ラーフィアちゃんとの初ランチ!

 この学校には至るところにベンチが設置されてて、天気の良い日にはそこで友達や数人のグループでお弁当を食べる、なんてありふれた光景が繰り広げられる。

 生徒人数が少ないからベンチ争奪戦なんてのも起こらない。

 空いてるベンチもちらほらと。


 なんかこうして見ると、ほんとフツーの学校だなー。勇者とか女神とか魔王を育成してるようには全然見えないよ。


 2日目のお昼休み。今日は外のベンチでラーフィアちゃんとの初ランチです!

 朝、教室の入り口でラーフィアちゃんが待っててくれて、まさかのランチのご予約ですよ!

 わざわざ約束する為だけに待っててくれたんですよっ!

 めっちゃ嬉しいんですけど!


 ドキドキですよ、女の子と二人でランチ!

 昨日はペリメール様と。で、今日はラーフィアちゃん。

 夢のようなハナシじゃないですかっ!?どんなギャルゲーなんですかね、コレはっ!


 前の世界では1ヶ月経ってもクラスの女子とまともに会話なんて出来なかったからなー。

 そんな俺が初日はキレイな女神様と。二日目は銀髪美少女と!二日連続で女子とらんらんランチですよ!

 ムハー!

 見た目だけは俺も美少女なんですけどねっ!


           ◇


 ラーフィアちゃんに指定されたベンチで待つ事数分。たたたっと駆けて来ましたよ銀髪美少女ラーフィアちゃん!

 

「ヒカリちゃーん!」


 俺の名前を呼びながら手を振って駆けて来る銀髪美少女!

 長い青みがかった銀髪が左右に揺れて、太陽の光を反射しててめっちゃキレイですよ!

 マジですか。俺、こんな美少女と一緒にランチしていいんですかっ。


「ごめんねっ、待った?」


 うお!銀髪美少女からこの言葉を聞けるなんてっ!アニメとかマンガとかラノベとかweb小説とかギャルゲーの中だけかと思ってましたよ、そのセリフ!

 俺、感動です!ぐるぐるメガネが涙で曇りそうですよー!


「私から誘ったのに遅れるなんてダメダメだよねっ……ごめんなさいっ」


 ラーフィアちゃんは、ホントに申し訳なさそうにペコリと頭を下げてくれたんだけども。

 なんてよく出来たイイコなんですかラーフィアちゃん!

 俺には真似出来ない領域ですよ!勉強になります!


「そんなっ!気にしないで、ラーフィアちゃんっ。ボクも今来たばっかりだからっ」


 パープーな俺が咄嗟に思い浮かぶ言葉なんてこれくらいですよ。

 ラーフィアちゃんは、ほっとした表情で微笑んでくれて。


「良かったっ。ヒカリちゃんに嫌われちゃったら、私っ、飛び降りるトコロだったよー!」


 えっ。

 ラーフィアちゃん?

 一体ドコから飛び降りる気デスカっ?

 

「やだっ!冗談だよう。あれっ?笑えなかったっ?スベっちゃった?」


「あっ、だよねっ。あははー」


 これがウィットに富んだジョシコーセイのジョークなんですかっ?ちょいビックリです!


           ◇


《 ラーフィアの思惑 》


 ヒカリちゃんとランチっ!


 嬉しいなっ。あーん、てしてあげたいなっ。あーん、てして欲しいなっ。

 さすがにいきなりは無理かなあ。ダメ元で挑戦してみよう!

 あとあと。これは聞いておきたい。

 さりげなーく、なにげなーく、ヒカリちゃんが『こっち側』か聞き出さないとっ。

 ううん。たとえ『こっち側』じゃ無くても!

 私は!ヒカリちゃんと結ばれるんだ!


 がんばるぞっ。私っ!おー!

 

           ◇


「私は家から通ってるんだけどね、お母さんが朝早くてお弁当作る時間が無いの。それで、私がお母さんと私の分の2つ作ってるの。お父さんは同僚と外食するからいらない、って」


 そう言って16歳の女子らしいカワイイ巾着袋から取り出したのは。 


 ラーフィアちゃんの手作りお弁当ですよ!

 TE!DU!KU!RI!

 16歳の銀髪美少女の手作り弁当を拝めるなんてっ!素直に感動ですよ!

 

「うわー!スゴいね、ラーフィアちゃん!女子力高い!」

 

「え、そうかなあ。エヘヘっ」


 エヘヘって!16歳の銀髪美少女の照れ笑いっ!


 KAWAEEEE!


 嬉し恥ずかしのランチタイムですよー!


「ヒカリちゃんのは寮のお弁当なんでしょ?美味しそうだよねっ。ね、私のタコさんウインナーとヒカリちゃんのどれか一つ、交換しないっ?」


「えっ!うん!じゃあ……から揚げでいいかな?」


「いいのっ?やったぁ♪」


 うおうっ!やったぁ♪って!銀髪美少女が『やったぁ♪』ってー!

 これはっ!乙女達のお弁当イベントの一つ!おかずトレード!男同士でもする事あったけど、なんていうかね、きゃっきゃウフフなカンジがね!

 しかも!タコさんウインナーですよっ?

 海の中でうねうねしてるタコじゃ無いですよ!タコの形を模したウインナーですよおおお!

 16歳の女子が作ったタコさんウインナー!

 それだけでも至高です!


「はいっ、あーん♡」


「えっ!?」


「あっ……ごめん。イヤだった?」


 イヤイヤイヤイヤ!知り合って2日目で『あーん♡』て!展開早すぎじゃないですかっ!?アリなんですかっ!?

 少なくとも前の世界では100パーセンツ!考えられない展開ですよ俺の中ではね!


「え、あのっ!イヤじゃない、よっ?ちょっとビックリしただけでっ」


「じゃあ……してもいい?」


 ぬお!銀髪美少女の上目遣い!

 YABEEEE!KAWAEEEE!こんなの一体、誰が断れるってゆーんですかああ!


「あっ……うん」


「はいっ、あーん♡」


 あーん、した俺の口の中にタコさんウインナーがっ!

 入りました!

 口の中で踊ってますよ、タコ踊りですよー!


 UMEEEEE!最高です!ウインナーってこんなに美味かったのかあー!


「すっごい美味しいよラーフィアちゃん!」


「ほんとっ?嬉しいなっ♪じゃあ、今度はヒカリちゃんの番ねっ」


「えっ!?」


「から揚げ、あーん、して欲しいなっ」


 マジですかあああっ!俺がっ!ラーフィアちゃんに!銀髪美少女に、あーん、てするんですかああっ!?お口の中に!インしていいんですかあっ!?

 俺!捕まるんじゃないの!?とある組織に連行されちゃったりするんじゃないのっ?

 ひんむかれて吊るしあげられちゃったりしない!?


 ニコニコしながらラーフィアちゃんが俺の方を向き。


「はいっ、あー♡」


 あー♡てなんですか口の開け方までカワイイってもう有罪ですよ涙でぐるぐるメガネが曇りますよー!


「じゃあ……はいっ」


 うっすら震えますよ俺の手先!

 ぱくっ、とから揚げを食するラーフィアちゃん。お口をもぐもぐしてるだけで、可愛いっ!

 

「んふふっ♡美味しいっ!」


 くあっ!『んふふっ♡』ってナニ!?初めて聞いたっ!アニメでもマンガでもゲームでも小説でもweb小説でもギャルゲでもネトゲでもVRでも無い、リアルの16歳の女子の『んふふっ♡』ですよ!


 こんな事があっていいのかああー!


 ただのお弁当タイムが、カワイイ女子と二人きりで食べるってだけでこんなにドキドキするものなんですかあああ!

 しかもっ!何気に間接キッス!

 ラーフィアちゃんは平然としてるけど、俺は心臓ばっくばくなんですけどっ!


 とりあえず落ち着け、俺っ!


 ひっひっふうう。

 ひっひっふうう。


 はー、はー。アタマの毛細血管プチっと切れるとこでしたよっ。


           ◇


 その後もきゃっきゃしながらお弁当を食べ終えて、じゅるるとお茶を飲んでた時だった。


「あのね、ヒカリちゃん。ヒカリちゃんはどんなタイプの男子が好みなの?」


「ぶふっ!」


「ヒカリちゃんっ!?大丈夫っ?」


 いきなりで唐突で突然なラーフィアちゃんの思いもよらない質問に驚いて、飲みかけのお茶吹いちゃった!


 男子の好み!?俺のっ!?


 イヤイヤイヤイヤ!無い!無いわー!

 どんなにイケメンだろうが、ムキムキマッチョだろうが、俺に男の好みは無いですよっ!


「えっ、いきなり、どうしたの、ラーフィアちゃんっ?」


「ホラ、ヒカリちゃんカワイイから。きっと男子にモテるかな、って……ぐるぐるメガネで隠してても、わかる人にはわかるんだからね?」


 うむむ、マジですかバレてましたかそーですか。

 だがしかし、ご安心召されいラーフィアちゃん。俺に男色の趣味は無いですよ。

 BLアニメとかBLマンガとかでさえ否定はしませんけれども、なるべく見たくない派です!


 ん?でも、ラーフィアちゃんは俺が男って知らないハズ。女の子って思ってるハズ。

 てことは、これはっ……?

 ガールズトークの内の一つ『コイバナ』に発展するヤツなのではっ?

 うむむ、コイバナデスカ。男のの俺には無縁ですよ。

 ここはちゃんと答えておかないとね。


「うーん……ボクは男子となんて無理だなあ」


「カッコいい男子とデートしたいとか……」

「えー?やだよう」


「頭ナデナデして欲しいとか」

「無理無理!ムリです!」


「壁ドン!とか?」

「ええー?ゼッタイやだっ!」


 壁ドンなんて俺が女の子にしてみたいヤツですよ。でもそれはっ!イケメンしかやっちゃダメなんですよー!

 

「そっか……良かった!」

 ――ヒカリちゃんは『こっち側』だっ!


「ん?良かった?」


「んっ?ううん!なんでもないのっ!」


 何故かラーフィアちゃんが小さくコブシを握ってガッツポーズを作ってる。

 この話の流れの中で嬉しいコトでもあったのかな?

 ……どこですかね?うむむ、謎多きお年頃の乙女ですよラーフィアちゃん!

 

「じゃあ、ラーフィアちゃんは?どんな男子がタイプなの?」


 至極当然の質問返しに、にこやかだったラーフィアちゃんの笑顔が一瞬で凍りついた。


 え、なんで?


「……男なんてクソムシこの世から消えろってカンジでしょ女の子を性欲のハケ口くらいにしか思って無いようなゴミどもだよただの淫欲魔獣だよオトコなんて滅べ」


 無表情に一点を見つめて、ぶつぶつと呪文のように男への辛辣な言葉を吐き出すラーフィアちゃん!

 こんな反応するなんて思ってもみなかったからビックリですよ!

 

「かっ、過激だね、ラーフィアちゃん」


 カワイイお口が『へ』の字になっちゃってます!この様子だとよっぽどオトコ嫌いなんだな、ラーフィアちゃん。


 これはっ!


 俺が男だってバレた日にはっ!マジで吊し上げられてしまうっ!『コヒカリ君』が大変なコトになる!


 黙して語らずが最善策ですよ!


 ビックリしてる俺を見て、はっ、と我に返るラーフィアちゃん。


「あっ、ごめんね。つい……」

「えっ!ううん!全然ダイジョブだよっ?」


 なんて言いつつ俺は内心ドキドキなんですけどねっ。色んな意味でね!

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