と、ラーフィアちゃんが戻って来ましたよ。
ホッ。
ラーフィアちゃんなら、ナンパなんて軽く
「あっ、お帰りー。今ね、この娘とトモダチになったんだよー!」
なんて言って軽ーい感じで応えるイケメン君!
えっ!?いつの間にトモダチになったの!?声を掛けられてから3分位しか経ってないんですけどっ?
「ヒカリちゃん、そうなの……?」
「えっ?ううん。さっき声かけられたばっかりだよっ?」
俺はふるふるっと、首を横に振った。
銀髪で隠れててラーフィアちゃんの目が見えない。でもこれだけはハッキリわかる!
ご立腹!しかもかなりのご立腹!
「『……失せなさい』」
イケボっ!クールでダンディーなイケてるボイスっ!その声ドコから出してるのラーフィアちゃんっ!?
「えー?ここで知り合ったのも女神様のお導きだよー?そんなコト言わずに!5分でイイから僕にチャンスを下さいっ!ねっ!」
ラーフィアちゃんのイケボに臆するコトなく食い下がるイケメン君!
いやー、真似出来ないわー。ナンパって失敗した時の精神的ダメージってツラくないのかなー?
「『聞こえなかったのかしら?失せなさい』」
くわ!と銀髪の間から目を見開くラーフィアちゃん!
うお!コワイっ!暗い夜道で出会ったら失禁もののド迫力!
魔王を目指すだけあって、めちゃめちゃ迫力ありますよー!
が!
「うわ!カーワイイッ!可愛い娘って、怒った顔も可愛いよねー。ね、僕が君達を笑顔にするから!お願い!3分でイイです!僕にチャンスを!」
「『ヒカリちゃんの前だから抑えてるけど……最後のチャンスをあげる。今すぐ、失せなさいっ』」
「じゃあ、1分!1分でイイですからっ!ね!?君も一緒に説得しよう!」
と、イケメン君が俺の肩に手を置いた瞬間!イヤ刹那ですよ!
「『
びゅわあっ!と一瞬の突風!
「うわっ!?」
と、驚いた声を残してイケメン君がどっかに吹っ飛んでった!オープンカフェから見えなくなった!
お約束的に遥か彼方でキラリと光ったっ!
真横にいた俺は髪がふわっと揺れた程度で全くのノーダメージ!
スゴいっ!これも魔王スキルの一つなのかっ!?
「大丈夫っ!?ヒカリちゃんっ!消毒しよう!今すぐしよう!肩から妊娠しちゃうかもしれないよっ!?」
ラーフィアちゃんっ!?いくら何でも肩から妊娠なんてしませんよっ?
それに!俺が妊娠するなんて心配は皆無ですよー!俺っ!男ですから!
男の
「行こう!消毒にっ!」
「えっ!?あっ」
俺の手をぎゅっと握ってラーフィアちゃんが店の御手洗いへと連れてく、その手の握り方が!
恋人繋ぎ!指と指が絡まり合う恋人繋ぎデスヨー!
ナンパ君を退治して、手を繋いで俺を引っ張る銀髪美少女ラーフィアちゃんっ!
めっちゃカッコいいんですけどー!
キュン!てきたっ!
キュン!てきましたよー!
ニャハー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます