43. 1日目・赤い髪の人達
「こちらでは初めましてですね、セトさん。」
赤い髪のイケメンこと拓人へのバナナの皮での強襲で満足していると、赤い髪の眼鏡を掛けた優男風のイケメンに声をかけられた。
「初めまして。オープくん、でよかったかな。」
拓人の弟の開人くんだ。インテリイケメンという分類になるのだろう。バナナの皮を投げつけてやろうか、コノヤロウ!
「怖いので、バナナの皮をしまってほしいんですけど。」
おっと!拓人への色々な感情が引きずられていたみたいだ。いつの間にか右手にバナナの皮をスタンバイしていた。
「ごめんごめん、あいつを見るとつい、ね。」
クール、ソークール、冷静になるんだ。今は隣にミューちゃんがいる。
「みゅ~、おにいちゃん、このひとだ~れ?」
「この眼鏡さんはね、ミューちゃんとお祭りを回ってくれる人だよ。」
「セトさん、眼鏡さんは、ちょっと。」
「めがねさん、みゅーだよ~。みゅーってよんでね。」
オープくん、今からミューちゃんのなかで君は、眼鏡さんだ。
ミューちゃんの説得には苦労した。お祭りを一緒に回れないと知ると、はぶてるし半泣きで抱きついてくるし、オリジンの皆さんからは信じられない圧を感じるしで生きた心地がしなかったけど、説得にはなんとか成功した。
「眼鏡さん、本当に頼むよ。マジで、下手したら世界が滅ぶから。冗談じゃないからね。」
オープくんの肩に手を置いて笑顔でお願いした。
「あの、笑顔で詰め寄るのはやめてほしいんですが。」
「おっと、ごめんね。まぁ、そういうことだから頼むよ。」
「ミューちゃん、でよかったかな。オープって言います。お祭りの間よろしくね。」
「うん。めがねさん、よろしくね。」
オープくん、諦めろ。君は今日から眼鏡さんだ。
「あかいひとが、こっちにきたよ。」
ようやく拓人が再起動したらしい。お詫びにジュースでもご馳走しよう。
「オープくん、ちょっと飲み物用意してくるから、拓人が来たら椅子にでも座らせて待たせといて。」
「ありがとうございます。すいません、あと妹もすぐに来るので、」
「いいよいいよ、気にしないで。こっちがお願いしてる立場なんだし。」
「みゅーもおれんじじゅーすおかわり~。」
「はは、了解。ちょっと待っててね。」
さてと、手早くジュースを用意しよう。ミューちゃんはオレンジジュースのおかわりでいいとして、未来ちゃんはピーチにしようかな、オープくんはバナナにしよう。で、拓人はレモンで酸っぱい思いをしてもらおう、と思ったけどこれ以上は泣き出しそうなので無難にパイナップルでいいかな。
休憩スペースに近づくと赤い髪の人口が増えていた。一人は拓人で、ツインテールの女の子が未来ちゃんだろう。
「わざわざ来てもらってありがとう。これでも飲んでよ。」
それぞれの前にコップを置いていく。拓人に何か仕掛けなければと心の中の悪魔と天使が囁くけど、ここはぐっと我慢した。
「そういう気遣いができるんなら、さっきのはないんじゃないか?」
拓人のくせに正論を言ってくれるじゃないか!またバナナの皮を投げつけてやろうか!
「まぁ、あれだよ、お約束ってやつ。逆になにもしないと気持ち悪いだろ。」
「......確かに、清一がゲームでなにも仕掛けてこないのは気持ち悪いな。」
「だろ。まぁ、ジュースでも飲んで一息いれてくれ。あと、ここではセトな。」
「わかった。俺はアクトでたのむ。」
気心知れた仲なのでこういったイタズラは日常的にしたりされたりしているのだ。この程度では拓人も泣いたりしないのは経験上把握している。レモンジュースで止めをさせることも。
「おにいちゃんと、あかいひとはなかよしさんなの?」
ミューちゃんが赤い髪のツインテールの女の子と話している。たしかアバター名はアヴニールだったような。
「そうですよ。セト兄様とアクト兄様は小さいときからの仲良しさんですよ。」
「腐れ縁って言ってほしいな、アヴニールちゃんでいいかな?」
「はい。セト兄様。ご無沙汰しております。今回はミューちゃんとお祭りを楽しませてもらいますね。」
「そう言ってくれると助かるよ。」
「みゅ~、あーるちゃん。あーるちゃんってよぶね。」
もしかしたら【ヴ】が発音しにくいのかな?
「アールちゃんですか。ふふ、愛称みたいでいいですね。私とミューちゃんも今日から仲良しさんですよ。」
すごいね、流石は川上家の神童、コミュ力も抜群に高い。これでまだ小学6年生なのだから、拓人も少しは見習ってほしい。
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