勇者育成プログラム、スタート!
神様校長先生の地獄のエンドレスループご教授からやっとこさ抜け出して、ちょっと遅れてザコレベルB班での勇者育成プログラムスタートですよ。
いやー、俺の他にもいるんだな、ザコレベル。ちょっとホッとするわー。
だがしかし!ここから這い上がっていかないと!ヤンキー女神を更正させてイケメン勇者になる為に!足元ばっかり見てたら上に行けませんからね!
だっさい緑色のジャージに着替えてグラウンドへ。
ザコレベルB班の担当者はなんと!
サトナカ先生ですよー!ちょっと嬉しいんですけど!
優しく厳しく指導していただきたいです!
サトナカ先生は昨日と同じジャージ姿。
すらっと、むちっとオトナの色気!お尻から太ももにかけてのむっちむちラインがたまらんです!
昨日は気にならなかったのにね!ムハー!
ザコレベルB班は俺を含めて12名。
青色ジャージの2年生が2人いる。うーん。そうですか。なかなか這い上がれないってコトかな……
まずは自己紹介。
横並びの皆の前、サトナカ先生の隣に立つとちんちくりんなのが際立ちますよ!
「今日からこの班に新しいザコが加入する。新ザコ、挨拶だ」
おいっ!サトナカ先生っ!
ザコって。まあザコですけど!
「1年2組のコウダヒカリです!よろしくお願いシマス!」
ぱらぱらとまばらな拍手。まあね、そんなもんですよね!
「今日からビシバシ鍛えてやる。死をも厭わぬ覚悟でついて来い。返事は!」
「はいっ!サトナカ先生!」
「違う!サトナカ先生では無い!サトナカ教官と呼べ!」
「はいっ!サトナカ教官っ!」
「誰がサトナカ教官と呼んでいいと言った!?」
え!?今、そう呼べって言ったのにっ?
「私が許可すると言うまでサトナカ教官と呼ぶ事は許可しない!返事は!」
「はいっ!サトナカ先生!」
「サトナカ先生では無い!サトナカ教官と呼べ!」
「はいっ!サトナカ教官っ!」
「誰がサトナカ教官と呼んでいいと言った!?」
え!?
これはっ!地獄!無限ループ地獄!神様校長先生を上回る理不尽でブラックな地獄!
俺は何て応えたらイインデスカっ!?どう言えば正解なのっ!?
でもでも!サトナカ先生の薄汚いゴミでも見るような冷たい目で見下されると、なんかね!こうね!キュン!てなるのはなんなんですかねっ?
「もう一度言う。私の事はサトナカ教官と呼べっ。返事は!」
俺はっ!試されている!これは無限ループから抜け出せるかどうかの試練!
なーんか見たコトありますよネトゲでね!
こういう軍隊っぽい指揮官が大好物な返事、それはっ!
「
「誰がサトナカ教官と呼んでいいと言った!?だが惜しい返事だ。もう一度言うぞ。私の事はサトナカ教官と呼べ!返事は!」
もうアレしか無いですよ!
「サー!イエッサー!」
「よし!サトナカ教官と呼ぶ事を許可する!」
やったっ!正解!これは嬉しい!
「よろしくお願いしますっ!サトナカ教官!」
「誰がサトナカ教官と呼んでいいと言った!?」
あれっ!?またですかっ!?返事は『サー!イエッサー!』のみデスカっ?
「もう一度言う。私の事はサトナカ教官と呼べ。返事は!」
「サー!イエッサー!」
「よし!5分以内に『サー!イエッサー!』に気付いたのはお前が初めてだよ、ヒカリ。大抵の者は10分と持たず泣き出すからな」
10分もこのやり取りを!?そりゃまあ泣き出しますよ。フツーに考えて16歳の女の子は『サー!イエッサー!』なんて知らないですよ!
「勇者を目指すのならば精神面も鍛えねばならん。その一貫だと認識しておくように。決して私がアホだから同じ事を繰り返しているという訳ではないのだ。返事は!」
「サー!イエッサー!」
「お前は今日から『ザコ12番』だ。この勇者育成コースザコレベルB班にいる限り名前は無いと思っておけ。返事は!」
「サー!イエッサー!」
マジですか名前もナシですか。名前で呼ばれず番号でっ。なんかシュージンのようですよー!これも精神的にツラいかもっ。
「よし。それでは本日のプログラムを開始する!」
「「サー!イエッサー!」」
みんな揃って大きな返事!
やっぱり正解でしたよ『サー!イエッサー!』なんなんですかねっ?サトナカ先生ってミリタリーオタクなのかなっ?
◇
ようやくスタートした勇者育成プログラム。まずはペアとなってのプログラム1!
俺とペアを組んだのは、同じクラスのムラサメヒミコさん。この娘、俺より背が低い。
勇者育成コースでムラサメヒミコって、いかにも女勇者!って感じのカッコいい名前だからすぐ覚えられたんだ。
俺よりちっこいってのがまたカワイイですな!ちなみにムラサメさんは『ザコ11番』です。
クラスでの自己紹介は俺がちょろっとしただけだから、クラスメートの顔と名前は全くと言っていいほどわからない。
わかるのは委員長のタナカさんくらいかな?
まあ、これから覚えていく予定ですよ!
プログラム1は『精神鍛練』ってなってるけど、さてさてどんなプログラムなのかなっ?
「よろしくお願いしますね。ムラサメさん!」
生徒同士なら名前や姓で呼びあっても大丈夫。そりゃそうだよなー。生徒同士でザコザコ言っていいワケが無い!
俺よりちっこいムラサメさん。
サラサラ黒髪のおかっぱ頭。ちっちゃくて前髪パッツン
ところが!
「コウダヒカリ……おまえの秘密を知っている……」
え!?
いきなり!?いきなりの強烈なボディブロー!
え!?なんでっ!?俺が男だってコトを知ってるっ!?
クリティカリヒットですよ痛恨の一撃ですよ!サクっとザクッと袈裟斬りですよドキドキです!これも精神鍛練の一貫なのかっ?
でもでも!ここはしらばっくれますよ!
「あの……なんのコトデスカっ?」
「そのぐるぐるメガネは、だてメガネ」
えっ?まあ、そうなんですけどねっ。それだけかなっ?だったら大したコトはナイ!
「……おまえの秘密を知っている……」
えっ?まだ何かあるんデスカっ!?
「おまえのかーちゃん、でーべーそー」
……は?
「おまえのとーちゃん、サラリーマーン」
ええまあ、サラリーマンでしたけども。なんですかねこの幼稚園児でさえ言わないような悪口は。
「あの……うち、両親とも死んじゃっていないんだよねー。ボク独りなんだよ」
「……えっ?……ホントに?」
「あ、うん。交通事故で、ね」
ウソは言ってないですよっ!俺もその時に一緒に死んじゃったからねっ。こうしてここで転生してますけどね!
「ごべ……っ」
ごべ?なに?
「ごべんなざいいいっ!わだしっ、知らなぐてえええっ」
えっ?泣いちゃったっ?なんだ、めっちゃイイコじゃないですかっ?
ムラサメさんは大粒の涙をぽろぽろこぼしてマジ泣きですよ!ガン泣きですよ!あらあら鼻水まで出ちゃってますよー!
「コウダざんっぼっちなんてっかわいぞうごおおっ」
おい、ぼっちって。にしても、涙腺ユル過ぎですよムラサメさん!
「ちょっ、ムラサメさんっ!落ち着いてっ!ね?ねっ?」
「よくやったザコ12番!」
と、背後からサトナカ教官の大きな声!
え!?俺ですかっ?
「勇者たる者、相手を泣かすくらいの反撃力と口撃力は持たねばならん!舌戦を制する者が世界を制すると言っても過言ではないのだからな!」
えー!口ゲンカ強いヤツが世界を制するってコトですかっ?この世界の勇者ってそんなんでいいのっ!?
「他のザコどもを見てみろ!罵り蔑み、こき下ろしの応酬だぞ!」
サトナカ教官に言われてふと周りを見てみるとっ。
「デーブ!ブース!あんたの足は臭いのよ!お風呂入ってんのっ!?あー、くっさー!」
とか。
「あなたは鏡を見た事があるのかしら?イヤあるわけがないなぜならば!あなたが鏡を見ただけでその鏡が割れてしまうから!鏡にすら見放される醜女なのよあなたは!」
とか。
「キサマは勇者になれないなれるワケが無い。キサマは勇者になれないなれるワケが無い。キサマは勇者になれないなれるワケが無い。キサマは勇者になれないなれるワケが無い。キサマは勇者になれないなれるワケが無いのよ、勇者になるなんて夢は寝てから見なさいよ」
とか。
「ナニその髪型アタマオカシイよねナニその顔アタマオカシイよねナニそのでっかいおっぱいアタマオカシイよねナニそのジャージアタマオカシイよね」
とかさあっ!
でもその緑ジャージ、1年生みんなお揃いですよ。言ってる本人も着てますよ。
エ、エグいっ!悪口の嵐!精神的ダメージの応酬っ!
勇者がそんなんでいいのっ!?こんなのメンタル鍛える前に病んでしまうっ!
「どうだザコ12番!ゾクゾクするだろうっ?」
しませんよ!言葉責めでゾクゾクするなんて、どんだけドSなんですかっ!?
サトナカ教官の表情がどことなく恍惚としてるのは気のせいデスカっ!?
「よし!ウォーミングアップは終わりだ!続いてプログラム2に移行する!遅れを取るなよ、ザコども!」
「「サー!イエッサー!」」
言いたくもない悪口合戦のせいで、体を動かしたワケじゃ無いのになんかみんなぐったりしてますよー!
こーゆーのも勇者に必要なんですかねっ?
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