第2章 新たな住民と人族と魔族

第21話 普通の日々

 スライムの騒動等があってから1ヶ月が過ぎた。

 森での生活は相変わらずで、まあ自給自足しつつ日々を過ごしている。


「よくできたわね~」

「ちょっと、頭撫でないで! っていうか、これくらい教えてもらえばできるにきまってるじゃない!」

「それ2週間前に同じ事教えた時に聞いたわよ」

「ぐっ……」


 今はリリアちゃんに料理を教えている最中ってわけで、包丁の正しい使い方を覚えるのに一週間で、今日切り方を1つマスターした。

 さすがに皮を剝かないといけないとかはわかってくれてたけど、素材によってはそもそもどこまでが皮か知らない場合もあった。


「それにしても……」

「な、なに?」

「おさげ髪というか二つ結びとか似合いそう」

「い、いきなりなによ!」

「ちょっと、やってみましょうよ! なんか弄らないのもあれだし」

「え、ちょっと!?」


 料理の練習も落ち着いた所で、あたしはそう言ってポケットから髪紐をだしてやってみる。

 うん、やっぱり似合ってる。


「あ、嫌だったらほどいちゃっていいから」

「そ、そんなことはないけど」

「それじゃあ、あたしが作ったご飯食べてから、今日は街へ行きましょう」

「え? そんな予定聞いてなかったけど」

「魔法書がそろそろ読み終わっちゃうし、何だかんだで冒険者ギルドで教えてもらったのに使ったことなかったのと。リリアちゃんの冒険者証も作りに行きましょう。この森で住んでるならまたあんなことあった時のために、少しくらい自衛の方法は必要よ」

「それは……たしかに」


 リリアちゃんも納得してくれた所で、昼食を取り外用の服に着替えて家を出る。

 ちょうど、そのタイミングでのことだ。家の鍵を閉めていると足音と共に一人の女声がやってきた。


「おや、お出かけですか?」


 近くの街にいる騎士のミリアーナさんだった。


「あら、一ヶ月ぶりね」

「お久しぶりです。毎回言ってる気がしないでもないですね」

「今日はどうしたの?」

「前に頼まれていた事です。わかったことがありましたので……これから街へ?」

「その予定だったけど」

「それなら、街で話しましょう」

「わざわざ来てもらったのにごめんなさい」

「いえいえ……ところで、そちらの金髪の子は?」


 リリアちゃんはなぜかあたしの後ろに隠れていた。


「うちの子よ」

「結婚されてたんですか?」

「まあ、ちょっと色々とね」

「そうでしたか……私が怯えられてるみたいだと感じてるんですけど」


 あたしは小声でリリアちゃんに話しかける。


「リリアちゃんどうしたのよ?」

「い、いや、ちょっと騎士の人って苦手で……」

「何かあったの?」

「いや、兄がどんな取引してたかはしらないけど、騎士がたまに屋敷来た時に、怖かった思い出しかなくて」

「あぁ……」


 兄っていうとろくでなしだったし、取引云々以上にやばいこと関わってて、家ごと疑われていた可能性もある。でも、リリアちゃんはそれを詳しくは知らないし苦手意識だけが残っちゃってもおかしくはないのかな。


「まあ少なくともあの人は大丈夫よ」

「そ、そう?」

「悪いことだってしてないでしょう」

「そうね。少なくともこの街まで運ばれてからした覚えはないわ」

「なら、騎士にひどいことされる可能性なんてないから」

「う、うん」


 深呼吸するとひとまずあたしの後ろに隠れずに、隣まではでてきてくれた。


「あ、あの、無理はしないでいいですからね」

「だ、大丈夫! あなたは怖くない人、だから!」

「は、はぁ……えっと?」

「まあ、ちょっと時間かけてもらえれば……いい子だから」

「そうですか。わかりました。まあ、私としてもずっとあそこに篭り気味なので友人になってくれると嬉しいので、アリア・ミリアーナです」

「リリア・アルミシアです」

「アルミシア……あぁ、そういうことですか」


 リリアちゃんの名前を聞いて、なんとなくあたしが頼んだ事に思い立ったのか、ミリアーナさんは1人で頷く。


「な、なに?」

「あ、いえ、大丈夫です。むしろ、アルミシアさんの事は信用できると思っただけですから。では、街へと参りましょう」

「そうね」


 ここで立ち話していたら家に入って話したほうが良かったってなってしまう。ミリアーナさんの提案に頷いて、ひとまずあたしたちは出発した。

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