スク水!

 金曜午後の勇者育成プログラム。

 ぶつかり稽古は毎日って訳じゃなく、100あるプログラムからサトナカ先生、じゃない、サトナカ教官が組み合せを構成しているのだとか。

 ザコ達が毎日ぶつかり稽古ってのもキツいですからねっ。


 金曜日のザコレベルB班のプログラムは水泳です。25メートルの室内プール。俺はモチロン初参加。

 やっぱり、水泳は体力的にキツイから週末に設定されてるそうです。

 このプールもなんらかの魔法がかかってて常に殺菌消毒され、水温はちょっと冷たいかな?でも泳いで身体が温まればちょうどいいかな?ってなカンジなのですよ。

 クリーンでエコなプールです。

 イヤー、便利ですな、異世界の魔法!


 それにしても。


 水泳……女子高でスイミング……


 水泳と言えば!水着ですよ水着っ!

 MI!ZU!GI!ムハー!


 神様校長先生のワケわかんない授業の後だから、なんかね!目もココロも癒されますよね!体力的には心配ではありますがっ。


 水着に着替えるのは抵抗があったけど、だがしかし!

 一番最初に『お着替えガチャ』でバニーガールになった時みたいに、股間の『こんもり感』が無いから見た目はホントに女の子にしか見えない!

 これだけはマジで助かるなー。

 決して『コヒカリ君』がちっこいから目立たないとかじゃないんだからねっ!


 ムラサメさんと一緒に更衣室に入った時、これはどうしたものかと冷や汗モノだったけどこんな時スカートは超便利!


 いくら『コヒカリ君』が『謎の黒光くろびかり』スキルで隠れて見られるコトは無いってわかってても、そんなもん見られたく無いですからねっ。


 ただ!ただですよ!


 女子用のスクール水着なんて初めて着ましたよ。肩紐が白で全体が紺色のヤツね。

 学校からの支給品です。ええ、もちろん初ですよ。前の世界でもモチロン着たコトなんて無いですよ。


 異世界の女子高で、男ののこの俺が、女子のスク水を着てますよ。

 変態?イヤ違うっ!見た目は女の子なんだからねっ!推定Bカップのオパイあるし、股間もこんもりしてないし!


 でも、なんですかね、この背徳感というか罪悪感というか、イケナイコトをしてるような後ろめたーい気持ちになるのはっ?

 これがっ!オトナの階段昇るってヤツなんですかねっ?

 なんか違うような気がしないでも無いけど、まあそんなカンジです!


 ゴーグルもバッチリだから、これで俺が超絶美少女だってコトは悟られずに済みますよー!

 でもいつかはバレちゃうだろうなー。男だってコトさえバレなければいいのかな?


 ザコレベルB班の娘達がきゃいきゃい話しながら着替えるのに対し、俺は背中を向けて悶々としてましたよ。

 見てはイケナイ、でも見たいっ!


 おっぱいおっきいのは、ザコ8番のサイトウさん。

 ウエストがほっそいのはザコ4番のフジモトさん。

 お尻がおっきいのは、ザコ9番のトレモワさん。


 コレ全部、聴覚から得た情報です。


 更衣室でも背中を向けてればザコレベルB班の他の女子達を見ちゃうコト無く着替えるコトは出来ますけれども!

 狭い室内で、うら若きオトメ達が柔肌晒して着替えているのかと思うとおっ!

 俺の『コヒカリ君』が『おっ!ヒカリ君!?』になっちゃいますよー!


 ムハー!


「コウダさーん?行こうよー」

「はいっ!?」


 ザコ11番のムラサメさんに呼ばれて、はっと我に返ると。

 あ、悶々としてる間にみんな行っちゃいました。遅れるワケにはいかないもんねっ。サトナカ教官コワイからねっ。


           ◇


「よし、全員揃ったな。ザコレベルB班!まずは準備体操。続いてプログラム7を開始する!」


「「サー!イエッサー!」」


 なんとっ!サトナカ教官も水着です!水着と言ってもあまり色気の無い競泳用のヤツなんだけど、だがしかし!


 サトナカ教官の全身から溢れ出る『たゆんたゆん感』がスゴい!フィルフィーやペリメール様には無いオトナの色気ですよ!


 競泳用の水着の筈なのにめっちゃセクシーなんですよー!

 キュッとくびれたウエストがオパイの『たゆんたゆん感』を倍増!ウエストが細いもんだから、ちょっと屈んだりした時にお尻がね!どぅいん!ってカンジなんですわ!

 ぶっちゃけ、お尻がおっきく見えますけども!

 競泳水着のぬるっとした光沢がぴちっとぱつっと感を強調しちゃってますよー!

 背中が大きく開いたデザインの競泳水着は、お肌の露出面積も大きいです!

 めっちゃセクシーです!イヤらしい目で見るなと言う方が無理ってものです!

 世の中の男性全てが、サトナカ教官の前では前屈み!

 ってくらいのムッチリぴっちりなナイスな水着姿ですよ!


 俺、ザコでよかったっす。

 サトナカ教官の元でなら、ずっとザコでいられるっす。


 なんてコトを思ってたそんな時!


「ザコ12番」

「サー!イエッサー!」


「お前の視線からはよこしまな気を感じるのは気のせいか?」


 ぎくっ!なんて勘が鋭いんですかサトナカ教官!ゴーグル着けてる俺の視線に反応しましたよっ!?

 

「いえっ、そんなっ!ボクは真面目に教官を見つめていただけであります!」


「誰が答えていいと言った?」


 あれっ!?ここもサー!イエッサー!のみですかっ?まるで汚いゴミでも見るような冷たい目がね!こう、ね!キュン!てしますよね!

 それって俺だけじゃ無いハズですよ!


「もう一度聞くぞ。お前の視線からはよこしまな気を感じるのは気のせいか?」


「サー!イエッサー!」


「やはりそうか。人の身体を舐め回すように見るとはいい根性だな、ザコ12番!」


 え!?ブラック!ブラックですよサトナカ教官!

 白い物でも上司が黒と言えばそれは黒!的なアレですよっ!?


「罰としてお前には25メートルを自由形で10本泳いでもらおうか。返事は!」


「サー!イエッサー!」


 ちょ!マジかっ!泳ぎは下手では無かったけどそれは前の世界での話であって、体力測定ザコレベルのこの身体でそんなの泳げる気がしないっ!


 とは言え!泳がないと始まらないし、終わらないっ。ここはもう飛び込むしか無いヤツです!


「ザコ12番、行きまあす!うにゃあっ!」

「あっ!おいっ!?」


 気合いの声と共に、しゅっ!っとアタマから飛び込む俺!

 ん?一瞬、サトナカ教官の声が聞こえた?


 じゃぽん!と華麗にプールにイン!と思いきや!

 飛び込んですぐにプールの底が目の前にっ!


「ぷはあっ!」


 と思わず立ち上がると、水深が浅いっ!70センチくらいしか無いっ。危なかったっ。鼻の頭ちょっとこすったっ。


「このプールは今はワザと水深を浅くしてあるんだ。確認もせずに飛び込む奴があるかっ」


 サトナカ教官はちょっと呆れ顔ですよ。


「はいっ。スミマセンっ」


 と、サトナカ教官を見上げるとっ。

 うお!

 ネトゲとかエロゲとかえっちな少年マンガとかえっちなwebの神絵でしか見たコトの無いような競泳水着のローアングルのサトナカ先生のナイスボディーが目の前にぃっ!


 むちっと白いフトモモ!下から見上げるたゆんたゆんなオパイの破壊力たるや!そして汚いゴミでも見るようなサトナカ教官の俺を見下すような目があ!

 キュンってきますよお!


 ムハー!


 俺、ザコでよかったっす。

 サトナカ教官の元でなら、ずっとザコでいられるっす。


 なんてコトを再び思ったその時に!


「やはりお前の視線からはよこしまでイヤらしい何かを感じるが気のせいか?ザコ12番」


「えっ!?まさかそんなっ!サトナカ教官をイヤらしい目でなんて見てませんであります!」


「誰が口をきいていいと言った?もう一度聞くぞ。やはりお前の視線からはよこしまな何かを感じるが気のせいか?ザコ12番」


 うおおっ!ブラック!ブラック教官!

 白い碁石が全部黒い碁石に変わっちゃうようなブラック感!そんな盤面見たコト無いけど、まあそんなカンジです!


 サトナカ教官が、ざぷんとプールの中に降り立ち、俺の目の前に立ちはだかる!


「私が直々にその腐った性根を叩き直してやる。覚悟はいいか?ザコ12番」


 俺を見下ろすサトナカ教官の目がっ!

 なんか、獲物を捕らえた女豹というか、獲物を捕らえた蛇女ラミアというか、獲物を捕らえた蜘蛛女アラクネみたいな恍惚としたちょっとエッチなカンジの目になってるんですけどっ!?

 

 えっ!?俺、ナニされるの!?


「この命綱ハーネスを装着しろ」


 と、たゆったゆな胸の谷間からずるーりと取り出してポイッと俺に投げた赤い命綱ハーネス

 ドコからナニを出しちゃってくれてるんですかっ!

 って、これはっ!

 首輪!誰が見たって、首輪!犬の首輪!だって『DOG』ってハッキリ書いてある!人の首に犬用の首輪って、それもうアレですよ!

 プレイですよ!サトナカ教官ってそういうご趣味なんですかっ!?

 たゆったゆな胸の谷間から取り出されたばっかりだから、ほんのりぬくいんですけどっ。


「首輪を着けたら水中に膝をつけ。返事はっ?」


「サー!イエッサー!」


 命綱ハーネスじゃなくって首輪って言っちゃったよサトナカ教官!

 言われた通りに犬用の首輪を着けて水中に膝をつくと。

 なんとっ!

 水面がサトナカ教官の股下辺りになるんだけども、それがっ!エロいっ!

 俺の目の前にっ!サトナカ教官のむっちむちの白い太ももと股間があっ!

 プールの水がちゃぷちゃぷとサトナカ教官の白いムッチリ太ももと遊んでます!


 俺、水になりたいっす。

 サトナカ教官の太ももと戯れる水になりたいっす。

 

 なんて思った瞬間ですよ!


「行くぞザコ12番。プールの中をお散歩だ!遅れるなよ!」


 勢い良くプールの中を走り出すサトナカ教官!その走る速度がっ!速いっ!

 引きずられるようにして、じゃなくて、引きずり回されてます!男ののこの俺がプールの中を引きずり回されてますよー!

 首っ!首がヤバいっ!

 なんてパワーなんですかサトナカ教官!


「どうだ楽しいか楽しいだろうザコ12番!フフフっ!あははっ!」


「ごぼぼぼっ!」


 あははって、サトナカ教官っ!! 息がっ!息ができましぇんっ!

 だがしかし!悪いコトばかりではない!

 プールの中を引き回されつつ、俺の目線の先には!水面を上下するサトナカ教官のムッチリお尻がっ!

 エロいっ!成熟したオトナのエロス!上下左右にたゆゆんたゆゆんと揺れてるんですよー!

 

 ムハー!


 サトナカ教官のスゴいパワーで、あっという間にプールを往復!その間に呼吸できたのは数回!

 これはっ!

 溺れるっ!マジでっ!


「ほうら、もう一往復行こうか!」


 って、二往復目!?


「ごぼぼぶべぼっ!?」


 完全に楽しんじゃってますよ、サトナカ教官っ!俺っ!マジで溺れそうっ!


「サトナカ教官っ!コウダさんが溺れてますっ!」

「なに?あ、本当だ。これは、私とした事が」


 俺を引きずり回して悦に入るサトナカ教官を止めたのはムラサメさん。

 たっ、助かったっ!ありがとうムラサメさんっ!

 だがここはっ!意識を失ったフリで待避!


 プハー!


「おい、しっかりしろ、ザコ12番!返事をしろ、ザコ12番!」 


 プールサイドに俺を寝かせ、サトナカ教官が目を開けない俺の頬をペチペチと優しく叩く。

 でもねっ、こんな時くらい名前で呼んでくれても良いのではっ?

 ザコレベルB班の皆も心配そうに俺を取り囲んで見てくれてる。


「コウダさんっコウダさんっ!!死んじゃダメだようごおおうっ」


 と、泣いちゃってるのはムラサメさん。やっぱイイコですよ!目を閉じてるから見えないけど、きっと鼻水出てますよー!


「水を飲んだのかも知れないな。人工呼吸をしてみるか」


 えっ!?まさかの人工呼吸!というコトは!俺の初キスですよ!

 初キスがサトナカ教官!

 悪くないっ!むしろウェルカムですよ歳上のオトナの女性!

 水着で人工呼吸シチュ!

 あるあるですよ!アニメとかマンガとか小説とかweb小説とかではテッパンネタですよー!


 ムハー!


 サトナカ教官が気道確保の為に俺の顎を上に向け。

 おおっ!徐々にサトナカ教官の麗しいクチビルが近付いてっ!


 次の瞬間!


 ばちーん!

「ぶあっ!?」

「目が覚めたかザコ12番」


 と、サトナカ教官の冷ややかな声!


 ビンタ!ビンタされたっ!

 ただのビンタじゃない超強烈なビンタ!イヤ、これはもう、力士の張り手とか格闘家の掌底レベルの超絶ビンタ!

 首が360度回転しちゃうトコロでしたよっ!?


「どういうつもりか知らんが、私の前で溺れたフリをするとはいい度胸だな、ザコ12番……」


 うわ!いつにも増して冷たくて冷ややかで冷酷なサトナカ教官の薄汚いゴミを見下す冷たい目!見られたゴミは凍っちゃう氷の目!

 意味がだだかぶってますけど、まあそんなカンジです!


「えっ!?あっ!?いえそんなっ!溺れたフリなんてっ!」


「誰が答えていいと言った?」


 これはっ!出たよ出ましたよまたしてもブラックなサトナカ教官ですよ!


「もう一度言うぞザコ12番。どういうつもりか知らんが、私の前で溺れたフリをするとはいい度胸だな、ザコ12番」


「さっ……サー!イエッサー!」


「やはりそうかザコ12番。私の目を欺こうとはいい度胸だザコ12番。だが少しだけ褒めてやるザコ12番。戦いの場に置いて相手を欺き、虚を突くのは立派な戦術の一つだからなザコ12番」


「サー!イエッサー!」


 なんかよくわかんないけど、ザコザコ言われながら褒められた!?なんだこれ!?


「ではもう一度お散歩だ、ザコ12番!行くぞっ!」


 えええっ!溺れそうになったのはホントなのにっ!またやるんですか『プールでお散歩プレイ』!


 俺っ!このままサトナカ教官のペットになっちゃいそうですよー!

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