第7話 晴輝の優しさに・・・

「真裕ちゃん」



同じバイト先の男の子。


大塚 竜一(おおつか りゅういち)18歳。


バイトが休みの彼が訪れていた。

私の帰る時間のタイミングを見計らっていたかのように呼び止められた。




「お疲れ様です。あれ?どうしたんですか?」


「お疲れ様。ちょっと時間良いかな?」


「はい」


「単刀直入に言う。俺と付き合って欲しい。好きなんだ。君の事」




ドキッ


突然の告白。


私は驚くのと同時に胸が高鳴る。




「いや…でも…私…」

「誰か好きな人いる?それとも彼氏がいるとか?」


「いいえ…いないんですけど…」

「恋人からとは言わないから、友達からとりあえずどうかな?」


「友達から…ですか?」

「お互いの事を理解した上で構わないから」

「分かりました」



私は友達から付き合ってみる事にした。


時折デートをし、相手の事を知る。





――― そして





「先輩。私と恋人として、お付き合いして下さい」


「えっ!?良いの?」

「はい」

「じゃあ改めて宜しく」

「はい!お願いします」




私達は正式に付き合う事にした。





それから数カ月過ぎたある日のデートの日。



「先輩、受験とかで忙しいのに私なんかとデートして大丈夫なんですか?」


「大丈夫。安心して」




その日のデートの途中 ――――




「竜一」



一人の女の子が声をかけてきた。




「美幸」




≪呼び捨て?…友達?≫





「あっ!ごめん…もしかしてデートの途中だったりする?」


「ああ」




彼女は分かって声をかけてきたのか定かではないけど私と彼を交互に見ながら彼女は尋ねた。


私は正直に複雑だった。




「じゃあ後でメールする」

「ああ」



別れる二人。




「…先輩…?」

「ごめん。今の友達でクラスメイトの子」

「…そう…ですか…」

「疑ってる?」

「いいえ」

「そう?」



「…でも…正直、複雑です」

「えっ?」

「ごめんなさいっ!やっぱり嘘は付けません!」

「真裕ちゃん…?」


「帰ります!私…こういう展開っていうか例え本当にクラスメイトとか友達とかって言われた所で、正直、信じられなくて…彼女に後でじゃなくて今すぐ連絡してあげて下さい!失礼します!」




私はそこから走り去った。




「あっ!真裕ちゃんっ!」





―――― 次の日 ――――




「真裕ちゃん」



クラスメイトの女子生徒が話し掛けてくる。



「何?」

「昨日、男の子といる所を見掛けたんだけど…彼氏?」


「えっ?あ、うん…」

「じゃあ、年上の車持ちの彼氏は?」


「あー、あの人はお姉ちゃんの彼氏で私の彼氏じゃなくて…タイミング逃して言いそびれてしまって…ごめん…誤解させたみたいで」


「ううん、その事は、晴輝君が話してくれて誤解は解けてたから」


「えっ!?」




意外な言葉が返ってきて私は晴輝を見ると偶然に目が合ってしまい、すぐ目を反らす。




「そうだったんだ」


「私こそごめん…誤解してしまって…。それより、あの男の子は辞めた方が良いよ」


「えっ!?あの男の子?」

「うん。昨日、一緒にいた男の子。私、中学一緒だったんだけど…あの男の子、女癖悪いんだ」



「…えっ!?」



耳を疑った。



「正直…私も付き合った事あって…すぐ別れた方が良いよ。自分が傷付くだけだから」


「…そうか…ありがとう。教えてくれて。ちょっと引っ掛かっていたから」


「そっか。それなら良かった」





まさかと思ったけど、私はクラスメイトの言葉を信じ別れを決意をした。


第一、昨日友達とかクラスメイトと言うのも引っ掛かっていた。


後でメールする?って…そういう言葉を彼女のいる前で堂々と普通に言う時点で怪しいと思ったからだ。




「…クラスメイトから聞いたの」

「…そうか…」


「私、いい加減で付き合えないし付き合っていく気ないから。だから、ごめんなさい」


「真裕ちゃん…でも、これだけは信じて欲しい。君の事は、本気だったから」


「…分かりました…」




最後のデートの日として私達は別れ、バイトも辞める事にした。


その日の帰り私は歩道橋の上で、ぼんやりとしていた。





「真裕?」



ビクッ

誰かに名前を呼ばれ振り向く視線の先には晴輝の姿。




「…晴輝…」

「どうしたの?思い詰めた顔して…変な気、起こすなよ」

「起こしません!」



「なぁ~んだ」


「な、なーんだって…言った?…あのねーーっ!あー、分かりましたっ!じゃあっ!ここから飛び降りてやるわよっ!」




歩道橋をよじ登る。



「うわっ!馬鹿っ!よせっ!」




グイッ


私の手を掴み引き止められ、バランスを崩し倒れ込みそうになる所を晴輝は抱き止めた。



「お前、馬鹿?マジに取んなよ!こっちが焦ったし!まあ……俺も…悪かったけど…真…裕…?」




ポロリと涙がこぼれ落ちる私。



「えっ!?ちょ、悪い、真裕!泣く事ねーだろ?マジごめんっ!」


「…人が…落ち込んでいる時に…」


「…真裕…」




晴輝は抱きしめた。



ドキン


私は胸が大きく跳ねる中、晴輝の胸に顔を埋めた。




「何があったかは知らねーけど…特別だからな」




私は晴輝を抱きしめ返した。

























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