第3話 もう一人のアイツ
出掛ける当日。
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴り響き玄関先に向かうお姉ちゃん。
どうやら智耶さんが来た様子。
交わされる会話が、そう思わせる。
「真裕ーー?準備は出来た?出掛けるわよーー」
「あ、うん。ねえ、おかしくない?」
「大丈夫よ。あなたは十分に可愛いんだから」
実の姉に言われるのも照れる。
「でも…」
「ほら、行くわよ。下で待ってるらしいから」
「うん」
話によると、どうやら智耶さんの弟が来るらしく、その事を昨日、聞かされ、弟と初対面の私は、ちょっとドキドキして、おめかししてみたりと……
やっぱり最初が肝心で第一印象が大事だから ――
そして、智耶さんと合流する。
「ごめんなさい」と、姉。
「いいえ。真裕ちゃん可愛いよ」
ドキッ
私を見ては彼女がいるお姉ちゃんの目の前で、さらりという智耶さんに胸の奥が小さく跳ねた。
恥ずかしくて照れる自分がいた。
「あ、ありがとうございます」
照れながらも、お礼をいう私。
「じゃあ、行こうか?弟は車の中で待機しているから」
私達、3人は車の方へと移動し乗り込む。
姉は助手席に乗り、私は後部座席に乗る。
「弟の晴輝(はるき)」
「ど、どうも…」
軽く自己紹介を智耶さんからしてもらい取り合えず挨拶をし弟は軽く会釈をした。
ドキン
胸が大きく跳ねる。
≪うわぁ…弟カッコイイ…まさにイケメン兄弟?≫
「真裕ちゃんと同級生だし仲良くしてやってね。そいつ無愛想だけど」
「悪かったな!つーか、どうして俺がクラスメイトの女と出掛けなきゃなんねーんだよ!」
≪…ん?…何だろう?≫
≪この口調って…≫
聞き覚えのある話し方に、ふと脳裏に過る。
「クラスメイトなら尚更、良いだろう?仲良くしたらどうだ?」
智耶さんは言った。
「兄貴の、お遊びに付き合ってられねぇっつーのっ!」
「お遊びとはなんだ?彼女達(レディ)の前で失礼だろう?ごめんなぁ~。二人共」
「いいえ」と、私。
「さあ、しゅっぱーつ!」と、智耶さん。
車が走り出す。
「人の気も知らねぇで」
聞こえるか聞こえないかの声で弟は言った。
「…ねえ…津盛君って…。クラスメイトって?」
取り合えず尋ねてみた。
≪まさかアイツ?≫
≪でも眼鏡かけてないし…≫
「俺、プライベートと学校違うから!以上っ!」
「えっ?」
≪プライベートと学校?≫
≪見た目って事?それとも性格?≫
何となく嫌な予感はしてくるが、一応、きちんと理解したい為、尋ねてみた。
「あの…どういう…」
「分かんねーなら、そのままだっ!一生考えてろ!バカ、愛澤 真裕!」
ムカッ
やっぱりと思う中、態度や言い方に腹が立つ。
「…眼鏡男…あんたねぇ~…」
呆れつつ溜め息を吐くように言う私。
「ほら、気付いてんじゃん!」
「ふんっ!」
「可愛くねぇ~」
「うるさいなっ!悪かったですねっ!」
私は車の窓の外を見る。
≪最悪だ…コイツをカッコイイと思った私が馬鹿だった…≫
しかし、せっかくだし私は話し掛ける事にした。
「ねえ、眼鏡男」
「何だよ!つーか、眼鏡男はよせよ!真裕」
ドキッ
異性から初めて名前を呼び捨てにされ胸が大きく跳ねた。
無理もない。
15、6年間、彼氏がいなかったからだ。
小、中と同級生からも下の名前を呼ばれた事もないし、異性の友達もいなかった。
だけど、今後、関わりがないという事を言われた事が分かった気がした。
「で、良いよな?」
「あ、うん…」
「俺の事も晴輝で良いし!」
「呼び捨て?」
「何か御不満ですか?バカ、真裕」
「バ、バカは余計なんですけどっ!」
クスクス笑う、晴輝。
ドキン
胸が大きく跳ねる。
元々、性格も見た目にも自信はない。
好きな人もいたりしたけど、自分からの告白なんて一切した事はない。
片想いばかりの私。
普通に平凡で人生後悔しっぱなしかもしれない。
私の中で何か変わる気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます