今日から俺は、女子高生!?

「きゃあああああっですわあああっ」


 え、ナニ!?ペリメール様の悲鳴っ!?

 目覚まし時計より強烈です!

 わたわたばたばたと慌ててベッドから飛び起きましたよペリメール様っ。

 ヘンな虫でもいたのかな?


「フィフィフィフィっ!フィルフィーさんっ!どうしてあなたが私のベッドにいるんでしゅかあっ!」


 フィルフィーがベッドに?

 ある意味、ヘンな虫でした。


「あー?うるせーなあ。別にいーだろーがよー。久し振りに一緒に寝たかっただけだっつーの」


「えっ!?」


「昔はよく一緒に寝たろー?」


「だからと言ってっ!後ろからおっぱい鷲掴みにするなんてヒドイですわっ!オマケにっ、もっ、モミモミするなんてハレンチ極まり無しですわっ!」


「あ?いーだろ別に。触りたかったんだから」


「えっ!?」


「ペリ子のはふわふわでプルプルでやわこいからなー!キモチいいんだわ!抱き心地サイコー!」


 と、フィルフィーが右手の親指を立てたけど。


「にゃにゃにゃっ!にゃにを言ってるんでしゅかああっ!!ですわあああっ」


 ばちーん!

「ぶあっ!?」


 朝っぱらから炸裂ですよペリメール様の平手打ちでの口封じ。

 フィルフィーが穿いてるスウェットが半分脱げておパンツ丸見えでひっくり返ってベッドから落ちましたよ。

 ペリメール様は真っ赤になって照れてるご様子です。フィルフィーも赤くなってますよ、口の周りが。

 ……面白い。


 まだ朝の6時前ですよ。朝っぱらから賑やかだなー。


「きっ、気を取り直してっ。さあさあ皆さん起きましょうですわっ。朝食は6時30分からでしたわねっ!お身支度を整えて行きましょうヒカリ様!最初が肝心ですからねですわっ」


「あー?だりーなー。いーじゃん、このままで」


 クローゼットに入ってた俺とペリメール様の寝巻きはごく普通の水玉パジャマだったのに、フィルフィーのクローゼットに入ってた寝巻きは上下グレーのスウェット。


 エフレフさんが準備したんだろうけど、何故スウェット?ヤンキーだからかな?これがまたいいやつれ具合でよく似合ってます。


「女神ともあろう者が何を言ってるんですかですわっ!さあさあヒカリ様も!制服に着替えましょう!」

 

「あのあのっ!少しだけ待って下さい!深呼吸すれば落ち着きますからっ!」


「深呼吸?具合でもよろしく無いのですか?」


「いえ違いますっ!朝の健康法です!ずっと続けてたので!」


 咄嗟に誤魔化したのには理由ワケがあるんです!

 初日の朝っぱらから『コヒカリ君』が『おっ!?ヒカリ君!?』になっちゃってます!

 ここは深呼吸ですよそれしか思い浮かびませんよ!どうか悟られませんようにっ!

 特にフィルフィーにはあっ!


「ひっひっふうう、ひっひっふうう」


 落ち着け落ち着くんだ『おっ!?ヒカリ君!?』ふううー。


「……ヒカリ。なにやってんだ?」


「えっ!?朝の呼吸法です!身体にいいんですよっ?」


「素晴らしいですわヒカリ様っ!私もご一緒させて頂きたいですわっ!ほらフィルフィーさんもっ!」


「あー?だりーなあ。で?どうやんの?」


 だりいとか言いながらノってきましたよヤンキー女神。


「それじゃあ、心を静めるイメージでゆっくりとーお、はい!」

 と、俺の合図で始まる呼吸法。


「ひっひっふうう、ひっひっふうう」

「ひっひっふうう、ひっひっふうう」

「ひっひっふうう、ひっひっふうう」


 男のと女神二人が、朝からラマーズ呼吸法で精神統一。


 なんなんですかね、このシュールな絵面えづらは。

 でも、おかげさまで『おっ!?ヒカリ君!?』は『コヒカリ君』に戻りましたけれども!

 ……毎朝のようにコレやんなきゃいけないの!?前途は多難ですよっ。


「なるほど心が落ち着いて軽やかになったような気がいたしますですわっ。さすがヒカリ様ですわっ!さてさてではでは!お着替えいたしましょう、ヒカリ様っ」


 張り切ってますよペリメール様。

 新生活が心から楽しいんだろうなー。見てて心強いというか微笑ましいというか。

 ステキなお姉さんですよ!


 ペリメール様が鼻歌混じりでクローゼットから制服を取り出して、自身の身体にあてがって俺に見せてくれた。


「いかがですか、ヒカリ様っ。私に似合っていますかっ?ですわっ」


 ブレザーにネクタイ、チェックのスカート、これはっ!定番中の定番ですよめちゃめちゃ似合ってますよステキです!

 エッチなお店のお姉さん感なんてゼロですよ!

 女神様の制服姿が拝めるなんて、なんてマーベラスなんですかっ!


「スっゴく似合ってます!ペリメール様!」


「うふふっ。ありがとうございますですわヒカリ様っ」


 うふふって笑ってくれましたよペリメール様。ホントにステキなお姉さんです。

 最初に出会った時の高笑いとか、今は全然出ないからなー。


「ヒカリ様も是非是非!きっとお似合いですわよっ」


 ペリメール様、めっちゃカワイイ。きゃいきゃいとはしゃぐ姿はホントに『女子!』ってカンジです。

 制服かー。まさかまた着る事になろうとは。でも今度は女子の制服。ううむ。

 とりあえず出してみよう。


 クローゼットの内側には大きな姿見鏡があって、身嗜みをチェックするのにとても便利。

 制服を取り出してどんな感じになるかチェックしてみると……


 これはっ!


 自分で言うのもなんですけども!


 めちゃめちゃカワイイっ!


 ただ身体にブレザーの制服あてがってみただけなのに、何ですか誰ですかこの美少女はっ!


 ちょっと大きめの上着は手の平が袖に隠れる感じ。チェックのスカートはかなり膝上でミニスカート感がハンパない。これ、校則に引っ掛からないの!?


 ちょっと小芝居やってみよう。


 左手をグーにして頬に当て小首をこくっと傾げて言ってみる。


「よろしくお願いしますっ」


 可愛いっ!


 今度は左手でチェキ!からのウインクで言ってみる。


「がんばりますっ」


 可愛いっ!


 ではでは次はっ。


 ごくごくフツーににっこり笑顔で言ってみる。


「ありがとっ♡」


 カワイイっっ!YABEEEE!!


 ヤバいです。俺、マジで美少女です。エロゲのパッケージに負けないくらいです。

 ん?例えが貧相だったかな?


「なんだよノリノリだなあヒカリぃ。なんだかんだでその姿が気に入ってるみてーだなっ」


「えっ!?そんなっコトは……っ!」


 図星を突いてやったぜっ。

 そんな表情でヤンキー女神フィルフィーが、ニターリと悪魔の微笑みを向けてきます。

 ううむ。完全否定出来ない……この状況を少しずつ楽しみだしてる俺がいる。


 だがしかし!これは……美少女過ぎて目立ってしまうのではっ?


 いや、あのね!『目立ちたくないフラグ』じゃ無いですよ!?『押すなよ絶対に押すなよ』的なアレじゃないんだからねっ!


 目立たない為には!何かアイテムを!


 メガネ……そう!ぐるぐるメガネ!地味に目立たなくなる唯一の手段ですよコレですよ!

 アニメやマンガやゲームや同人誌に出てくるような、だっさいぐるぐるメガネを!


 あと、ミニスカートはヤバい!

 ちょっと想像してみよう!

 風にイタズラでめくれあがるスカート!チラチラ見える『黒光りのコヒカリ君』!


 YABEEEE!


 目立つべからずっ!


 ダサくても構わないから膝下スカートは必須!

 おパンツ穿いてれば大丈夫かもだけど、膝上スカートはさすがに抵抗ありますよ!

 

 ぐるぐるメガネと膝下スカート!


 この二つのアイテムをなんとかして手にいれないとっ!


 俺はふと思い出した。ペリメール様が何も無い空間から大きな鏡を出現させた事を。

 その鏡はペリメール様が叩き割っちゃったんだけどね。

 ちょっと、イヤかなりダサいけどお願いしてみよう!そうしよう!


「あのあのっペリメール様っ!お願いがあるんですけどっ!」


「はい?どうしましたヒカリ様?」


「あの、ボク、目立つの苦手というか、目立ちたく無いんですっ!目立つの防止する為にぐるぐるメガネと膝下スカートが欲しいんですっ! 

 女子高に男が紛れ込んでるってだけで、本当はもうアウトですよねっ?でも!勇者育成コースってどんなのか気になるし、せっかく神様に用意して頂いた学生生活をフイにしたく無いんですっ!

 その為にもっ!ボクにぐるぐるメガネと膝下スカートを下さいっ!是非!」

 

「ぐるぐるメガネ……超絶美少女のお顔が隠れてしまいますですわよ?」


「いいんです!目立つワケにはいかないのです!」


「うーん。ヒカリ様がそこまでおっしゃるのなら……了解いたしましたですわっ」


「ありがとうございますっペリメール様っ!」


 ペリメール様が虚空に四角い枠を描き、パチン!と指を鳴らすと。


 しゅっと現れましたよ、ぐるぐるメガネ!アニメとかマンガで見るような『ぐるぐるメガネ』そのままです!

 膝下スカートもいい感じで地味です!

 これはっ!この地味度合いはっ!

 地味オブ地味の最強の組み合わせと言っても過言ではないのではっ!?


「さすがはペリメール様ですっ!ありがとうございますっ!」


「ヒカリ様のお頼み事ですもの。ないがしろになんて出来ませんですわっ」


 無事、ぐるぐるメガネと膝下スカートをゲット!いいんです。地味に地味に。目立ってはいけない。

 男だとバレてはいけないのだからっ。

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