3 . 祖父との勝負と起動

「恥ずかしくないの?」


祖父は膝から崩れ落ちた、起動キーは手放さなかったのはさすがだと思う。


「孫とのコミュニケーション、、、少しくらいは付き合ってくれんかのう」


ヤバイ、少しやり過ぎたかもしれない、普段は祖母に怒られても、2秒後には平然としている祖父がうつむいたまま立ち上がってこない。


「わかったよ、じいちゃん。レトロゲーマーとして勝負を挑むよ!!」


祖父は、飛び起きた、満面の笑みだ。じいちゃんとのゲームは手加減なんて出来ない、片手間で相手のできる拓人とは次元が違うのだ。


「ほほぅ、レトロゲームでわしが負けるとでも?いいだろうかかってこい!!」


調子が戻った祖父はノリノリだ。だが今回は秘策がある、卑怯だが利用させてもらおう。


勝負のゲームは落ちゲーだ。まともにやればまず勝てないだろう。


「一発勝負の恨みっこなしでいいね?じいちゃん。」


「その言葉、後悔しないようにのう!」


ゲームを起動し勝負が始まる、僕は時間を稼ぐだけでいいのでコンボの下準備をゆっくりと行う。祖父は速攻型なので小さいコンボを小刻みに繋いでくる、通常ならイライラするが今は、かわいく見えてしまう。


「どうした?孫よもう諦めたのか?」


「じいちゃん...今何時?」


「小癪な、気をそらせようとも....まさか!」


「もう遅いよ、最初から勝ちは決まっていたんだから..........ばあちゃーーーーん!!!」


祖父は逃げ出した、コントローラーを投げ出して。そして勝者は決まった。

祖父は、ゲームの時間を区切られている、会社を辞めて家で趣味に没頭しているのを祖母は許さなかった。そして祖母は規則正しい性格をしているので、買い物などで外出しても帰宅時間はそんなにずれることはないのだ。


 僕は、床に置いたままの起動キーを拾い、ソファー型のダイブ機へと向かった。設置はしてあるので、あとは個人の生体登録、電話やメール等の設定とΩファンタジーのダウンロードをしないといけない。


 さぁ、やっとダイブ機の起動だ、今までレトロゲームしかやってこなかったのでドキドキする。これをプレゼントしてくれた祖父に感謝しよう。


 ソファーの足元にあるスリットに起動キーを差し込み、深く腰を掛ける。最高の座り心地だこのまま寝れる。さすがはカスタム機だけのことはある、眠気が襲ってくる前に生体登録を済ませてしまおう。付属のヘッドセットを被ると全身にピリッと電気が流れた感じがした、どうやら正常に登録できたらしい。続いてΩファンタジーのダウンロードだ、流石に話題のゲームだ容量がとてつもない、レトロゲームと比べるのがいけないかもしれないが。


 電話やメール等の設定も終え、待っている間なにしようかと考えていると、ヘッドセットのディスプレイに通知がきた、メールで拓人からだ。

【強くなった俺を見せる、暫くは別行動にしよう。】

との、内容だった。

あいつ機械音痴なのによく設定できたなと想いつつ【今回は泣かないといいね】と返信した。

 

Ωファンタジーのダウンロードが終わった。さぁ始めよう。


《welcome to  Ω Fantasy 》

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