らんらんランチタイム!

 ラーフィアちゃんは2年生の教室へ戻り、俺は自分の教室に戻って午前中の授業を受けた。

 まあ、そつなくつつがなくってカンジでしたよ。元の世界の高1の授業とそんなにも変わらない感じ。

 授業の話を面白おかしく語れるヤツっているのかな?

 気になる科目が幾つかあったけど、それはまあ楽しみにしておきますよ!


 で。編入初日の昼休み。


「ヒカリ様ぁ?いらっしゃいますかあ?」


 お弁当持ってひょこんと1年生の教室にやった来たペリメール様。

 なんだかさざめく1年2組の教室内。

 そりゃそうだよなー。

 ぐるぐるメガネに膝下スカートのだっさい地味子ジミコの元に、キラキラと輝くような銀髪のめっちゃ美人な女神様が訪ねて来るなんてね。

 思いもよりませんよね!


 例えるならそう!

 ムッサイくっさい男子柔道部に女子新体操部のエース的ないい匂いの女子がキター!みたいな!

 ムッサイくっさい男子相撲部に女子バレー部のセッター的ないい匂いの女子がキター!みたいな!

 ムッサイくっさい男子剣道部に女子バドミントン部の主将的ないい匂いの女子がキター!みたいな!

 女子達がナニしに来たかは謎ですけども!


 いや別に、このクラスがムッサイくっさいって訳じゃ無いんですけどねっ!


「ヒカリ様っお久しゅうございますですわっ」


 すすいっと俺の元に歩み寄ってキュッと手を握ってくれましたよペリメール様。

 お久しゅうって。3時間くらい前に顔見たじゃないですかっ。

 過保護が過ぎやしませんかっ?


「いかがでしたか午前中はっ?お腹痛くなったり吐き気がしたり目眩がしたりしませんでしたかっ?ですわっ」


 イヤ、どんだけメンタル弱いんですか、俺。まあ、強い方では無いですけども。


「あ、いえ、大丈夫ですよ?心配して下さってるんですよねっ。ありがとうございますっ」


「さすがですわヒカリ様っ!ではでは午後の体力測定に備えてお昼御飯を一緒に頂きましょうですわっ」


 そうなんです!

 やっぱりあります体力測定!ちょっと楽しみですよ!


「あの、フィルフィーはどうしてます?いきなり全校集会でやらかしてましたけど」


「フィルフィーさんは校長室にお呼び出しですわっ。まったく、同じ女神として恥ずかしい限りですわっ」


 プンスカとご立腹ですよペリメール様。でも本気で怒ってるというよりは呆れてるって感じだな。


「あの、ペリメール様……1年生の教室って気にならないんですか?」


「ん?何故ですかっですわっ?」


 小首を傾げて不思議そうな顔ですよ。

 サラサラの銀髪が睫毛にかかって、それを人差し指で直す仕草がめっちゃカワイイんですけどっ。


「あの、すごーく見られてるんですけど……」


 お昼になって何人かは外に出ていったけど教室内には20人程度が残ってて、3人グループとか4人グループの子達が、ちらちらと俺とペリメール様の2ショットを観察ですよ。


 うむむ……見られている……


「私はヒカリ様とお昼をご一緒したいだけなのですが……1年生とか3年生とかは関係ないのでは?ですわっ」


 えー!なんですかソレめっちゃ嬉しいんですけど!少なくとも俺は3年生の教室に行く度胸は無いですよ!

 ただ、この状況だと1年とか3年とか学年の問題じゃなくて、現役の女神様がちんちくりんのだっさい地味子ジミコの元にいる、ってコトが注目されているのではと思うのですよ!


 つまりは!

 俺、目立っちゃってるのでは?


 てコトなんですよー!


 なんだか幻聴が聞こえてきますよヒソヒソとっ!


『あのちんちくりん、女神様と親しそうだわ何なのかしら?』

『ぐるぐるメガネのクセに何なのかしら?』

『ちょっとひんむいてみましょうかっ?』

『そうね吊し上げてみましょうかっ』


 っていう幻聴がっ!俺っ!ひんむかれる!女子高で追い剥ぎにあってしまうっ!

 晒されるんですか晒されるんですね『コヒカリ君』をっ!

 見えますよ『黒光りするコヒカリ君』を木の棒で突っつくクラスメイト達の姿がっ!


『あら、コレなんなのかしら?』

『黒く光っててキモいわね』

『なんか変形してきてない?』

『この子、女の子じゃ無いんじゃない?』


 ってな幻聴までもっ!

 

「ヒカリ様は私と一緒ではおイヤですか?ですわ……」


「えっ?」


 ハッと我に返ってみると、ペリメール様のテンションダダ下がりですよっ!めっちゃ、しゅーん、てしてますよっ!


「あっ、イヤ!そんなっ!そんなコトありませんようっ!嬉しいですよっ?」


「……本当ですか?ですわ……」


 うおうっ!ペリメール様の上目遣いは破壊力バツグンですよっ!ちょっと不安げな表情がキュンと来ますよー!


「本当ですようっ!ペリメール様に嘘なんてつけませんっ」


「それならば!一緒にお弁当をいただきましょう!ですわっ」


 って事で、ペリメール様とニコニコランチタイムになりました。


 それにしても。ペリメール様って、世話好きというか、面倒見がいいというか、ホント優しいお姉さんですよ。

 ホントはフィルフィーの監視役のハズなんだけどなー。


 あ、そうそう。ラーフィアちゃんの事、話してなかったな。


「あの、ペリメール様。さっき、ラーフィア=リンデルさんて子とお友達になったんですよ」


「あら!あらあらまあまあ!ラフィーさんと!?私の従姉妹なのですわっ。ラフィーさんたら、会いに来てくれないなんて水くさいですわっ」


 この言いぶりだと、ペリメール様はラーフィアちゃんと同じ高校って知らなかったみたいだな。

 神様のイタズラってヤツかな?

 ラフィーって愛称はカワイイですな!


「職員室に行く途中で、廊下の角で偶然ぶつかっちゃって」


「まあ!おケガはございませんでしたか?ですわっ」


「あ、ハイ。それは二人とも大丈夫です。あの、ラーフィアちゃんは魔王育成コースなんですよね。ちょっとビックリしちゃいました」


「え、あ、そう、ですわねっ、ですわっ」


 ん?なんか目が泳いでますよペリメール様。

 なんか訳アリっぽい?


「ペリメール様?」


「あの、その、ちょっと、幼い頃に……」


 珍しくごにょごにょとハッキリしませんよ?うーん。あまり突っ込んだ事は聞かない方が良さそうだな。


「ラーフィアちゃん、ペリメール様に似てますよね。スゴく可愛いかったですよ!」


「えっ?可愛いっ?あら!イヤですわっ!いえ、あの、ラフィーさんが可愛いのは存じ上げておりますがですわっ!私まで可愛いだなんてそんなあっですわっ」


 めっちゃあたふたしてますよペリメール様。それがカワイイんですよー!

 キレイなお姉さんが照れてる姿なんて、マジでアニメとかマンガとかゲームの中でしか見たコト無いですからねっ!


「ヒカリ様だって美少女なのに、ちょっともったいないと思いますですわっ」


「ボクはいいんです。地味に目立たずが心地よいんですよー」


「ヒカリ様がそうおっしゃるのなら……ですわっ」


 思いがけないペリメール様とのランチタイムはめっちゃ嬉しかったけど、うーん、ちょっと注目を集めてしまったな。


 明日から場所を変えてみようかな?

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