第2話 会議?

(一)

うーん、これはムー、あるいは電波系?

第一回部活動は、入学式翌日の放課後

旧校舎の魔法大戦部部室

元の生物準備室にて

第1回は会議だそう。

賀茂部長や左近寺副部長の集めてきた情報の整理及び吟味が目的だ。左近寺先輩が、びっちりと数字やグラフの書き込まれた分厚い資料を配った。

整理や吟味とは言っても、その情報とやらが既にまともとは思えない、いやいやそんな可愛いもんじゃなくて常軌を逸しているのだ。

もっと言うなら、ちょー頭おかしいのだ。

まともに検討する気がおきるようなもんじゃない。

皆さんにも以降のやり取りでわかるでしょう。

「○区✕町周辺の行方不明者の数は、今年に入って20人を超えた。その半分が理由不明の失踪で、何らかの事件に巻き込まれたと言われている。」

ここまでは良しとして左近寺先輩…

「問題は事件に巻き込まれたと思われる約10人のうち、周囲の証言などから忽然と消えたと思われる者が5名以上いることだ。✕町という狭い範囲でこの数字は異常なものだよ。何らかの超自然的要素が絡んでいると思うべきだね。」

えっ超自然的って、いきなりそれは飛躍じゃないでしょうか…。✕町ったって都内だから人口は20万人くらいいますよ…。その中の5人でしょう。それに忽然と消えたったって、四六時中見てたわけじゃないでしょ。ちょっと目を離した隙に誘拐とか失踪とかよくある話じゃないですか。

「あいつらか…。」

あいつらって何ですか?まさか、ショッ○ーとか言うんじゃないでしょうね。

あらあら、なんか楽しそうな賀茂先輩…

「その可能性は否定できない。」

完全に二人の世界…新入部員置いてきぼりでーす。詳しい説明お願いしまーす。

「あのー…。」

紗耶香ちゃんが我慢出来ずに口を挟んだ。

「先輩、…わかるように話してもらっていいですか。」

(二)

部室にある古びた黒板

賀茂先輩が何やら楽しげに、白いチョークで図や文字を書き込んでいる。

黒板を一本の線で二つに割って、上方左に光そして上方右に闇と大きく書き込む。

「いいかい…、物事には表もあれば裏もある。表裏一体、S極とN極、物体に単一体が無いようにどちらか片方だけでは成り立たない。それと同じで光の世界があれば必ず闇の世界は存在する。それは地球、いや宇宙創成以来の理(ことわり)だ!」

黒板の前に並べた木製の古びた椅子に腰かけて、僕は盛んに首をひねっていた。

はあはあ?…なんかわかったような、わからんような…

その間も、賀茂先輩は黒板を端から端まで動き回りながら、エキセントリックに文字を殴り書きしていく。

「神に対する悪魔、神仏信仰に対する悪魔崇拝、標準的宗教とカルト教団、現実の存在、今まで起きた事件などとてもこのスペースでは書ききれないっ!」

興奮気味の賀茂先輩はグリグリ眼鏡を投げ捨て、セーラー服の赤いリボンを緩めた。

あら、案外ぶるんぶるん…これが巨乳ってやつですか。

勢いよくこちらを振り返ると、一瞬遅れておっぱいがついてくる。

か……っ!

後ろ手にチョークで黒板を勢いよく突く!

見たらいけない。とくに隣の紗耶香ちゃんにスケベと思われたら死んでも死にきれない。

それでも男の悲しい性で、ぶるんぷるんと動くおっぱいから目が離れない。

「表裏一体の世界はバランスを欲する。それに反して闇の勢力は、常に世界を支配しようと侵攻を止めずにいる。その状況で我々魔法大戦部の役目はっ!」

賀茂先輩の目がピカッと光ったように見えた。

「闇の侵攻と戦い、それを食い止めることである!」

僕は瞬間的に思った。

や…、辞めさせてください…………。

(三)

「闇の侵攻って…悪魔みたいなのが攻めてきてるんですかぁ?」

椅子に座った紗耶香ちゃんが、ゆるふわの髪を指で撫で付けながら聞いた。明らかに退屈そう…わかるわかる。さすがに馬鹿馬鹿しくなってくるよね。

「そういう場合もあるね。あくまでも悪魔が相手の場合だけど。」

左近寺先輩はあくまでも爽やかに、どう見てもおかしなことを言う。

悪魔…本当に本当に、正気なんですか?

「敵が悪魔以外の場合もあるんですかぁ?」

紗耶香ちゃんの直球に左近寺先輩はフンと笑った。

「さすが紗耶香ちゃん、注意深いね。そうだね…悪魔以外の場合もある。一言で悪魔といっても低級レベルなんか楽勝だけど、上級悪魔や邪神クラスとなると大変だ。強すぎて僕らの手におえない場合もあるのさ。」

紗耶香ちゃんは、可愛く首をかしげた。

「手におえない相手はどうするんですかぁ?」

おっと、賀茂先輩が苦虫噛み潰した顔してる。なんか、プライド傷ついたのかなあ?

「その場合は、証拠を添えて上級機関である法王庁に連絡するしかないね。それも僕らの大事な役割さ…。」

上級機関…法王庁って、ますます秘密組織っぽく、いやいや、どう考えても妄想っぽくなってきた。

「とにかく!」

賀茂先輩がバンッと平手で黒板を叩いた。

「私たちは魔法錬士として己を磨き、闇の侵攻を押さえられるようにする法王庁公認の部活動なのさ。」

魔法錬士…普通に言ってますけど、そりゃ何ですか?

ひょっとして、セーラー○ーンみたいなもんですか…。

(四)

「ちょっとキミ、どこに行くんだぃ?」

見つかった!そーっと出ていこうとした僕を、目ざとく左近寺先輩が呼び止めた。

「えーっと…へへ、トイレに。オシッコ我慢できなくて…。」

そうして幽霊部員となり、僕みたいに出来の悪い生徒は二度と目の前に現れませんから、先輩方ひらに、ひらにご容赦をっ…。

「逃げようちゅうんじゃないだろうね?」

賀茂先輩、おっぱいぷるん、じゃなくて目が怖いっ!

「そんなこと…ありませんよ。」

先輩鋭いっ正解…。でも本当のこと言うわけないでしょ!

僕の目の前にツカツカッとおっぱいぶるん、いや賀茂先輩…。

ニコッと笑って僕の頬を手でさっと撫でる。

「あら良かった…。キミたちが書いた入部届、実は魔法錬士の契約書になっていてねぇ、逃げようとすると契約違反の罰を受けてもらわなきゃいけないのさ。」

契約ぅ、罰っ、そんなの聞いてません。クーリングオフ!あるいは契約無効を主張します!

「法をよく知ってるようだが、魔法世界に法律が通じるとでも…?」

ニヤニヤする目が怖いって…

それにここは日本、ガチガチの法治国家…。

「それあくまで常識の範囲の話、常識外れの魔法世界には適用されないよ。」

えーっ!詐欺だ、ペテンだ、犯罪だっ!。

「あれー、そう言えばキミ同じクラスだよね。」

幼稚園から奇跡的にずーっとね、紗耶香ちゃん。

「良かった…部活に同じクラスの人いて…。」

この一言は反則…僕はトロットロになり、いろんなことがどうでも良くなった。

「もうトイレはいいのかい?」

はーい左近寺先輩、僕は今、幸せ噛み締めているんで話しかけないでくださーい!

窓から夕陽が差し込んできて、左近寺はさっと腕時計を確認した。

「もうこんな時間か…。玲香、今日はそろそろ終わろうか?」

賀茂先輩は何か考え事をしているようで、左近寺先輩にもう一度促され気がぬけたように「ああ。」と言った。

「キミたち、今日は終わろう。明日は✕町でフィールドワークだ。行方不明者の家とか訪ね歩くから、そのつもりで来てくれたまえ。」

えっ、少年探偵団みたいなこともするの?恥ずかしすぎるだろう。明日は何とか逃げないと…。





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