三人の若侍
その三人の侍、田中、宮田、中川・・・・は、姓と顔は見知ってはいるが、これまで平馬は挨拶程度の目礼だけで、誰とも口を交したことはない。
それにしても。
一条邸に居たはずのかれらが、なぜここにいるのか。
平馬の不審は消えない。
「わ、
宮田が叫んだ。これほど間近で相手の
それに。
こんなときに平馬はある事実に気づいた。
・・・・三人ともに背丈は自分とほぼ同じ。肉付き、
かりに同じ格好でいたならば、
このとき、竹沢左京衛門の
この三人の若侍らは、緊急時に自分の身代わり、いわば影武者としての役割を果たすために左京衛門に選別されたのだと・・・・。
だが、いまはそれを確かめる余裕はない。
「竹沢の爺は?」
平馬が
「そ、それが・・・・よく、わからないのです」
一人が答えた。どうやら、この宮田
「・・・・
・・・・していると、そこに来客があったらしい。田中が様子を見にいこうとしたとき、隣室から突然、綾が飛び出してきたらしいのだ。三人が綾を見たのは初めてであったろう。
「・・・・あまりのことに
「な、なに?では、ここは、綾の体内かっ!」
そう叫んだ平馬は急に緊張の糸がほぐれて、尻持ちをつくように座り込んだ。
クックッと腹の底から笑いがこみあげてくる・・・・。しかも、ここは綾の腹の底でもあるらしい。
「わ、
いまの今まで慌てふためいていた若侍が、平馬の笑うさまに、ふたたび茫然となっている。
「大丈夫です。綾の
おそらく急変の事態に即応して、綾がかれらを護ってくれたのだろう、と平馬はおだやかな口調にもどって告げた。
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