あたり前の時間
ハル
第1話姉の彼氏
「お母さん、お願いっ!お姉ちゃんの所から高校通わせて!」
「駄目よ!」
「どうして?高校近いし、バイトだってきちんとするし迷惑かけないからっ!だからお願いっ!」
「…………」
愛澤 真裕(あいざわ まゆ)。15歳。
私には姉・愛澤 夏奈(あいざわ かな)。20歳がいる。
春4月に入学式を控えている私は姉の住むマンションから学校が近い為、一生懸命に母親に説得中だ。
未だに許しを貰えず、かなり苦戦中 ―――
そして、その結果、私は平行線だと思い ―――
ガチャ
母親に内緒で強制的にとって姉の住むマンションへと押し掛ける事にし足を運ぶ事にし玄関のドアを思い切り開けた。
―――― 次の瞬間 ――――
ドキーッ
私の目の前の光景に心臓が飛び出す勢いだった。
「!!!!!」
私の姉が男の人と交わす濃厚なキスシーン。
テレビでは見た事があるが、流石に身内のキスシーンは、15歳の純粋な乙女には強過ぎる。
ドサッ
抱えていた荷物を足元に落とした。
二人は離れた。
「あら?真裕」
何事もなかった様子で私を見る姉。
「妹さん?」
姉とキスしていた男の人が私を見て話す。
ドキッ
胸が大きく跳ねた。
スラリとした背の高い優しい雰囲気の男の人。
しかも――――
≪超イケてるし≫
正に美男美女カップルと言っても過言ではないだろうか?
まあ私の個人的な意見なんだけど………
「ど、どうも…」と、私。
「初めまして!それじゃ夏奈、またな!」
「うん、またね!」
お互い軽く手を振りつつ、ラブラブオーラを醸し出し二人は別れた。
男の人は姉の部屋を後に帰って行った。
「どうしたの?急に。来るなら来るって言ってくれれば迎えに行ったのに」
「いいえっ!結構です!迎えは必要なかったから!」
「えっ?」
「つーか、ラブラブな歓迎をどうもっ!それよりお姉ちゃんにお願いがあるの!」
「何?来て早々」
「お母さんを説得して!」
「えっ?説得?どうして?」
「……家…出て来ちゃったの!」
「えっ!?出て来たって…冗談…」
妹の言葉を遮るように私は話す。
「冗談なんかじゃなくて本当なのっ!」
「お母さん、今頃、心配しているんじゃないの?」
姉の両腕を掴む。
「バイトだってするし、お姉ちゃんの言う事聞くからっ!炊事、洗濯、協力するから、だからお願いっ!」
「………………」
「…やっぱり…突然過ぎるよね…。駄目だよね…。彼氏いるし邪魔だよね……。キスしてたし…今の彼氏なんでしょう…?」
「確かに今のは彼氏だけど…」
「…………」
私は掴んでいた両手をゆっくり離す。
「…分かった…帰る…ごめん…」
「……良いわよ。今更帰っても怒られるだけでしょう?」
「えっ?」
「だけど、約束よ。ここに来た以上、私の言う事はきちんと聞いて!お母さんの代理に過ぎないんだから!良い?」
「お姉ちゃん……ありがとうっ!」
私はお姉ちゃんに抱きついた。
「そのうち家が良かったなんて言わないでね」
「えっ?」
私は抱きついたお姉ちゃんから離れる。
「えっ……!?やだ……それ聞くと…母親よりもお姉ちゃんが恐く見えるんだけど…。帰りたくなってきた…」
「あら?帰るなら帰るで構わないわよ。だけど、今、帰ったらお母さんに、こっぴどく叱られるんじゃないの?黙って家を出て来たんでしょう?」
「…それは…」
悪魔だ!
一瞬、その言葉が脳裏に過った。
「ともかく、お母さんには上手く言うから任せて!」
お姉ちゃんはウィンクした。
そして、お姉ちゃんとの同居生活が始まるのだった。
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