第12話 伝わる温もり
「ごめん…智耶」
お姉ちゃんは私達の知らない所で、智耶さんと会っていた。
「別に良いけど、何かあったのか?晴輝とうまくいっているんだろう?」
「う…ん…その事なんだけど……」
二人は話をする。
「私…晴輝君に無理させてるのかな?好きだけど…でも…複雑で…お互い違うって…そう感じてるの…私自身も…もしかすると無理してるのかな?」
「それは何かの思い過ごしじゃないのか?」
「そうかな?」
「そうだって!」
そんなある日の事。
「夏奈さん…俺達…距離…おきませんか?」
俺は夏奈さんに、そう言葉を告げた。
「えっ?」
「夏奈さんも俺も……何処か…ボタンを掛け違いしている気がするから…」
「…晴輝…君…そう……分かったわ」
そんな事があっている事など知らない私は、その日の自分のバイト帰り、携帯で話をしながら帰っている途中、私は歩道橋でボンヤリしている晴輝を見掛けた。
私は見て見ぬふりをした。
そして、私は少し話をして電話を切った。
少しして――――
「は・る・き」
ピトッ
熱い缶コーヒーを晴輝の頬に当てる。
「熱っ!」
「アハハ…ゴメーン」
「お前なぁ〜」
呆れたような中、ちょっとお怒りモードの晴輝。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃねーよ!」
やっぱり不機嫌になる晴輝。
「じゃあ、病院に行く?」
私は、お構いなしに話を続ける。
「その必要はねーよ!」
「そう?それよりどうかした?ヘコヘコだね?お姉ちゃんとラブラブデートだったんでしょう?」
「ラブラブ…ねぇ……」
プシュ
缶コーヒーを開ける晴輝。
一口飲む晴輝の姿。
「苦っ!てめぇ…これブラックじゃねーかっ!人がブルーに入っている時に意地悪はよせよなっ!」
「ブルーだからもっとブルーになるようにブラックコーヒー」
「はあぁぁっ!?意味分かんねーし!」
「とことんブルーになった方が良いよ」
「あのなぁ〜」
「そう怒らないの!飲めるかな?と思って買って来たんだから」
他の予備の缶コーヒーを渡す。
「これなら飲めるでしょう?」
「ああ、まあブラックよりマシ」
「あっ!それともこっちがいい?」
「いや、こっちで…って…一緒じゃねーかよ!」
私はクスクス笑いながら、わざとからかうように目の前に同じ缶コーヒーを差し出し意地悪をする。
そんな私も一口ブラックコーヒーを飲んでみる。
「うわっ!苦っ!お子ちゃまには無理だ!でも大人味なんつって」
「……バーカ」
他愛もない話をする俺達のやり取り
久しぶりの会話をする
コイツなりの励ましなのだろう?
何となく
そんな気がした
「で?どうなの?お姉ちゃんとうまくいってるんでしょう?両想いの HAPPYEND の先に見える2人の未来はバージンロードなんでしょう?」
「バージンロードって…結婚とか、そんなまだ先の事は……考える段階でもねーし…第一、別れた…つーか距離おいた」
「そっか…まあ…そういうのも必要かもね。お姉ちゃんの事、良く分かんなくなったって言ってたしね」
「まあな…」
「両想いなんだし、また、より戻せる確率あるし」
「だと良いけど……」
「前向き、前向き!」
「そういうお前は兄貴とどうなの?」
「進展なし!」
「えっ?」
「別に好きって気持ちがある訳でもないし嫌いじゃないんだけど付き合うとか付き合わないとか、ゆっくりと付き合うとか、想いがないのってどうなんだろう?と思って」
「…そっか」
私達は時間を忘れる位まで会話をする。
「…寒っ!…良い加減帰ろうっと!晴輝はまだ……」
スッと私の手を握る晴輝。
ドキン
さりげない晴輝の優しさに胸が大きく跳ねた。
「冷たっ!お前の手冷たすぎ!」
「心が優しいから。晴輝は、心が冷たいから温かいんだよ」
「なっ…!」
バッと晴輝は繋いでいた手を離した。
「あっ!」
「もう繋がねーっ!」
「えっ?…まあ別に私達は付き合っているわけじゃないから良いけど」
私は足早に歩き始める。
「あっ!おいっ!真裕」
グイッと掴まれ転びそうになる。
「わっ!もう何?突然掴むなっつーの!」
スッと再び私の手を握る晴輝。
ドキン
再び私の胸が大きく跳ねた。
そして、そのまま私達は手を繫いで街中を帰る。
アイツから伝わる
手の温もりが
とても優しく
温かく感じた
不思議と落ち着く自分がいる事
私は
この
好きだった………
「」
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