第4話 タイミング

次の日。


偶々、登校中に晴輝と肩を並べて登校する私達。



「晴輝、昨日は楽しかったね。それより、どうして眼鏡が必要なの?それだけカッコイイなら女の子に不自由しなくない?」


「女は良い!俺、好きな女(ひと)いるし」

「えっ!?いるの!?誰!?」

「年上の女。以上っ!」



そう言うと足早に去り始める。



「あっ!ちょっと待って!ねえっ!」



私は後を追う。






そんなある日の登校中の事だった。




「ねえ、彼氏元気?」

「えっ?」




振り返るとクラスの女子がいた。




「年上の彼氏」

「あー…」

「最近、送迎がないみたいだから」

「あー、忙しいから」



≪嘘つきだ…私…≫



そう思う中、女子生徒は疑う事なく



「そうなんだ」

「うん」

「じゃあ、彼氏に宜しく」

「あっ…うん…」




女子生徒は、走り去った。



「言うタイミング逃すと元も子もねーよなぁ~。馬鹿な女」



背後から声がし振り返ると晴輝がイタズラっぽい笑顔でいた。



「う、うっさいなっ!」

「可哀想に!」

「何よ!私だって……誤解解きたいし!」

「別に良いんじゃね?面白いし」

「見せものじゃないし!遊ばないで!」



私達は騒ぎつつ校舎へと向かった。





それから、その後も変わらず、休日は、お姉ちゃんと智耶さんの付き添いで出掛ける事が増えて行く。



「ねえ、私達って…ただの連れにすぎないのに、どうしていつも二人の付き添いをしないといけないんでしようか?晴輝君」


「知らねーよ!」


「…はあぁ~…休日までもクラスメイトと顔合わせないといけないなんて…何してんだか…」



私は溜め息混じりに言う。




「つーかさ…俺はもっと憂鬱なんだけど…」

「えっ?」

「お前だから話すけど、俺、兄貴の彼女が好きなわけ」


「そうなんだ…。…ん?…えっ!?兄貴の…彼女…?」




《待って!えっ!?今、兄貴の彼女って言ったよね?》


《つまり、それって…》




「えっ!?待って!彼女…って…。えっ?えっ?お、お姉ちゃん!?て事っ!?」


「そう、夏奈さん」



「………………」



「付き合わされる身になってみろよ!マジ最悪だっつーの!」



[年上の女……人の気も知らねーで……]



前に晴輝が言った言葉が脳裏に過る。




「そういう事だったんだ…」

「えっ?」

「いや……晴輝がポツリと呟いてたなぁ~と思って」


「……あ~…」


「そうかぁ~……それって本当不公平だよね…好きな人が自分の兄弟とか友達とかって…それに付き合わされるのって…本当最悪だよね……」


「……真裕……」


「本っ当っ!可哀想な晴輝君っ!」



イタズラっぽい笑みを浮かべる私。




「なっ…!その顔ムカつくっ!あーっ!話さなきゃ良かった!」


「本当だよねぇ~。いつもの御返しですっ!」


「…………」


「でもさ!」

「何だよ!」

「でもっ!それって!今後、私達4人に絡んできてもおかしくない話じゃん!」


「えっ?」


「だって男と女なんだよ?兄弟や姉妹でさ、私があんたの事を好きになるかもしれないし、智耶さんの事好きになるかもしれないし、逆のパターンって事だってあるわけじゃん!」


「…真裕…」


「4人の男女間にないって……言えないじゃん……未来なんて誰も分からないんだから」


「そうだよな……」


「そうなった時、私の心の中、きっとグチャクチャだよ…」






クールっぼいような


社交的なアイツ


優しくて大人で憎めない兄


二人は兄弟




そして



私の心を虜にするのは


一体誰なのだろう?


恋の炎は


ゆっくりゆっくりと


灯り始めていた……





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