2. じいちゃん

「はぁっ、はぁ、はぁはっ...ふぅーーー。じいちゃーん!!!」


僕は、息を整え家の扉を開けると同時に祖父を呼ぶ。

だが、返事かない。あの祖父の事だ、今日辺りに拓人がゲームに誘うのも予想しているはずに違いない。

とりあえず、玄関でじっとしていても仕方ないので自分の部屋へ帰ろう。


 我が家は、一応歴史ある武家の家らしい。土地はそこそこ広いが建物は古い、木造平屋だ。拓人が言うには趣があるらしいよ、お金持ちの感性は理解しにくいね。そこそこ広くて木造平屋の我が家でも自慢できるものがある、離れに小さいが道場がある、最近改築したのでシャワールームとトレーニングルームも併設してある。


 そんなことを考えていると、自室の前についた。...間違いなく部屋の中に祖父がいる。閉めて外出したはずの戸が開いている、そして音が聞こえる。


部屋に入ると祖父が何か機械の設置をしていた。だがそんなことは関係ない、思春期の孫の部屋に勝手に入るとどうなるか思い知らせてやらねばなるまい。


祖父の背中にそっと近づく。耳元で大声をあげてやろう、孫の前で醜態をさらすがいい!


「孫よ、お前の考えは甘すぎる。」


「っ! いつから気づいて!!」


「玄関で呼んだじゃろ。」


「返事してよ!」


このノリのいい老人が僕の祖父だ、レトロゲーマー界隈では神と呼ばれる変人で、文武両道を重んじる武の人でもある。何処かのか会社で役員をしていたらしいけど、「つまらん!!」と言って最近仕事をやめたらしい。家では、甚平を来て、祖母に小言を言われているイメージしかないけど。


心拍数の上がった心臓を落ち着け、祖父に部屋にいる理由を訪ねる。

「で、なにしてるの?」


「拓人君から、聞いとるじゃろ?」


「ま、まさかっ!?」


「ダイブ機器にも色々あっての、今回わしが手にいれたのは役員時代の知り合いが送りつけて来たものじゃ。最先端の技術が使われとるのは間違いないが販売はされてない、市販品の高級品のカスタム仕様とでも言えばいいかの。」


ダメだ、ここで感謝にうち震えて「ありがとう」などと言ってしまえば、この妖怪の思う壺だ。ここは、あえて冷たくあしらおう。


「で、どうして勝手に部屋に入ってるの?」


「くっ、誤魔化せなかったか、まぁ~すまんの。ちょいと驚かせようと思ったのじゃ。」


祖父は、悪びれる感じもなく、さらっと謝ってきた。とりあえず、謝罪があったのでこれで手打ちだ。僕は、目の前にあるソファー型のダイブ機に興味津々だからだ。


「とりあえず、設置は暇だったからすませてある。だが孫よ、このダイブ機の起動キーはここにある。」

 

 そう言って祖父はカード型の起動キーをヒラヒラさせた。


「さぁ、孫よこれが欲しくば奪ってみせよ!!」


妙に芝居がかった口調でそう宣言してきた祖父に僕は当然のように言葉を返した。






「恥ずかしくないの?」

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