第5話 バイト先、姉の流す涙に・・・
「すみません」
朝学校に向かう途中、智耶さんの車の助手席に乗っている私。
「いいえ、通り道だし」
「でも…あの…私、クラスメイトの子達に智耶さんが彼氏と見られているんです」
苦笑いしながら智耶さんに状況を話す。
「へえー、そうなんだ」
「はい、だから…お姉ちゃんにも悪いし」
「気にしなくても良いよ。そのままにしておけば?」
「えっ?いやいや、それは流石に…」
「でも今更下手に弁解するのもね」
確かにそうだけけど私としては誤解を解きたいのが本音だ。
「気にしない、気にしない」
結局、何もする事なく、そのままにするしかなく。
それから一ヶ月が過ぎたある日の事。
「はーるきっ!」
学校帰り私は前を帰っている晴輝に気付き、駆け寄ると背後から抱きついた。
「うわっ!何だよ!いきなり抱き付くなよ」
「一緒に帰ろう!」
「ウザッ!やだ!」
「なっ…!酷っ!あー、お姉ちゃんじゃないからねっ!悪かったなっ!」
私達は騒ぎつつも一緒に帰る。
「ねえ、それよりさ、いつから?お姉ちゃんの事」
「……それは……」
「私には関係ないか。ごめん。気にしないで」
「別に良いし。話してやるよ。兄貴が夏奈さんを連れて来た時、3人で出掛ける事が増えて…気付いたら好きになってた」
「えっ?」
「まだ、そう日にちは経ってねーよ」
「そうか…お姉ちゃん達付き合って、どれ位経つのかな?」
「さあな。干渉しないから。まあ、半年以上~1年位じゃねーの?」
「晴輝も良く知らないんだ」
私達は、色々話をしながら帰るのだった。
その後、バイトも見付かりバイトを始めるのだった。
そんなある日の事だった。
「ただ…い…」
「何の関係もないわよ!そういう自分だって女の人と一緒にいる所を見掛けたわよ!私は友達だろうって思って信じて…。それなのに智耶が信じてくれないんじゃ…」
「彼女は仕事の仲間だよ!」
帰って早々、向き合っている二人の姿を見て、どうやら修羅場に遭遇したようだ。
「だったら私の事も信じてくれても良いでしょう!?」
「………………」
「……今日は帰る…」と、智耶さん。
帰り始める智耶さん。
異様な空気の中、私はただ、ただ二人を見つめる事しか出来ず ――――
勇気を出して私は姉に尋ねた。
「お姉ちゃん……良いの…?」
「今日は何を話しても一方通行よ。お互い冷静になる時間が必要だから」
「………………」
私は姉には、それ以上何も聞けず、とりあえず智耶さんの後を追った。
「智耶さんっ!」
呼び止める私の方に振り返る智耶さん。
「…真裕ちゃん…」
「…別れたり…しないよね?お姉ちゃんは浮気とかする様な人じゃないよ!」
「…ああ…じゃあ……」
帰って行く智耶さん。
多分、智耶さんも分かっているはず。
だけど ――――
素直に受け入れられない心境なのだろうと―――
私は部屋に戻る。
すると、お姉ちゃんは涙を流していた。
「……お姉ちゃん……」
私はお姉ちゃんの姿を見つめ聞こえない小さな声で呟くように言うと、自分の部屋に行くのだった
○ 津盛家
~ 晴輝 side ~
「あれ?兄貴…早…」
「………………」
兄貴の様子がおかしい事に気付く。
♪~
『兄貴、そっちに行くって言って出掛けたけど、帰りが早いのは二人に何かあった感じ?』
♪~
『偶々、遭遇したけど、お姉ちゃんと喧嘩していた感じ』
♪~
『そうか…』
♪~
『お姉ちゃん、泣いてた』
真裕の返信に、傍にいてあげれたらと思った。
だけど ―――
彼女の涙は
兄貴への思いに流す涙だ
俺が何か出来る訳がない
逆に俺自身も
辛いだけだと ―――
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