体力測定!
お昼休みが終了し、午後からはいよいよ勇者育成コースのプログラム始動!ですよー!
ちょっと、イヤ、かなり楽しみだったんだけど。
やっぱりありましたよ体力測定!
俺は編入生だから、まずは基礎体力を測定。そんでもって体力や能力に応じたレベルの班に分けられるって流れだ。
何故かフィルフィーも一緒に体力測定。
女神なんだからやる必要無いんじゃないの?ペリメール様は講師として編入してるからやらないみたいだ。
フィルフィーは赤い上下のジャージ。当然のように袖捲りと裾捲り。
ヤンキーに赤ジャージは良く似合う!
俺は濃い緑のジャージ。3年生は赤。2年生は青。1年生はこの濃い緑色が指定なんだけど、この色は不人気極まり無いようです。
まあ、俺からすれば、地味で目立たない良い色ですよ!
「だっりいなあ。こんなのやる意味あんのかよ?で?どれからやんの?」
だりいとか言いながら、ちゃんとやるんだなフィルフィーは。
体力測定を受けるのは新編入生の俺とフィルフィー、監督員としてエフレフさん。じゃない、サトナカ先生。
端の尖ったメガネがキラリと光ってます。先生もジャージだけど、スラリと背が高いから全然ダサくない!
着こなしの差ってヤツですかね?
まあ、3人だから気楽でいいね!
俺とフィルフィー、二人共にバインダーを渡されて各項目をチェック。
握力測定、反復横跳び、50メートル走、ボール遠投、垂直跳び、立ち幅跳び、前屈、上体反らし、などなど。
ふむふむ。高校入学した時の体力測定そのまんま、って感じだな。
コレ見る限りでは前の世界と代わり映えしない。なーんか、こう『異世界感』に欠けるというか。
判定は得点制ではなく、優、可、ザコの三段階。
ザコ!?
ザコってひどくない!?思わず二度見しちゃったよ。
でも、この項目なら!優は無理でも可の山を築き上げる自信はありますよ!優なんて一個あればいいんですよー!
ごくごくフツーの体力測定とは言え。フィルフィーはなんかやらかすと思ってたら案の定ですよ!
まず、握力測定では。
「うらああっ!」
バキッ!と音を立てる握力計。
「あ、壊れた」
違います。それ、壊したって言うんです。
ボール投げでは。
「うらああっ!」
ばひゅーん!と、すっ飛んでいくボール。
「あれ?見えなくなった」
ボールは遥か彼方に消えました。
垂直跳びでは。
「うらああっ」
バキッ!
「あ、壊れた」
違います。それ、壊したって言うんです。計測板に軽く触れればいいだけなのに、なんで叩き壊すのさ。
とまあ、全てにおいて計測不能の数値を叩き出してくれましたよ。さすがですよヤンキー女神。
反復横跳びなんて、分身の術みたいにフィルフィーが3人に見えたからね!
しかもナゼか笑いながら反復横び。
フィルフィーが3人て考えたらゾッとするよっ。
俺はと言えば。
ボールを投げてみれば。
へろへろ、ぽとっ。10メートルも飛ばず、てんてんっと転がっていくボールを追いかける俺。カッコわるっ!
50メートル走では。
とてとてとてっ。どてっ。と短い足がもつれて転ぶ俺。
立ち幅跳びでは。
うにゃあっ、なんてマヌケな掛け声と共に勢い良く前に飛び出した筈が、まさかの1メートル届かず。
握力はどんなに頑張っても平均値以下。
反復横跳びでも足がもつれて転ぶ始末。
前屈と上体反らしだけがまあまあ良かった。
ひ……非力すぎるっ!
この身体、ヘボいっ!マジでヘボいっ!
ぐるぐるメガネ外したらめっちゃ美少女ってだけで、体力とか筋力が全然無い!
こんな非力な俺が勇者育成コース……
……見える。
見えますよ嘲笑する勇者育成コースのセンパイ達が俺を冷たい目で見る顔がっ!
『ザコね』
『ザコだね』
『ザコだよね』
ってさ!
くあっ!ツラいっ!
そんな俺に追い討ちをかける項目が!
勇者育成コースならではの測定項目!
それはっ!剣の素振り!
ありましたよ、勇者ならではの剣の素振りですよ!やっぱ、勇者に剣は必要不可欠ですからねー!
まずは上段の構えからの袈裟斬り!
中段の構えからの突き!
最後に下段の構えからの横凪ぎ!
きっ、キツイ!冗談抜きにキツイっ!剣がハンパ無く重い!こんなの非力な俺の腕で振り回すなんて無理!勢いあまって身体持ってかれそうになる!
「なんだよヒカリぃ。ダッセエなあ。こんなもんも振れねーのかあ?」
なんて言ってフィルフィーはブンブン振り回してくれちゃってますよ、重い剣がまるで竹刀みたいですよ!
楽しみにしてた筈の体力測定のズタぼろの結果に、男の
フィルフィーの結果……なんて聞くまでも無いか。計測不能のバケモンっぷりを見せつけてくれちゃいましたよ。
サトナカ先生は、フィルフィーのバケモンっぷりと俺のザコっぷりに驚いた様子も見せずに淡々と仕事をこなしてた。
うーん、オトナ!って感じですよ。
「あー、それでは判定結果を伝える。まず、コウダヒカリ。ザコレベルだな」
「えっ?」
「ザコレベルだな。ザコレベル」
イヤ、二回言わなくても聞こえてます。聞き返す為にえっ?って言ったんじゃ無いんです。
一瞬、ワケわかんなくなっちゃったんですよー!
「いーいザコっぷりだったよなあ、ヒカリぃ?」
ニターリと悪魔の微笑みですよヤンキー女神!
元はと言えばフィルフィーの悪行の仕業っ!
俺は!再び感じている!
イケメン勇者になりたいっていう俺の願いを無視して、非力な女の子に、もとい男の
感じているんだあ!
あ、だからってどうするコトもできないんですけどね。歯向かったトコロでタコ殴りでしょうからねっ!
「えー。フィルフィーマート=チェインストア」
「うっす!」
「お前もザコレベルだ」
「え!?なんで!?なんでっすか!?ナットクいかないっすよー!」
「全てにおいて計測不能だからだ。お前は元々女神なんだから、
「えー!だからってザコレベルなんすかー!?ひどくねーっすかー!?」
ウルサイですよヤンキー女神。サトナカ先生に向かってブーブー文句たれまくりですよ。これはきっと怒られちゃうヤツ!
俺は心の中で願います!
どうかサトナカ先生!今朝のようにフィルフィーの尾てい骨に正拳突きを!ってね!
「じゃあ、もう一回やるっすよー!全部『優』とってやるっす!
「ウルサイ」
ごづっ!
「あだっ!」
頭突きっ!
サトナカ先生の強烈な頭突きがフィルフィーに炸裂!膝から崩れ落ちるフィルフィー!
地面に片膝ついて涙目になってますよ。
……面白い。
サトナカ先生って、ホントに何者?あのフィルフィーを軽くいなしてる。怒らせてはイケナイ人ですよ!
「コウダヒカリは、明日から勇者育成コースのザコレベルB班に入ってもらう」
「……はい」
ザコレベルB班……なんてド底辺な響きっ。でも、A班もあるってコトは俺の他にもザコレベルがいるんだな。
「魔王育成コースに班分けは無いから、フィルフィーマートはそのまま合流すればいい」
「……うっす」
ちょっとヘコんでますよヤンキー女神。
いいね!
魔王育成コースは全学年合わせても10人だから班分けなんて無いんだな。
え、じゃあ、なんでフィルフィーは体力測定したのかな?
なんてコトを思ってたら、サトナカ先生がザコレベル判定にちょっと落ち込む俺の元に歩み寄ってきて、唐突に名前を呼んだ。
「ヒカリ」
「はいっ?」
サトナカ先生に高圧的な態度で呼び捨てにされるってなんかこう、キュン!てなるんですけど、この気持ちは何なんですかね?
「ザコレベルだからって気にするな。私はここのOBだが、私も最初はザコレベルだったんだよ」
「えっ!?サトナカ先生がっ?」
「ああ。ザコレベルから這い上がるか、ザコはザコのままか。それを決めるのはお前自身だよ、ヒカリ」
キラリと光る端の尖ったメガネ!右斜め下から見上げるサトナカ先生の横顔がっ!
めちゃめちゃカッコいい!キュンてきた!
スラリと背が高くって、寡黙で真面目で厳しくて、見捨てるような事は言わないなんてっ!
なんて男前な先生なんですかっ。
好きになっちゃいそうですよー!
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