13. 彼女からの質問

 学園へ登校し、少し拓人と話しでもしようと思ったが、奴はギリギリに登校してきた。どうやら遅くまでプレイしていたらしい。

 

 昼食時間に拓人を見ると、机に突っ伏して寝ていた。起こすのも可哀想なのでそっとしておくことにした。


 放課後、さすがに帰る時間になると目は覚めたのか此方に歩いてきていた。


「遅くまでやりすぎじゃないの?」


「しょ、しょうがないじゃないか!簡単にLVやスキルが上がるのがいけないんだ。」


「はいはい。僕は、たぶんまだLV1だけどね。それよりも、よくダイブ機械の設定できたね。」


開人かいとにやってもらった。未来みらいには、清一にメール送ってもらったぞ。」


「弟と妹を頼るなよ。それはそうと、僕の母さんからいつ連絡もらったの?」


「清音さん?さぁ、知らないな。俺は開人から面白いゲームがあるから清一を誘ってみたらって言われただけぞ。」


 流石は、マイマザーだ。拓人に計画を話すと確実にばれると想定して、弟である開人くんを巻き込んでいるとは予想していなかった。開人くんは、拓人と同じで、イケメンだが残念ではない。運動は苦手だが頭がいい、インドア派のインテリだ。


「あ、あの、あのね、清一くん、昨日のお猿さんについて教えてほしいの。」


 拓人と話していると、モカさんが話に入ってきた。


 モカ・ベルナール、彼女は、拓人と同じく小学校の頃からの付き合いだ。最近は挨拶をする程度の交遊しかなかった。高校にもなって近くに僕や、拓人がいると友達が出来ないのではと思い少し距離をおいていたのだ。

 それに彼女は凄く目を引く、特徴的なのがふわふわの長い金髪。背は低めで、色白で顔も人形みたいに整っている。ぶっちゃけ、凄く可愛いのだ。

 ちなみに、モカさんの家はケーキ屋さんを営んでいる。両親ともフランス人で日本が好きでこっちで店を出したらしい。


「ベルナールから声をかけてくるなんて珍しいな。」


「あ、うう、」


「拓人、お前は背が高いんだから近づくだけで威圧感があるんだよ。無意識にやってると未来ちゃんに怖がられるぞ。」


「そうなのか?すまないな、ベルナール。」


「ううん、いいの。それよりも、昨日のお猿さんについて教えてほしいの。」


「あー、あのスクショか、うーん、何が聞きたいの?」


「とりあえず、あの子達の名前を教えて。」


 いつの間にか、モカさんの後ろに大和さんがいた。ひそひそとモカさんに何か話していた。


「(モカ、よくやったわ。)」


「(うん、私も清一くんと話せて嬉しいの。)」


「(よしよし、後は任せて。)」


「川上くん、華月くん急にごめんね。ちょっと質問させてね。」


「ああ、俺は構わないけど、スクショ?ってなんだ?」


「ややこしくなるから、拓人は後で開人くんから聞いてくれ、で、あの子達の名前でいいの?」


「そうよ。クラス掲示板があのスクショで凄いことになったの。」


「お猿さん。かわいかったの。」


 やはり、クラス掲示板に拡散されたらしい送るの忘れなくてよかった。


「正式名称はわからないけどいいかな?鑑定通らなかったし。最初に送ったゴリラさんの自称になるけど?」


「それでもいいわ。........ん?モンスターと会話できたの?」


「え?......できないの?僕が遭遇したモンスター4種類の内3種類は会話ができたよ。」


「.......その話は今度にしましょう、とりあえずあの子達の情報を頂戴。」


 おっと、ランダム転移の余波がもうでてきたぞ。まぁ、隠すこともないし正直に答えよう。


「白い猿みたいな方は、マジカルモンキーで、ナイスミドルなゴリラはマスターコングらしいよ。」


「マジカルモンキーね。ありがとう、名前がわかれば色々調べられるのよ。」


「ね、ねぇ、清一くんはどこにいるの?」


「それがね、わからないんだ。」


「清一にしては情報収集が甘いな。レトロゲームの時は町にいる全てのNPCやタンス、本棚を最低でも三回づつは調べていたのに。」


 レトロゲームには、必要な行為だ!!タンスから服を盗んだり、樽やツボを破壊するのも当然の行為だ!!だって壊しても何も怒られないんだから。

 おっと、クールになれ、レトロゲームの話題がでて感情が高ぶってしまった。


「うーん、正確にはちょっと違うんだ。なんて言えばいいのかな、常に動いているから正確な座標がわからないって感じかな。」


「動く?ランダム転移でどこにいったのよ?」


「アイランドタートルの甲羅の上らしいよ。」


「........OK。わかったわ。色々聞いて悪かったわね。私はこれで失礼するわ。」


「あ、あのね、またお話しして欲しいの。Ωの中で会ったら昔みたいに遊んで欲しいの。」


「それくらいなら喜んで。Ωの中は、何時になるかわからないけど。それと、琴音もやってるみたいだから見かけたら相手してやって欲しいんだ。」


「うん。わかったの。」


モカさんは、笑顔で手を振ると、大和さんの後を追っていった。


うん、モカさんは、やっぱり可愛いな。


「そういえば、拓人は、ランダム転移しなかったの?」


 こいつは、ランダム要素を適当に選ぶ癖がある。横スクロールのシューティングゲームの強化アイテムは全てランダムで選んでいつも失敗していた。


「ああ、選びたかったんだけど、開人に絶対選ぶなと強く言われて仕方なく。」


「拓人、弟と妹を大切にしろよ。ランダム転移してたら多分泣いてるよ。」


「うっ、否定出来ないのがつらい。」


 僕はその後、拓人と情報交換を一方的に行い(もちろんこちらが主導)、帰宅したのだった。



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