新しい俺は、男の娘《コ》!?

 改めて俺は自分の姿を確認してみた。

 自分の顔が見れないのは残念だけど、後で鏡でもあれば見てみよう。


 髪型はうなじが隠れるくらいのゆるふわ金髪セミショート。

 前髪にはお約束のカワイイアホ毛付き。 

 この、天パでもないゆるふわパーマはなんて名前なんですかね?まあ、それです。

 メイドカチューシャは当たり前のようにフリルがついてます。


 きょうびどこにでも見かけるメイド服は斬新さの欠片もないけど、古くもなく新しくもなく。

 それだけ完成度が高いって事なんだろう。


 黒を基調としたゴスロリメイドってヤツだ。

 たぶん。

 一言でメイド服って言っても色々種類があるらしく、詳しい事はわかんない。

 フレンチとか?クラシックとか?

 俺の着てるのはなんて名前なのかな?スカート短いからクラシックではないな。

 アニメで『そんなのはコスプレだ!!本物じゃない!』っつって怒ってたメガネのお姉さんがいたなー。


 白の長袖ブラウスの袖はフリル付き。

 前のボタン部分にもフリル付き。

 ふわっと横に広がった黒のミニスカートにも裾の部分にフリル付き。

 白いエプロンにも、もちろんフリル付き。

 フリルはお給仕の際に邪魔ではないんですかねっ?

 メイドは好きだし、アニメのフィギュアもいくつか持ってる。

 まさか自分が着るとは。


 生きてた頃に一度はメイド喫茶行っときゃよかったなー。

 勉強の為にね!


 オパイは控えめの推定Aカップ。


 ……Bくらいかな?


 うーん……


 ……オパイがある。


 ……ふむ。


 ……あとで触ってみよう。


 いや違うからねっ!変な意味はないからねっ!確認ですよ確認!よしんば触っても自分のオパイだし問題無し!


 触るなら!初めてオパイを触るならさっ!


 ん?


 ◇ 触るなら

    初めてオパイを

     触るなら   ◇ ヒカリ


 初めてオパイを触る人とはさ!

 やっぱこう、どっきどきのシチュエーションがいいよね!

 放課後の誰もいない教室とか、自分の部屋とか、彼女の部屋とかさっ!

 彼女いないけど!


 ラッキースケベもありですけども!

 でもねー。


 曲がり角でパン咥えた女の子とぶつかって触っちゃうとか。

 階段で足滑らせて一緒に転がり落ちて触っちゃうとか。

 教室のドア開けた拍子に触っちゃうとか。

 なかなか無いって、そんなシチュ!

 

 ていうかね、冷静に考えるとね。

 オパイ触ってるんだよねー、すでに。


 かーさんのだけどね!赤ちゃんの時にね!


 気を取り直して。


 白のニーハイは膝上10センチくらいでガーターベルトで止められている。絶対領域は俺の目から見ても完璧だ。

 黒のハーフブーツがアンバランスなような気がしないでもないけど、これはこれでアリなんだろう。


 丈の短いスカートは、前にかがんだり、何か拾おうとしてしゃがんだりしたら見えちゃいますよね、おパンツが!

 女の子ってよくこんなスースーするの履いてられるなー。


 誰が見ても『カワイイ』と洩らすであろうゴスロリメイド服。それを、俺が着ている。いや、着させられている。


 下着は……トランクスじゃないな、この感覚。ブリーフかボクサーかな?


 ……あとで見てみよう。


 いや、変な意味はないよ!?女神様の手前、自分でスカートめくって下着確認なんて出来ませんって!


 これ、カワイイですよ!

 この格好、カワイイですけども!俺の望んだ姿では断じて、無い!

 美少女ゴスロリメイドになりたいなんて一言も言ってない!


「………ん?」


 俺は、ある『違和感』に気が付いた。

 違和感と言いつつも股間のこの、なんというか、控えめながらも『ここにいるよ!』と存在を主張する感覚は……

 生きてた頃に16年間、連れ添ってきた『アイツ』の感覚だ。


「あの……女の子にした、って言いましたよね」


「誰が見たって女の子だろうが」


 フィルフィーマートは至極満足、ご満悦なドヤ顔だ。


「あの……ついてるっぽいんですけど……」

「あ?なにがだよ?」


「男にしか無い、『ナニ』です……」

「ナニって……『ナニ』か?」


「はい……その、『ナニ』です」


「見せろ」


「え!?」


「聞こえなかったのか見せろっつてんだよ、ド底辺!内股で膝と膝くっつけてもじもじしながら両手でスカートたくし上げやがれ!」


「女神様!?なんかその要求ヤバくないですかっ?」


「せっかく美少女にしてやったんだ、『そのくらいはお安いご用ですご主人様♡』だろうが!」


 女神様の長くてしなやかな腕が俺のフリフリスカートをわしっ!と捕えた。

 口より先に手が出るタイプかと思いきや、『喋りながら手が出る』タイプだ、この女神様!


「男なら堂々と見せろやっ!」

「あっいや!めくらないでええっ!」


 女の子にした、って言っておきながら『男なら』ってどーゆーコト!?あと、俺、なんか喋り方まで変わってるんですけど!?


「なにがいや!だ!ド底辺のド変態が!その姿はテメェが望んだ姿だからなっ!」


「無理矢理この格好にしたのは女神様ですよねっ!?あっ!やだあっ!」


「イイ声出すじゃねえかよ、ド底辺のクセによ……っ」


 そう言って女神フィルフィーマートがニタリと口の端を吊り上げ舌を出す。

 目付きの悪さも加わって、その顔は『ワル』そのもの!


 ほんと女神の皮かぶった悪魔だよ……


「おとなしく見せやがれっオラぁ!」

「うわあっ!誰かぁっ!助けてくださぁいっ!」


 無理矢理俺のフリフリスカートをめくろうとするフィルフィーマート!


 とんでもない素行不良の女神様だっ!


 生まれて初めて……いや、死んで転生してるから、この魂で初めて、って言った方がいいのかな?俺は『助けて下さい』を口にした。


「お呼びですかあ?」


 突然、足元から女のひとの声。


 しゅるしゅる、しゅぽん!


「えっ!?きゃあっ!」


 きゃあ!って!おい俺っ!?

 足元の異変に驚いて思わず尻もちをつく俺は、慌ててめくれそうになったスカートを抑えた。

 太ももの間を両手で抑える女の子の仕草そのままにさ!


 軽快な音を立てて俺とフィルフィーマートとの間を割くように現れたのは……

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