さんざめく霊たち
抜き放った刀の切っ先を天に、
東は
ちなみに、「王」の字の横棒の三本は、上からそれぞれ、天、地、人、を表している。それを縦に貫くものこそ地上の支配者=「王」に他ならない。
そして、王の字は、それぞれの棒、すなわち「
平馬が唱え出した
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ、いぃ、むぅ・・・・」
・・・・ここで読者は、さぞ
まさに、モノを数える行為こそ、見えざる相手に対する最大の威嚇であり防御なのである。なんとなれば、『おまえはすでに、こちらの数の中にあるぞ』と宣言し、『こちら側の数のなかに納まるべし』と叱咤する・・・・これが辟邪の基本であった。数えられてしまったほうは、それ自体が存在事由を大きく揺るがされてしまうことになる・・・・。
かの陰陽師は、なんでもかんでも、
『
と、唱えるが、律令とは、刑法(律)とそれ以外の法律(令)のことで、化け物や悪霊に向かって『いさぎよく、法律に従いたまえ』と叫んでいる滑稽ですら感じられる構図と比べると、この平馬の呪詞のほうが、より窮極的かつ実際的というものであったろう。
この「
「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ、いぃ、むぅ・・・・」
平馬の声は徐々に高く、やがて、音曲の調べのごとく早くもなり遅くもなり、
すると、隣で伽紅耶が、平馬が発する振動の波に乗るかのごとく歌い出した。
《ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ・・・・》
伽紅耶の声は、おそらく人の耳では捉えられない、獣畜生の類が本能的に感知する波のような振動ではなかったか。繰り返される二人の
陽はかろうじて下天のあたりに
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