9.  友達を頼ろう

 僕はログアウトした。意識が現実に戻り、座り心地のよいダイブ機の感触が体を包んでいるのがわかる。時計を見るとまだ一時間くらいしかたってなかった。よし、とりあえず祖父を探そう。



........祖父はいた。だが話をするのは止めた。道場の真ん中で正座させられていた。祖母からのお説教付きだ、多分後30分はこのままだと思う。不用意に近づくとこちらにも飛び火してしまうからね。祖母のオハナシは恐いし長いのだ。

僕は、祖父の無事の帰還を祈りその場を後にした。


 出鼻を挫かれた感じがしたが、心のリフレッシュにはなったのでよしとしよう。お菓子でも食べながら現状の把握をしようかと思い移動を開始した。

 どら焼きと牛乳を手にいれた僕は居間で腰を下ろし軽くつまみながら考え始めた。


問題点

1. チュートリアルが中途半端に終わりシステムを理解できていない。

2. ランダム転移で飛ばされたから現在地がわからない。

3.  探索するために環境適応のLVをあげなければ満足に動けない。

4. バナナ?でエンカウントした猿?達とのコミュニケーション。

5. マイマザーへの制裁。

6. いつの間にか隣にいる妹への対応。


「琴音、何かようかな?」


隣で僕が用意したどら焼きを食べている妹に声を掛けた。


「.....兄さんが、Ωファンタジーやるって、拓人さんから聞いたから。」


マイシスターは、黒い髪と肩の下くらいまであるポニーテールが特長で、顔立ちは母によくにてるが、無表情で必要以上は聞かれないと喋らないくらい無口だ。学校ではクール美人で人気があるらしい。身長は僕より5cmほど低い。


「そうだね、さっき少しやったよ。琴音はいつからやっているの?」


「1週間くらい前。」


「なら琴音の方が先輩だね。ゲームの中で母さんには会ったかな?」


「?.....会ってない。」


「そっか、ならいいんだ。最初にランダム転移はしてないの?」


「聞かれたけど、通常の開始位置から選んだ。」


「なるほど、僕はランダム転移で飛ばされたから、どこにいるかわからないんだ。ゲームの中で会ったら一緒に遊ぼうね。」


「うん。」


少し微笑んで琴音は自分の部屋へ向かって行った。


 どうやら無事正解を引いたらしい。マイシスターとの会話は、こちらから質問を投げ掛け、雰囲気や仕草などから正解を探るという難易度の高いコミュニケーションなのだ。


 今の会話で何個かわかった事がある。ダイブ機は1週間くらい前には家にあった。次に、マイマザーは狙い撃ちで僕をランダム転移させた。最後に、初期の開始位置は複数から選べる。というかとがわかった。


 システムを理解できてないのはゲームをする上で非常にまずい。スクショくらいは撮れるようになりたい。主義に反するけどここは素直に友達を頼ろう。

僕は友人に電話を掛けた。


『は~い。華月くん、珍しいね~。君から電話くれるなんて?私に何かご用かな?』


 こいつはクラスメイトの、大和 楓(やまと かえで)さん。見た目は、サラサラの黒髪ロングのストレートが腰の長さまであり、スタイルもモデル並みによく、顔立ちも綺麗で整っている。性格は明るくおしゃべりで行動力がある。じっとしてれば大和撫子、喋れば残念の評価をクラスメイトから得ているムードメーカーだ。

 Ωファンタジーを初期からやっているので、他の友人に聞くよりは正確な情報が聞けるだろう。


「ごめんね、大和さん。今大丈夫かな?少し聞きたいことがあるんだけど?」


『なに?なに?誰か好きな人でもできたの?七瀬さん?モカちゃん?ひょっとして、わ・た・し?( ☆∀☆)』


「あー。大丈夫そうだね。さっきΩファンタジー始めたんだけど、少しトラブってね、ちょっと教えて欲しいことがあるんだ。」


『え~(/。\)、少しくらいはのってくれないと女の子に、も・て・な・い・ぞ⭐』


「そういうのは、拓人の担当だからあっちで遊んであげてね。」


『はい、は~い。つまらないな~。華月くんがかまってくれないから、まぁ、いいや!続きは明日学校でね🖤』


「ちょっと!!電話切らないで!........ごめんなさい、大和様が、最高にかわいいです。」


『よろしい!で、Ωファンタジー始めたんだよね。私が誘った時はやらなかったのに、川上くんの頼みはすぐにきくんだ~?私は、悲しい。これは、クラス掲示板で話題にしないとね。華月×川上はありか?題材はこれで決まり!』


 ダメだ会話が長引くのはまだいい、クラス掲示板の存在は知っていたが話が飛びすぎている。このままでは本題にはいれない、人選をミスったかもしれない。故意に話をそらされてる感じもする、大和さんは、ノリが軽いがバカではない。


「........なにが望みだ?」


『望み?え~、友達にそんな聞き方する~。強いていうならお願いかな、お・ね・が・い!』


「で、そのお願いはなに?」


『クラスで話題になってるの、華月くんの妹さんが可愛いって、あわせて。』


マイシスターである琴音に会いたいだと?まぁ後で本人に確認しよう。


「本人がいいっていうなら。」


『それでいいよ~。で、何にトラブったの?』

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