6.  いってらっしゃい

「次は戦闘訓練ですね。」


「この子にはそんなもの必要ないわよ。」


 アルファリエさんの言葉を遮るように、後ろの方から聞いたことのある声がした。ビックリして後ろを振り向くと今朝、家で見た顔がそこにあった。


「!!、ビックリしたよ、母さん、何してるの?いつから?どうしてここにいるの?というかここゲームの中でしょ?」


 そう、マイマザー(華月 清音)だ。肩口で切り揃えた髪、タイトなスーツを着ていて、いたずらが成功したかのような笑顔を浮かべている。


「清一、今朝ぶりね。ああ、セトだっけ。まぁ、いいか。ここにいる理由はね、私がΩの開発者の一人で、おじいちゃんにダイブ機を送り付けた張本人だからよ。それに私がここにいても意見できる人はほとんどいないから全く問題にならないわ。因みにスキルで悩んでた辺りからいるわ。あと、アルファリエここからは私が引き継ぐから。」 


「承知しました。清音様。」


そう言うとアルファリエさんは一歩さがった。


え、引き継げるの、マジで!!それより、Ωの関係者とか始めてきいたよ!落ち着け、クールだクールになるんだ僕。

何とか現状を飲み込んで、ゲームを親に説明されるとかちょっとないわーとか思ってると、マイマザーはとんでもないことを言ってきた。


「ちょっとねー。ゲームの進行が遅いの。特にスキル関連の進行がねー。魔法が一つでも使えるプレイヤーが全体の8%程度、闘気に関しては0.1%未満とか......もっとね、こう、ファンタジーして欲しいわけよ。わかるわよね!ね!有名店のブランド品とか料理とか美味しいのはわかるけど、剣術とか体術とか通常スキルのレベル上げて覚えられる技も悪くないわよ、でもね、作った側からすれば、遅いの、凄く遅いの3ヶ月たってるのよ!!PVPの大会イベントもしたけど、迫力がないの、絵が弱いの。ドーン!とかバーン!とか見たいの。わかる!わかって!わかりましたって言って!」


「わ、わかりました。」


勢いに負けて返事をしてしまった。詐欺にあったみたいな気持ちだ。マイマザーの発言で聞いてはならないことがあった気がするけど忘れよう。


「はーい。了承頂きましたー。ランダム転移いってらっしゃーい!」


「....へ、ちょ、まっ、え?」


詐欺だった。目の前が真っ白になったきた。転移が始まるのだろう。このまま引き下がるわけにはいかない。


「母さん、家に帰ってきたら楽しみにしてろよ。」


「大丈夫よ、おじいちゃん、おばあちゃんもお父さんも拓人君もグルなの。あっ!、一個忘れてた、琴音も清一より早くやってるからそっちであったらよろしくね。その前に家で会うか。じゃあ、今度こそ、いってらっしゃい。」


神も仏も無かった、学校から祖父のやり取りまで仕組まれていたというのか。

転移が始まり僕はチュートリアル空間から別の場所に転移させられた。






「清音様、ステータスや他にも説明が必要なことがあったのでは?」


「うーん、たぶん大丈夫よ。清一は、おばあちゃんとおじいちゃんに鍛えられてるし。それにレトロゲームにはね、チュートリアルが無いのなんて良くあるの、やればわかるってね。ランダム転移でも大丈夫でしょ、厳密には違うしね。」


「Ω様が判断して、転移場所が決まるのでしたね。」


「そうよ、現行のプレイヤーに足りない物を補う為にΩが判断して転移させるの。起爆剤になるようにね。あっ、そろそろ私も仕事に戻るね!アルファリエあとよろしくね。」


そう言うと、清音はログアウトしていった。


「ふふ、いつもながら清音様は楽しい方ですね。はてさてセト様はどちらにいかれたのでしょう?」

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