あっ!女神様っ!え、女神様っ!?

 妄想全開中の俺の目の前に現れたのは……


 なんとも見目麗しいオネーさん!


 サラサラ金髪ロングヘア!

 しゅっとした小顔に切れ長の瞳は海の青!

 透き通るような白い肌にはノーブラでおパンツのみのスケスケローブ!え、これネグリジェ!?


 やらしーなー……


 歩く度にオパイがぷるんて揺れてます。揺れてるんです!

 すらりと長い手足にはいくつかの金色のアクセサリー。

 そして、長い脚がさらに長く見えるハイヒール!

 スケスケ衣装のハズなのに、大事なトコロは謎の光で見えましぇん。よくできてるわー!


 それにしても、なんか俺の目線がやたらと低い。というか動けないんだけど。


 地面から女のひとを見上げる感じだ。いや、めちゃめちゃローアングルですよ、コレ!

 でも見えない!謎の光でキワどく見えない!それでもエロい!めっちゃエロい!

 生きてた頃にだって、女のひとの脚っ!こんなムチムチ太ももっ!ローアングルで見たことないから!

 うわー………キレーなおみ足ですよー……

 ありがたやーありがたやー……


 って、おい!これって……これってさ!この女のひとってさ!


「コウダヒカリ、だな?」


「はいっ!」


 俺は元気良く返事した。めっちゃいい返事した。いい返事ができたのは、やっぱバイトのおかげかな?


「わたしは女神。この部屋に来た者に道を標し導く役割を担っている者だ」


 ……来た!……女神様っ!ホントに来たよ来ちゃったよー!生きてて良かったし、死んで良かったー!


 あっ、今のは不謹慎だったかなっ!

 死んで良かった、なんて言っちゃダメなんだからねっ!


 に、しても!


 これまたキレイな声ですよ、女神様!エンジェルボイスってゆーんですかね?あ、この場合、女神様だからゴッデスボイスって言った方がいいのかなっ?


「待ってましたよ、女神様っ!しょーもない前世のコトは忘れてレッツエンジョイ異世界ライフですよー!」


 はしゃいでいる。俺はかつてないほどのハイテンションではしゃいでいる。だってさー!異世界勇者になれるんだよ!?チートでモテモテでハーレムでアハンでウフンな異世界勇者! 

 小躍りしたくもなるってものですよ!動けないけど!


「今、お前は訳あって別の姿になっている。お前の望む姿を言ってみるがいい」


 キター!!!

 

「ハイ!では遠慮なく述べさせていただきますっ!

 まず身長は185センチ、体重は65キロの細マッチョで!

 髪型は黒髪ショートのツンツンヘアー!

 あ、ツンツンてわかります?パンクロッカーとかそーゆーのじゃなくてですねえ、こう、シャキーン!で、シュッて感じのアレです!

 もちろんイケメンイケボで!ここは女神様のセンスにお任せしようかと!

 あとですねえ、足長なのは言うまでもありませんけど、腕も長くして欲しいんです!

 あっ、長くっても、オランウータンとかそんなんじゃないですよ?包容力アップの為にちょい長めにして欲しいんです!

 ざくっとサクッと言っちゃえば!

 長身小顔のイケメンくん!

 細マッチョの小尻クン!です!」


 よくもまあ、ここまで一気にスラスラと出るもんだと自分で感心してしまう。

 普段から妄想ばっかりしてるからねー!得意分野なのですよ!


 あれ?なんか静かだな女神様?


 俺が喋ってる間に、だんだん顔が赤くなってったような気がしたけど…


「…………チッ……」


「……ん?」


「……ヤメた……」


「……はい?」


 何かの聞き間違いではなく、間違いなく、女神様は『ヤメた』と言った。

 舌打ちのオマケつきで。


「あれっ?あのー……」


「ああ!?なんっだテメェ、さっきからイヤらしい目でジロジロ見やがってキショいヤロウだなっ!」


「クチ悪っ!えっ、と……女神様……ですよね?」


「だったらどうした、ド底辺。このアタシに指図すんのか!?このド底辺が!!」


 なんでいきなりキレだした?

 なにも指図はしてないし、女神様ですよね?って聞いただけなのにこの反応。

 ひどくない?


「ヒトのカラダなめ回すように見やがってこのド底辺が!」


「だって、そんなスケスケな衣装をお召しですからっ!目のやり場に困りますっ!」


「だったら四つん這いになって地べたでも見てやがれ、このド底辺が!」


「それは土下座って言うんじゃ……」


「つべこべうるせえな、ド底辺が!シメるぞクソド底辺が!」


 ……ヤ、ヤンキー女神……四つん這いになりたくても動けないんですけど!


 この女神様、よくよく見れば輝く金髪は染められているようだ。その証拠に、髪の根元が黒い。いわゆる『プリン』ってヤツだ。 

 地毛は黒髪なんだな?にしても、最初にプリンて言った人、いい感性してるよねー。見たままプリンなんだもん。

 切れ長の涼しげな目元ってのも言い直そう。


 三白眼で目付きが悪い。


 ぶっちゃけどこにでも誰にでもメンチ切ってる感がハンパない。その辺の石ころにすらメンチ切ってんじゃないの!?ってくらいの目付きの悪さ。

 もしかして近眼なのかな?


 ナイスボディーだけは嘘が無く、スケスケ衣装からこぼれそうな胸が女神様が少しでも動く度に、たぷたぷ揺れてるんですよ、さっきから!

 揺れるんですよ、たぷたぷと!

 揺れるの!

 だって下着ブラジャーつけて無いですもん!


「え……ボク、転生するんじゃないんですかっ!?異世界転生してハッピーライフな人生送れるんじゃないんですかっ!?」


 ライフと人生の意味がかぶってるけど、そんなコトはどうでもいい。ヤンキー女神にビビって『ボク』なんて言っちゃうし。ホントは『俺』だし。

 

「えっ?えっ?望む姿を言ってみろって言いましたよね!?」


 尚も食い下がる俺に対して、女神様は……


「ガタガタうるっせえなド底辺!」


 ぶしゅ!


 殴られた。俺、間違いなく殴られた。幽体とか魂の類いのモンじゃないの!?殴られたよ、俺!しかも女神様に!なんか、ミカン殴り潰したような音したんですけど!?


「あっ、やっべ。ツブしちった」


 おいっ!女神様っ!?


「まあ、いっか」


 ちょっ!女神様っ!?

 

 どうやら俺はツブされたようだ。ミカンを潰した音がしたって、俺、ミカンそのものだったみたいだ。ミカンの中に魂が入ってて、そこから出たから、ツブれたミカンが今、俺の目の前に見えてるんだな。


 ……ぐっちゃぐちゃなんですけど。


「こら、フィルフィーマート」

 ごす!

「いたっ!」


 女神様は、何処からともなく現れた白ひげのじいさんにグーで脳天殴られた。


 いいね!もっと懲らしめてやって下さいよっ!

 白ひげのじいさんて、見るからに神様っぽいけど……


「なにするんすか痛いじゃないっすか!神様!」


「お前はこの少年の魂の入れ物を殴り潰しておいて心が痛まぬのか、フィルフィーマートよ」


 白ひげのじいさん、やっぱ神様だったのか。にしても、女神様、フィルフィーマートっていう名前なんだ……コンビニみたいな名前だな……


「だってド底辺っすよ!?」


「だってでも、ド底辺でも、ゴミクズでも魂は皆等しいと言っておろうが」


 おい神様、ゴミクズって。


 神様が『いかにも』な杖で『いかにも』な仕草をすると、俺は元の姿に戻った。

 ミカンだけど。ミカンに魂が仮入れされてたんだな。……なぜ、ミカン?


「地上にあるコンビニのように広く大勢の人々の役に立つように、必要とされるようにとの想いを込めて『フィルフィーマート』と名付けたのだが……素行不良になってしまうとは情けない」


 名前の由来……やっぱコンビニだったのか……

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