⑨犯人は⋯⋯
「康一さぁん!」
叫び、康一の遺体に飛びつこうとしたカエデをコンが全身で制する。
「遺体に触っちゃダメよ。部屋の中もなるべく触らないようにしないと」
「け、警察……!警察呼んでくる!」
とにかく走った。しかし、よくよく考えたらこの家の電話の場所を知らないことに気がつく。
「くそっ!」
震える膝を叩き、使用人室へと走る。もしかしたらあそこならあるかも知れない。
すると使用人室からクロハネが出てくるのが見えた。
「クロハネ!大変だ!康一さんが、康一さんが……!」
事情を説明するのに何分かかっただろうか。舌がもつれ、乾き、満足に喋れなかった。なんとか説明を終えると、クロハネが急いで使用人室へと戻り、電話をかけてくれた。
しかし、浮かない顔ですぐにクロハネは戻ってくる。
「ダメです。来れないみたいです」
「なんでだよ!人が死んでんだぞ!」
「それが……悪路と悪天候のため、救急車もヘリもすぐには来れないそうです」
「なに?さっきまであんなに晴れてただろう!」
そう言って窓の外を指さすと、信じられないことにいつ激しくなったのか、猛吹雪になっていた。
「そ、そんな……」
「とにかく家人に知らせましょう。私が行ってくるので、如月さんは現場へお願いします」
そう言ってクロハネは階段へと走り出した。俺も現場に戻るため、後を追った。
現場ではカエデが泣き崩れ、コンがそれを見守っていた。そしてクロハネに連れられ、歩美、研二と美恵が到着する。
「あなた!あなたぁ……!」
歩美も亡き主人の横でくず折れ、泣き喚く。俺はただそれを見つめることしか出来なかった。
「兄さん、殺されたのかぁ」
そう言って部屋の中を物色し始めたのは研二だった。
「研二さん、あんまり部屋を弄らないで」
コンが注意する。だが、必要ないと言った風に手で空を払った。
「犯人なら分かったよ」
それを聞いた歩美が研二に飛びつく。
「誰よ!誰なの!主人を殺したの!」
勿体ぶった態度で歩美を座らせると、部屋の中を一周し、人差し指を立ててこう言った。
「犯人はね、キムナイヌだよ」
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