45. 1日目・開会式

アクト達と話しているとそろそろ開会式の時間が近くなっていることに気がついた。


「そろそろ闘技場に行かなくていいの?」


移動する雰囲気を全く感じないけど、どうするつもりなのだろう。


「大丈夫ですよ。開会式は闘技場に必ずしも行く必要はないそうですよ。多分そろそろだと思うんですけど。」


そうなんだ。でも、なにがそろそろなんだろう?


『...なに、原稿ないの?カンペは?うそ?!アドリブとか聞いてないわよ?!え?なによ?!もうすぐ本番なんだから。は?マジ!?映ってるの?』


店の敷地の中央の空中にモニターが現れた。多分闘技場からの中継が写し出されてるのだろう、ヒラヒラの服を着たアイドルっぽい人が何やら慌てている。


「オープくん、何あれ?知ってたの?」


「前回のイベントも同じような感じでしたので開会式は名目上そう呼んでるだけらしいですよ。それで、モニターの方は中継用に各店にあるみたいですよ。闘技場での試合や連絡事項がある時に現れるそうです。女性の方はセーラ・セーラという方ですね。確か現実ではアイドルグループの1人だったかと思うのですが。」


オープくんの情報源はギルドにあるのだろうか?ギルドに行けないだけでこんなにも情報弱者になるなんて。


それよりも、アイドルねー。この慌ててる感じも演出なのかな?


「アブニールちゃん、あれどう思う?」


「演技ですよ。素の自分を見せましたよアピールですね。一種のファンサービスといったところだと思います。」


なるほど、アイドルも大変だね。


『.....あーあー。おほんっ!見苦しいところを見せたわね。気を取り直して、私は、今回のイベントの進行を担当するセーラ・セーラよ。短い間だけどよろしくね。じゃあ難しい話は置いといて予選の説明をサクッとするわよ。』


なんだろう、こういうキャラなんだろうか?説明とか進行とかやらせて大丈夫なのかな。


「オープくん、説明抜けてたらあとよろしく。」


「えっ?!」


『前回と違って今回は参加人数がとても多いわ。だから予選も時間のかからない方法になったの。てなわけでこれを見なさい!』


.....パンチングマシーンだ。でも的が大きいかな。ラグビーとかでタックルの練習をする機械みたいに見える。


『本当のやつより形が少し違うけど、パンチングマシーンよ!って知らない人もいるかしら。実際にはパンチをする訳じゃなくて、真ん中の赤い的に向かって全力の一撃を当てる感じね。武器でも魔法でも、もちろんパンチでもオーケーよ。』


ふむふむ、最大火力で順位をつけるのか。


『え?違う?忘れてる?.......あっ!制限時間は5分!5分の間により多くのダメージを与えられた人から順番に決勝ステージに進出出来るわ。』


「アブニールちゃんあれは?」


「演技です。忘れっぽい私も可愛いでしょアピールですね。」


女性は怖い。


ともあれ、5分の間のトータルダメージね。以外となんとかなるかも。


『予選は明日の早朝から夕方まで1日かけて行うわ、結果は夜に発表する予定よ。ランダム転移の人以外は闘技場まで来るように、それと今日1日は戦略を整えたり商業区の観光なんかしたりライバルの偵察をしたり等々自由に過ごしてちょうだい。』


今日は対策を考えろってことなんだろう。場外工作もあるかもしれない、少し気を付けよう。


『ちなみに予選に参加しなかった人は問答無用で失格だから余裕を持って参加してね。あと、ランダム転移の参加者の人は夜明けと同時に開始する予定だから準備しといてね。』


僕は朝一に転移で移動させられるのだろう。寝てたらそのまま転移で連れていかれるかもしれない、そう考えるとちょっと怖いな。時間は注意しておこう。


「おにいちゃん、あれ、あれうえないと。」


ん?あれ?あっ!あれか、転移する前にライフさんからもらったというか押し付けられたやつ。


「はいっと、ミューちゃんに植えるのはお願いしようかな。」


「わかった~。」


「あっ!私もついていきますね。」


ミューちゃんとアブニールちゃんは元気よく敷地の中央に行ってしまった。


「なに渡したんだ?」


「んー、お楽しみかな。多分ビックリするはずだよ。」


『さて、長々と話したけど予選の説明は以上よ。ああ、それと、本戦への切符の数はまだ秘密よ、というか私も知らないわ。そういうわけだから手を抜かずに全力で挑むようにすることね。』


うわー。マイマザーが何かたくらんでるんだろうな。この段階で本戦の出場枠が決まってないとか普通あり得ないよ。


「おい、セトいいのか。なんか、みゅーみゅー言ってるぞ。」


「大丈夫、大丈夫。」


うん。大丈夫。順調に僕のHPとSPが黒い棒を通じてミューちゃんに流れている。ガンガン吸われている。ジュースを飲んで回復しないと死に戻るスピードで吸われ続けている。


『まぁ、こんなところね。細かいことは闘技場に詳細が書いた掲示板があるから確認してちょうだい。じゃあ最後に、これより第二回来訪者頂上決戦を開催いたします。これから5日間皆で楽しむわよ!』







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