36. これからどうするの?

『セト、改めて紹介します。我等オリジンモンスター全てのあるじ、ミューリタニア様です。』


オリジンの皆さんが落ち着いた辺りで、主様から改めてミュー様を紹介された。そして、注意してないとそのまま聞き流しそうなことも言っていた。【オリジンモンスター全ての主】ものすごいパワーワードだ、ミュー様の気分一つで世界が滅びるのではないだろうか?


「みゅーだよ~。みゅーってよんでね。」


僕の心配をよそにミュー様からはなんとも軽い感じで自己紹介された。


「じゃあ、僕も、改めてまして、セトと言います。まだまだ色々と修行中ですが、よろしくおねがいします。」


「ぷーーー。」


おや?無難な自己紹介をしたはずだけどミュー様のほっぺがプックリ膨らんでいるぞ。それに突き刺さるような視線も感じる。ゆっくりとゴリラな師匠と、フクロウな先生の顔色を伺ってみる。


「!」


野生が見えた!ゴリラな師匠が牙を剥き出しにして音も立てずに威嚇している。フクロウな先生にいたっては猛禽類が獲物を見る目でこちらを見ている。これは、狩られる!?


「おにいちゃん、ことばかたいのいや!」


さっきの感じで喋っていいのだろうか?困ったときは主様に聞いてみよう。


「主様、ミュー様のおっしゃる通りにしていいのでしようか?」


『構いません。ミュー様の御心のままに。』


「みゅーー。様もいや!」


いいのかな?【ミューちゃん】って呼んだ瞬間に狩られたりしないよね?!

........覚悟を決めるしかないかな。


「じゃあ、もう一度だね。セトだよ。ミューちゃん、これからよろしくね。」


「うん。おにいちゃん、よろしくね。」


ニパッと笑顔になった顔は、モカさんの幼い頃を思い出す感じがしてすごく懐かしい。うん、刺さるような視線もなくなったので狩られずにすんだようだ。


「ミューちゃんはこれからどうするの?」


「みゅー?」


おや?もしかして目的がないのかな?


『セト、ミュー様は本来のお力を失っておられます。このお姿もその影響の一つです。』


この流れはレトロゲームでもよくある【力を取り戻しに各地を旅しよう】的な流れだ。ようやく、他のプレイヤーとまともに交流が出来るかもしれない。


「どうやって取り戻すのですか?」


「みゅーはこのままでもいいよ~。」


『よろしいのですか?』


「うん。みんなもおにいちゃんもいるし、あるねえさまたちとけんかしたくないもん。だから、このままでいいよ~。」


『わかりました。ミュー様のご意志を尊重いたします。』


【力を取り戻しに各地を旅しよう】の流れは少しも進むことなく終わってしまった。


「ホー、ミュー様はお目覚めになって間もないのですぞ。今後の事を考えるのは暫くしてからの方がよろしいのではないですかな。」


「そうだな、今後のことは性急に決めても仕方ないだろう。ミュー様のお気持ちを整えていただいてからでも遅くはないだろう。」


『そうだよ。ミュー様とゆっくりお話しするの。』


先生、師匠、ライフさんも今後の動きに関してはミューちゃんに一任してとりあえず保留にするようだ。


「みゅ~、おにいちゃん、おなかへった。なにかたべたい。」


みゅーちゃんからリクエストが入った。約束してるからね。美味しいお菓子を作ろう。あー、でもお菓子だけじゃ駄目かな、今度は美味しい料理も作らないとね。


「そうだね。ドーナツなんてどうかな?」


「みゅー。ドーナツ!」


どうやらミューちゃんの琴線に触れたらしい。


「少し待っててね。君たちも手伝ってくれるかい?」


「キャー!」


お猿達にも声をかけキッチンで料理をすることにした。


またモカさんにレシピを聞かないといけないかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る