44. 1日目・立地の確認
さて、顔合わせも済んだことだしちょっと情報収集をしようかな。
「そういえば、よくここがわかったね。転移してからそんなに時間がたってないはずだけど。」
「ああ、その事ですか。セトさんはギルドに行ったことがないからご存知ないと思いますが、イベントの情報が事前にギルドの掲示板とかに張り出されたりするんですよ。それで、今回はこんな物が置いてありました。」
オープくんは、紙を僕に手渡してきた。折り畳んであるので開いてみよう。
地図?かな。というよりはショッピングモールによくある店舗を案内するチラシとかパンフレットみたいな感じかな。お店の名前と場所が地図を見れば解るようになっている。へー、店の出展者の名前も出てるのか、名前を売るにはちょうど良いのかもしれないね。
「へー、こんな物があるんだね。僕のお店の場所はどこかな?」
「セト兄様のお店は商業区の中心にありますよ。場所の選定は前回のイベントの結果や生産者としての活動やクランの規模等が考慮されているみたいですね。」
お、おう。疑問になるだろうところを先に答えられてしまい、内心少し怯んでしまった。流石アブニールちゃんだ。
「なるほどね。でも、中心ってことは立地としては結構良いんじゃないの?僕、生産者として活動してないよ?」
「残念ですが立地としては微妙です。」
「そうなんだ?」
本気で商売する気がないからそんなに気にしないけど。
「今回のイベントは、5日間です。時間加速をしているとはいえ不眠不休で行動し続けるのは不可能です。それを踏まえた上で地図の北の方を見てください。そこは宿泊施設が集まった区画になります。それと、商業区の南がPVPのイベントの開催場所、いわゆる闘技場です。」
ふむふむ、確かに5日間も遊び続けるなんてはっきり言って無理だし、ゲームだから体力的な問題は大丈夫でも、精神的に休む場所も必要だよね。
「もしかして、宿泊施設の近くと、闘技場の近くが一等地って感じかな?」
「人の流れが予想できますので確実に稼げるという点では、一等地です。あとは、リアル・シェルの店もそれぞれその場所の近くににあるというのも大きな要因ですね。」
実績のある人気店があり、宿泊施設とメインイベントの会場が近くにある。まさしく一等地だ。
もう一度地図を見てみよう。僕のお店は商業区のほぼど真ん中にある。中心地と思えば立地も悪くないと思うけど。
「目的がないと、素通りするね。」
「まさしくその通りです。本来ならですが。」
おや?含みのある言い方をするね。
「セト兄様は、自己の認識をしっかりとするべきです。ねーミューちゃん。」
「ねー。」
なんのことだろうか?ランダム転移で繋がりの殆どない僕なんて他のプレイヤーからしたら警戒する価値もないと思うけど。今回のイベントの参加だってランダム転移の縛りが多いのに。
「アクト、何か知ってる?」
「そうだな、詳しくは解らないけど、さっきからチラチラ見られてるのは確かだな。」
え?なんで?視線には気づいていたけど、てっきり赤い髪のイケメンさんを見てるかと思ったけど。
「前回イベントの凶悪なアイテムだけでも注目の的ですよ。それに加えて最近では枯れ葉で荒稼ぎしましたよね。」
あー、確かそんなことも。枯れ葉での荒稼ぎはミューちゃんの為に自重することなくとことんやったので名前を見た人もいるのかな、出品者の名前が取引板には出るからね。前回のイベントについてはもう時間もたってるし大丈夫だと思ってたけど、そういえばアルファリエさんが話題になってるとか言ってたような。
前回のイベントと言えば何か大切なことを忘れてるような........なんだったかな?
「ははは、まぁ、そんなことも.......あったような。」
「おにいちゃん、はくきんかじゅうまいかせいだよ。」
やめて!ミューちゃん。事実だけど。
「そういうことですから、セトさんの場合、そこまで心配はしていませんが一応は注意を払っておいてください。」
「わかったよ。変なやつには注意することにするよ。」
オープくんに軽く説教みたいなことをされてしまった。ミューちゃんがいるので警戒を強めておこう。
「聞きたかったんだが、ランダム転移でイベント参加って制限があるんだろ?」
あれ、説明してなかったかな?アクトには学園で話したと思ったけど。
「基本は移動制限と交流制限だね、主要都市にたどり着けてれば関係ないみたいだけどね。」
1.店のみをするプレイヤーは、店の敷地から出れない。
2.PVPのイベントのみの参加プレイヤーは運営の用意した控え室での行動となる。
3.フレンド登録の禁止
4.アイテムトレード、受け渡しの禁止(店での販売物はその場での消費ができる物のみ可)
5.店、PVP両方への参加の場合、基本は店での活動になりPVPの試合時に転移での移動となる。
「こんな感じだね。お店をやってるから情報のやり取りが出来るのが救いかな。」
「なるほど、抜け道がミューちゃんですか。」
流石はオープくん、だてに眼鏡さんではないね。
ミューちゃんはこの話に興味がないのかジュースをクピクピ飲みながらアブニールちゃんとおしゃべりしている。
「どういうことだ?」
「アクトには後で教えるよ。」
ミューちゃんは、プレイヤーじゃない、敷地から出れるのだ。ミューちゃんの食生活を豊かにするためにもこのイベントで食材を手に入れまくってやるのだ。
ミューちゃんの初めてのおつかい。これが僕のメインのイベントだ。
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