第2話 ムカつくアイツは

春。4月。入学式。



「はい、入学祝いよ」

「ありがとう!」



テーブルに並ぶ料理。

お寿司だ。


姉妹水入らずで入学祝いをする。




そんなある日の事。




「ありがとうございます」

「いいえ。それじゃ」




お姉ちゃんの彼氏である。



津盛 智耶(つもり ともや)さん。21歳に学校まで朝、送って貰った。


のは良いんだけど ―――――





「ねえねえ、今の彼氏?」

「超カッコ良くない?」


「えっ?」




二人の女子生徒が駆け寄っては尋ねてきた。



「良いなぁ~。年上の彼氏」

「ねえ、いくつ?」

「えっ?あっ、21歳。あっ!でも彼は……」



と、話す私の言葉を遮るように彼女達は尋ねてくる。




「良いなぁ~」

「付き合って長いの?」

「えっ?…いや…長いとか…そういう…」

「やっぱり彼氏は年上の」



「「車持ち!」」


「「だよねぇ~」」




二人は息ピッタリでシンクロしていた。



そして、結局、私の彼氏となってしまい ――――




「違うのに……最悪だ…。ごめん…。お姉ちゃん……」



「お姉さんの」



ビクッ

背後から突然の男の子の声に驚き肩が強張った。




「彼氏なのに自分の彼氏なんて、いつからあの男(ひと)の彼女になったんだ?愛澤 真裕」




振り返る視線の先には眼鏡を掛けた、いかにも真面目そうな冴えない男子生徒がいた。




「それは…つーか、フルネームをどうもっ!つーか、誰っ!?アカの他人のあなたに……」


「確かにアカの他人でも、関わりないのは嘘になる」




私の言葉を遮るように男子生徒は言った。




「えっ?」


「ともかく宜しくなっ!愛澤 真裕さん」




そう言って去って行く。




「真面目そうな奴…つーか、関わりないって…どういう事な訳?」




ある日の日曜日。



「えーーっ!デートに私も参加!?」


「良いでしょう?バイトもまだ見付からないんだし付き合ってくれても。それに約束でしょう?私の言う事は気は聞くって!」


「それは……いや、でもそれとこれとは違…」

「えっ?何?」



私に詰め寄るお姉ちゃん。



「い、いいえっ!な、何でも…ありま…せん…」


「宜しい。日程は来週だから智耶が迎えに来てくれるからマンションで待機という事で宜しく~」


「…分かった…」



出掛ける約束をし、その数日前の事だった。




ドカッ


背後から後頭部目掛けて何か当てられたような衝撃がはしる。



「いったぁっ!」

「あー、悪い」



ムカッ


わざと当てたと思わせる謝り方に腹が立つ。

振り返る視線の先には例の眼鏡男子だった。



「眼鏡男っ!つーか、あなたに私、何かしましたかっ!?」


「別に。邪魔だったから。つーか、そこにいるなんて知らなかったんだよねぇ~」




いたずらっぽく笑う子憎たらしい笑顔に更に怒りが込み上げる。



「いやいや、明らかにわざとでしょう!?眼鏡男っ!」


「人聞きの悪い」




≪ ムカつく≫



本当、腹立だしい態度。




「あのぉ~、目、開いてますぅ~?眼鏡君。あー、それとも、その眼鏡が合っていないのかしらぁ~?つーか、合っていない方が正しいかもねっ!」




ペシッ

頭を叩かれた。




「いったっ!」




そして、横切る眼鏡男。




そこへ ――――




「おはよう」



私に声を掛けてくる女子生徒。


親友の・那賀松 夏純(ながまつ かすみ)




「あっ、おはよう。ねえ、それより、アイツ。あの眼鏡男子、誰っ!?」




眼鏡男を見て夏純に尋ねた。




「あー、クラスメイトの津盛君だよ」

「津盛ぃっ!?」



≪お姉ちゃんの彼氏も津盛…同じ…まさかね≫




「うん。彼がどうかした?」


「どうも、こうも私にやけに突っ掛かってくるんだけど!」



クスクス笑いながら



「そうなんだ。だけど、彼友達多いし、結構いつも話題の中心人物だよ」


「嘘だっ!!じゃあ私にだけ、どうして意地悪してくるかな?意味分からないんだけどっ!」


「何か訳ありなんじゃない?」

「訳ありっ!?」


「うん。もしくは、津盛君にとって意地悪したくなるようなキャラだとか?からかい甲斐あるんじゃない?」


「何それっ!」




私達は色々話をしながら校舎へと移動した。








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